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(回答先: 日銀植田総裁の曖昧なイールドカーブコントロール「運用柔軟化」を解説する 投稿者 中川隆 日時 2023 年 8 月 04 日 16:38:39)
ドラッケンミラーが日本のインフレで日本国債の空売りを始めた理由
ドラッケンミラー氏が日本国債を空売りしている。
ドラッケンミラー氏は日本国債をどうしているのか。空売りをやっている著名投資家は空売りのことを明言したがらないが、彼の以下のコメントを聞けば、分かる人間には彼が何をやっているかが明らかである。
日本国債のトレードが報われるとは限らないが、少なくともリスク・リワード比は馬鹿げているほど良い。少しだが、2年前の2年物米国債に似ている。日本はインフレの問題を抱えている。
2年物国債の金利は今後の政策金利の推移を先に織り込みながら動くが、アメリカの直近2年間の2年物国債の金利と政策金利を並べると次のようになっている。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2023/05/2023-5-2-us-2-year-treasury-yield-and-federal-funds-rate-chart.png
政策金利の上昇に先んじてゼロ金利から大きく上昇しているが、これが日本国債にどういう意味を持つだろうか。
インフレ初期の米国債
2年前の2年物米国債についてドラッケンミラー氏は次のように語っている。
2年前はそれほど難しくなかった。2年物国債の金利は0.15%で、マネーサプライは30%の上昇率で増えていた。リスク・リワード比が良いトレードだということは天才でなくても分かっただろう。
お分かりだろうか。まずマネーサプライとは市中に存在する現金と預金の総量である。アメリカではコロナ後に3回行われた莫大な現金給付で市場は資金にあふれていた。
米国人の可処分所得とインフレ率を並べてみれば、3回の現金給付による所得の急上昇がインフレを引き起こしたことが分かる。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/wp-content/uploads/2022/10/2022-aug-us-disposable-personal-income-and-cpi-growth-chart.png
40年ぶりの物価高騰を引き起こした大量の資金は2年物国債の金利にどういう影響を与えたか。
2021年の時点で、大量の資金がインフレをもたらし、中央銀行はいずれ金利を上げなければならなくなるということが明白だったとドラッケンミラー氏は言いたいのである。それで2年物国債の金利が先に上がった。
金利の上昇は債券の価格低下を意味する
国債空売りのリスク・リワード比
さて、ここでポイントとなるのがドラッケンミラー氏の言うリスク・リワード比という言葉である。
何故国債の空売りはリスク・リワード比が良いのか? 金利が上がれば債券の価格は下がり、逆に金利が下がれば債券の価格は上がる。
空売りは下落に賭けるトレードなので、空売りが損を出す可能性とは国債の価格が上がる(金利が下がる)場合である。
だが考えてもらいたいのだが、コロナ直後の2年前、アメリカの金利はゼロだった。
ここで問題である。2年物米国債の金利がゼロだった2年前、金利がそれ以上下がる可能性があっただろうか?
ほとんどあり得ない。当時すでにアメリカのインフレ率はかなり上がっており、Fed(連邦準備制度)のパウエル議長がインフレの脅威を無視していたために金利はゼロに保たれていたが、ドラッケンミラー氏や筆者などのファンドマネージャーにとっては金利上昇は不可避であり、下がることなどあり得なかった。
2年物国債の金利はゼロから5%まで上がる可能性はあっても、ゼロより下に下がる可能性はほとんど有り得なかった。マイナス金利にも限界があり、インフレ時にマイナス金利など自殺行為である。
だから2年物国債の空売りは成功すれば利益が大きい一方で、ほとんど損をすることが有り得ないトレードだったのである。株式市場ではほとんど有り得ないような、価格がほとんど一方向にしか動かないような状況が、債券市場にはたまに見られる。
日本国債は2年前の米国債か
そしてドラッケンミラー氏は、現在の日本国債はその状況に似ていると言っている。
グローバルマクロの投資家ならば当然の着眼点だろう。日本の10年物国債の金利は0.5%程度で推移しており、日銀のイールドカーブコントロールで0.5%に頭を抑えられているが、一方で日本のインフレ率は日本政府による粉飾を除外して考えれば4%程度で推移している。
インフレ率と金利の状況はインフレ初期のアメリカとまったく同じである。
日本のインフレは日本政府のエネルギー購入補助や全国旅行支援などのインフレ政策のお陰で既に輸入物価以外の国内の物価にも飛び火している。
アメリカで実際にそうなっているように、4%のインフレは4%か5%まで金利を上げなければ殺すことができない。日銀はいずれ金利を上げ、国債価格を下落させることになる。
量的緩和で無理やり価格を押し上げられていた日本国債のバブルはついに終了しようとしている。残されている道は暴落である。
筆者のように日本国債を空売りする投資家にとって朗報であるのは、量的緩和でほとんど上限まで上げられた日本国債の価格がこれ以上上がる可能性がほとんどないことである。
現在0.5%の10年物国債の金利は最悪の場合でもゼロ近辺まで下がるだけである一方で、上がる場合は4%や5%まで上がる可能性がある。これほどリスク・リワード比が一方的なトレードもなかなかない。そしてそれまでずっと日本国債を空売りし続けてもほとんどコストがない。インフレ政策のお陰でインフレによって日本国債市場が崩壊するのを気長に待つだけだ。自民党様様ではないか。
インフレ政策でインフレを引き起こした挙げ句、「インフレ目標を達成できなかったことが残念」と言い残して舞台を去った黒田なにがしに代わり、4月にはマクロ経済学者である植田氏が日銀総裁に就任した。
植田氏には黒田氏が円安を通して引き起こしたインフレの後始末が求められている。本当は黒田氏の時代に副総裁を務めた雨宮氏らが新総裁候補の本命だったのだが、誰がやっても惨事にしかならないインフレの後始末をすることを雨宮氏らが嫌がったために植田氏が急遽浮上したと言われている
そもそも日銀は何故緩和政策の撤回に追い込まれているのか。
先ず第一にインフレと円安である。2022年には日銀の量的緩和によって大幅な円安が進行した。2022年はドル高の年でもあったので分かりにくいが、2022年の日本円はドルだけではなく東南アジアなど新興国の通貨に対しても下落するなど世界最弱通貨の1つとなった。
その原因は日銀が長期金利に上限を設定するイールドカーブコントロールである。2022年には金利がイールドカーブコントロールの上限に達し、日銀が紙幣を印刷して国債を買い支え、金利を抑えなければならなくなった途端に円安が進んでいる。2022年春のことである。
日銀がこのまま緩和を続けると円安を通してインフレが悪化し続ける。だから円安とインフレを止めたければ、日銀は国債の買い支えを止める必要がある。スタンレー・ドラッケンミラー氏が日本国債の下落を見込んで空売りを仕掛けている理由はそれである。
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