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予想通りに失敗したウクライナの「反転攻勢」で、より明確になるドイツの崩壊
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202308120000/
2023.08.12 櫻井ジャーナル
西側の有力メディアが宣伝していたウクライナ軍の「反転攻勢」の失敗は明確になった。アメリカ/NATOがロシアを過小評価していたとする解説もあるが、こうした攻勢が始まる前からアメリカでも退役将校や元CIA分析官らは失敗すると見通していた。
この無謀な「反転攻勢」を命じたのはアメリカのジョー・バイデン政権。イギリスの対外情報機関MI6のエージェントだということが明確になったウラジーミル・ゼレンスキー大統領はバイデン政権の命令に従ってきたが、彼も勝利が不可能だと認識しているようだ。キエフで粛清が始まった理由もその辺にあるかもしれない。
バイデンの知能レベルと心配した人も少なくないだろうが、彼の外交政策チーム、つまりジェイク・サリバン国家安全保障顧問、トニー・ブリンケン国務長官、ビクトリア・ヌーランド国務次官のロシアに対する姿勢を反映したものだった。
ウクライナでの内戦は2014年2月にビクトル・ヤヌコビッチ大統領がネオ・ナチのクーデターで排除されたところから始まる。ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の人びとがクーデターを拒否、クリミアでは住民投票を経てロシアと一体化、東部のドンバスでは内戦が始まったのだ。その際、ウクライナの軍や治安機関からネオ・ナチ体制を嫌った約7割が離脱したと言われている。
クーデターの黒幕だったバラク・オバマ政権はキエフに誕生した新政権を支えるためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込んだ。そのほか傭兵会社「アカデミ(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名もウクライナ東部の作戦に参加したと伝えられていた。また2015年からCIAはウクライナ軍の特殊部隊をアメリカの南部で訓練し始めたともいう。
しかし、これでは反クーデター軍に勝つことは難しい。そこで内務省にネオ・ナチを中心とする親衛隊を組織、傭兵を集め、年少者に対する軍事訓練を開始、要塞線も作り始めた。そうした準備のために8年間が必要だったのだろう。
その時間稼ぎに使われたのがミンスク合意のようだ。合意が成立した当時から西側では「時間稼ぎに過ぎない」と指摘する人がいたが、この合意で仲介役を務めたドイツのアンゲラ・メルケル(当時の首相)は昨年12月7日、ツァイトのインタビューでミンスク合意は軍事力を強化するための時間稼ぎだったと認めている。その直後にフランソワ・オランド(当時の仏大統領)はメルケルの発言を事実だと語っている。
プーチン大統領はミンスク合意に少しは期待していたようだが、これは大きな間違いだった。アメリカ/NATOに時間を稼がせたことで戦乱は拡大することになったと言える。
ヤヌコビッチ政権を倒したクーデターで中心的な役割を果たしたのはオバマ政権のジョー・バイデン副大統領、ビクトリア・ヌランド国務次官補、副大統領の国家安全保障補佐官を務めていたジェイク・サリバンだ。バイデン政権をロシアと戦争へと導いているチームと重なる。ネオコン人脈とも言える。
ヌランドは父方の祖父母がウクライナからの移民で、夫はネオコンの重鎮であるロバート・ケーガン、義理の弟はフレデリック・ケーガン、フレデリックの妻はISW(戦争研究所)を設立したキンベリー・ケーガン。ヒラリー・クリントンは友人のひとりだという。アメリカ中央軍、ISAF(国際治安支援部隊)司令官、そしてCIA長官を務めたデイビッド・ペトレイアスとキンバリーは親しい。
現在の国務長官、アントニー・ブリンケンの父方の祖父もウクライナ出身。ちなみに、アメリカの反ロシア戦略で重要な役割を果たしたズビグネフ・ブレジンスキーはポーランドの生まれだが、一族の出身地ブゼザニは現在、ウクライナに含まれている。
サリバンはエール大学出身で、ローズ奨学生としてイギリスのオックスフォード大学へ留学している。ローズ奨学生はオックスフォード大学の大学院生に与えられ、学費を支払うローズ・トラストは1902年にセシル・ローズの意志で創設された。
ローズはナサニエル・ド・ロスチャイルドの資金でダイヤモンドや金が発見された南部アフリカを侵略して財を築いた人物で、優生学を信奉していた。ローズは1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に書いた『信仰告白』で彼はアングロ・サクソンは最も優秀な人種であり、その居住地が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張している。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するとしている。(Cecil Rhodes, “Confession of Faith,” 1877)
領土拡大の最終目標は世界をアングロ・サクソンが支配することにあるが、それを達成するためにはロシアを占領しなければならないと彼らは考えている。ソ連(ロシア)へ攻め込んだナチスをシティやウォール街、つまり米英金融資本が支援していた理由もここにある。
ナチスの支配されたドイツは1941年6月、ソ連に対する軍事侵略を開始した。バルバロッサ作戦だ。この作戦で東へ向かったドイツ兵は約300万人、西部戦線に残ったドイツ軍は90万人だけだと言われている。この攻撃の準備には半年から1年は必要だったろう。
ドイツ軍は1940年9月7日から41年5月11日にかけてロンドンを空襲し、4万人から4万3000名の市民が死亡したという。バルバロッサ作戦の準備をしていたであろう時期と重なる。イギリス攻撃の準備をソ連攻撃に転用したとは考えにくい。おそらく陽動作戦だったのだろう。
しかし、ソ連軍の抵抗でドイツ軍は苦戦、1942年8月にスターリングラード市内へ突入するのだが、ここでソ連軍に敗北、1943年1月に降伏した。
この展開を見て慌てたウィンストン・チャーチル英首相は同月、フランクリン・ルーズベルト米大統領とフランスのシャルル・ド・ゴールらとカサブランカで会談、「無条件降伏」という話が出てくる。この条件はドイツの降伏を遅らせる一因になり、米英にはソ連対策を講じるための時間的な余裕ができた。またソ連がナチスに勝ったというイメージを消し去るため、ハリウッド映画が利用されている。
バルバロッサ作戦はウクライナやベラルーシへの軍事侵攻から始まった。ウクライナがNATO軍が入るということはロシアにとって新たなバルバロッサ作戦の始まりを意味する。ウクライナへの軍事侵攻を許したことからソ連は国土を破壊され、多くの人が殺されることになった。それに対し、プーチンは同じ轍を踏まないと明言している。
バルバロッサ作戦の際、ウクライナにもナチスと手を組んだ勢力が存在していた。その中心がステパン・バンデラのOUN-B。現在、ウクライナで大きな影響力を持つネオ・ナチはバンデラを信奉している。
バンデラは1920年代からOUNの幹部だが、この組織は41年3月に分裂、バンデラ派はOUN-Bと呼ばれるようになった。このOUN・Bをイギリスの情報機関MI6のフィンランド支局長だったハリー・カーが雇う一方、バンデラの側近だったミコラ・レベドはクラクフにあったゲシュタポ(国家秘密警察)の訓練学校へ入る。第2次世界大戦後、バンデラはMI6に守られ、レベドはCIAのアレン・ダレスに保護された。MI6やCIAはソ連時代に保護、育成、ソ連が消滅してから「母国」へ送り返している。
ソ連が消滅した直後の1990年代に旧ソ連圏は破壊され、ロシアも米英資本に支配されて弱体化した。その支配体制を壊し、ロシアを再独立させたのがプーチンのグループにほかならない。彼がロシアで支持され続けているのはそのためだ。
それを認められないローズ人脈はロシアを再び属国にし、富を奪おうとしているのだが、彼らはロシアが復活しつつあることを認められず、簡単に倒せると信じてきた。
プーチンが実権を握った頃、イスラエルはジョージアに武器/兵器を含む軍事物資を提供、将兵を訓練しはじめた。ジョージア軍を訓練したのはイスラエル軍のガル・ヒルシュ准将(予備役)が経営する「防衛の盾」で、予備役の将校2名の指揮下、数百名の元兵士が教官としてグルジア入りしていた。イスラエルから供給された装備には無人飛行機、暗視装置、防空システム、砲弾、ロケット、電子システムなども含まれていた。
そのほか、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズが元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣して軍事訓練を実施、同年7月にはコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問している。
そしてジョージアは2008年8月に南オセチアを奇襲攻撃するのだが、ロシア軍の反撃で惨敗した。作戦を立てたのはイスラエル軍だとも言われている。
イスラエルやアメリカはロシア軍を過小評価していたのだが、アメリカの支配層は反省できず、バイデンが大統領になってもそうした状況に変化はなかった。そしてバイデンはプーチンを「人殺し」扱いしたのである。その時、バイデンはルビコンを渡った、つまり回帰不能点を超えたのである。
オバマ政権がウクライナでクーデターを引き起こした理由のひとつはドイツとロシアを分断、両国を弱体化させることにあった。両国はビジネスで結びついていたのだが、特に重要なファクターが天然ガス。そのエネルギー資源を運ぶパイプランがウクライナを通過していたのだ。
しかし、両国はウクライナを迂回するルートも建設している。「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」だが、これらが2022年9月26日から27日にかけての間に間に破壊された。
パイプラインが爆破された1分後にイギリスの首相だったリズ・トラスはiPhoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送ったと伝えられている。携帯電話がハッキングされたようだ。
ドナルド・トランプ政権下の2020年7月には国務長官のマイク・ポンペオがNS2を止めるためにあらゆることを実行すると発言、バイデンが大統領に就任する直前、テッド・クルズをはじめとする上院議員がロシアの安価な天然ガスという政治的脅威を繰り返し主張している。
大統領がバイデンに交代した後の22年1月27日にビクトリア・ヌランド国務次官はロシアがウクライナを侵略したらNS2を止めると発言している。2月7日にはバイデン大統領自身がNS2を終わらせると主張し、アメリカはそうしたことができると記者に約束した。
そして今年2月8日、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはアメリカ海軍のダイバーがノルウェーの手を借りてノードストリームを破壊したとする記事を発表した。
ハーシュによると、アメリカのジョー・バイデン大統領は2021年後半にジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成、その中には統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加している。12月にはどのような工作を実行するか話し合ったという。そして2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を具申している。
破壊工作は特殊作戦司令部のメンバーではなく、海軍の深海ダイバーを使ってパイプライン沿いの爆発を誘発する秘密作戦の計画を練り始めたという。特殊作戦司令部の秘密作戦は議会に報告され、上院と下院の指導部に報告されなければならないからだという。そした計画通り、パイプラインはノルウェー政府の協力を得て破壊された。
そうした中、ドイツで新首相に任命されたオラフ・ショルツが昨年2月、ロシア軍がウクライナをミサイル攻撃する前にアメリカを訪問している。この時、バイデンが作戦についてショルツ首相に説明し、パイプライン破壊についても事前に警告したのかどうかをシーモア・ハーシュは問題にしている。
パイプラインの破壊によって安いロシア産天然ガスを入手できなくなったドイツではエネルギー危機が激化し、低中所得者の生活が厳しい状況に陥っているだけでなく、自動車産業をはじめとする製造業が崩壊の危機にある。
国内の不満を抑えるために補助金を出しているが、EUでは財政赤字に対する厳しい規制がある。ドイツは補助金をカットして産業を失うのか、補助金を出して赤字規則を破るのか、どちらかを選ばなければならない。2030年頃に「グリーンエネルギー」が主流となるとされているようだが、これも実現できる保証はない。バイデン政権はドイツ企業に対し、アメリカへの移転を働きかけている。
ドイツをはじめとするEUを苦境へ追い込んだのは誰なのか、皆知っているだろうが、西側の有力メディアは口にしない。
世界的にヒットしたフィクション「ハリー・ポッター」では、敵役として登場する「ボルデモート」の名を口に出してはならないことになっている。その代わり、「例のあの人」、「名前を言ってはいけないあの人」、「闇の帝王」と呼ばれている。
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