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No. 1851 アメリカはいま、大帝国を破壊した
投稿日時: 2023年7月10日
America Has Just Destroyed a Great Empire
by Michael Hudson https://www.nakedcapitalism.com/ (June 28 2023)
多くの反グローバリストが見落としているアメリカの財産の一つは法律と裁判制度である。 投資フローによる外国為替取引の価値は、国際決済銀行によって貿易に関連する取引の60倍と見積もられていたが、金融危機になると国境を越えた資本フローは崩壊する。
すでに確立された前例があるため、投資家は米国の金融機関を通じた取引を大いに好む。ロシアに投資している多国籍企業や一部のロシア企業が直接投資することを嫌っていたことを思い出してほしい。彼らはキプロスを経由することで、英国の法律と英国準拠の裁判制度に従うことになる。 私は遅まきながら、キプロスの銀行が2013年に破たんし、救済されなかったのは、権力者がロシアへの外国投資を阻害したかったからだと考えるようになった{1}。
アメリカの覇権が賞味期限を過ぎていないとは言わない。しかし新しいシステムがすぐに誕生するだろうという考えは行き過ぎだ。私はグラムシ(イタリアのマルクス主義思想家)の見方をしている:
危機とは、古いものが死につつあり、新しいものが生まれることができなという事実から成っている。この空白期間に、多種多様な病的症状が現れるのだ。
By マイケル・ハドソン、ミズーリ大学カンザスシティ校経済学部教授、バード大学レヴィ経済研究所研究員。最新刊は『文明の運命』(2022年){2}。
ヘロドトス(『歴史』1.53)は、現在のトルコ西部と地中海のイオニア海岸に位置する、紀元前585〜546年頃のリディアの王クロイソスの物語を描いている。クロイソスは、エフェソス、ミレトス、近隣のギリシア語圏を征服し、貢ぎ物や戦利品を得て当時最も裕福な支配者の一人となった。しかし、こうした勝利と富は傲慢と思い上がりを招いた。クロイソスは東に目を向け、キュロス大王が支配するペルシアを征服しようと野心を燃やした。
この地域の国際的なデルフィ神殿に多額の銀と黄金を寄進したクロイソスは、自分が計画した征服が成功するかどうかを神殿の神託者に尋ねた。ピュティアの巫女はこう答えた: 「もしあなたがペルシアと戦争をすれば、大帝国を滅ぼすでしょう」。
そこでクロイソスは紀元前547年頃、ペルシアを攻撃するために出発した。東に進軍し、彼はペルシアの属国フリギアを攻撃した。キュロスはクロイソスを追い返すために特別軍事作戦を展開し、クロイソスの軍隊を破り、彼を捕らえ、その隙にリディアの金を奪ってペルシアの金貨を導入した。クロイソスは確かに大帝国を滅ぼしたが、それは彼自身の帝国だったのだ。
バイデン政権がロシアやその背後にいる中国に対してアメリカの軍事力を拡大しようとしている現代に話を戻そう。大統領は古代のデルフィの神託のような存在であるCIAとその同盟シンクタンクに助言を求めた。CIAとその関連シンクタンクは、傲慢さを戒める代わりに、ロシアと中国を攻撃することで世界経済の支配を強化し、歴史の終わりを達成するというネオコンの夢を後押しした。
2014年にウクライナでクーデターを仕組んだアメリカはNATOの代理軍を東に送り込み、ウクライナに武器を与えてロシア語を話す住民と民族戦争をさせ、ロシアのクリミア海軍基地をNATOの要塞にした。このクロイソス級の野望は、ロシアを戦闘に引き込んで防衛能力を枯渇させ、その過程でロシア経済を破壊し、アメリカの覇権主義のライバルとされている中国やその他の国々に軍事支援を提供する能力を破壊することを目的としていた。
8年間の挑発行為の後、ロシア語を話すウクライナ人に対する新たな軍事攻撃は、2022年2月にロシア国境に向かって進む準備がなされていることは明らかだった。ロシアは独自の特別軍事作戦(SMO)を展開することで、ロシア語を話す同胞をさらなる民族的暴力から守った。米国とNATOの同盟国は直ちに、欧州と北米に保有するロシアの外貨準備高を差し押さえ、すべての国にロシアのエネルギーと穀物の輸入を制裁するよう要求した。デルフィック国務省は、これによってロシアの消費者が反乱を起こし、プーチン政権が打倒され、1990年代にエリツィン大統領の下で育てたような顧客寡頭政治を確立するためのアメリカの工作が可能になることを期待していた。
ロシアとの対立の副産物は、西欧の衛星諸国に対するアメリカの支配を固定化することだった。このNATO内の駆け引きの目的は、ロシアの原材料を自国の工業製品と交換することで、ロシアとのより緊密な貿易・投資関係から利益を得ようというヨーロッパの夢を阻むことだった。米国はノルド・ストリーム・ガスパイプラインを爆破し、ドイツやその他の国々が低価格のロシア産ガスにアクセスできなくすることでこの展望を頓挫させた。その結果、ヨーロッパをリードする経済は、よりコストの高いアメリカの液化天然ガス(LNG)に依存することになった。
債務超過に陥るのを防ぐためにヨーロッパ国内のガスに補助金を出さなければならなくなっただけでなく、ドイツのレオパルド戦車、アメリカのパトリオットミサイル、その他のNATOの「驚異の兵器」の大部分がロシア軍との戦闘で破壊された。米国の戦略は単に「ウクライナ人が最後の一人になるまで戦う」ことではなく、NATOの在庫から最後の戦車、ミサイル、その他の兵器がなくなるまで戦うことであることが明らかになった。
NATOの兵器が枯渇することでアメリカの軍産複合体を潤す膨大な代替市場が生まれると期待されていた。NATOの顧客は、GDPの3%、あるいは4%まで軍事費を増やすように言われている。しかしアメリカとドイツの武器の性能の低さは、ヨーロッパ経済が不況に沈むのと一緒にこの夢を打ち砕いたかもしれない。また、ロシアとの貿易が途絶えたことでドイツの産業経済が混乱するなか、クリスチャン・リンドナー財務相は2023年6月16日付の『ディ・ヴェルト』紙に対し、ドイツが長年最大の拠出国であった欧州連合(EU)予算にこれ以上資金を投入する余裕はないと述べた。
ユーロの為替レートを支えるドイツの輸出なしには、ヨーロッパがLNGを購入したりNATOがアメリカから新しい武器を購入して枯渇した兵器の在庫を補充する際にユーロはドルに対して圧力を受けることになる。為替レートの下落は欧州の労働者の購買力を圧迫し、一方で再軍備のための社会支出の減少やガス補助金の支給は欧州大陸を恐慌に陥れる恐れがある。
ヨーロッパの政界全体でアメリカの支配に対するナショナリストの反動が高まっており、アメリカはヨーロッパの政策を支配する代わりに、ヨーロッパだけでなくグローバル・サウス全域を失うことになるかもしれない。バイデン大統領が約束したようにロシアの「ルーブルは瓦礫と化す」どころか、ロシアの貿易収支は急上昇し、金供給量は増加している。現在、自国経済の脱ドル化を目指している他の国々の金保有量も増加している。
アメリカの勢力範囲からユーラシアとグローバル・サウスを追い出そうとしているのはアメリカの外交である。アメリカの思い上がった世界一極支配の動きは内部から急速に解体されていった。バイデン-ブリンケン-ヌーランド政権は、ウラジーミル・プーチンも中国の習近平国家主席もこれほど短期間に達成することを望めなかったことをやってのけた。またどちらもアメリカ中心の世界秩序に対抗するものを作ろうとはしてこなかった。しかし、アメリカがロシア、イラン、ベネズエラ、中国に対して行った制裁は、EUの外交官ホセップ・ボレルが「ジャングル」と呼ぶ「US/NATOの『庭』」の外の世界に、自給自足を強いるための保護的な関税障壁の効果をもたらしたのである。
1955年のバンドン会議以来、グローバル・サウスや他の国々は不満を抱いてきたが実現可能な代替案を作り出すためには必要な勢力が不足していた。しかし、米国がNATO諸国にあるロシアの公的ドル準備高を没収したことで、彼らの関心は一気に高まった。これによりドルは国際的な貯蓄を保有する安全な手段であるという考えは払拭された。イングランド銀行は以前、ロンドンに保管されていたベネズエラの金準備を押収し、アメリカの外交官が指定した社会主義政権に反対する選挙で選ばれていない人々に寄付することを約束している。ところで、リビアの金準備はどうなったのだろうか?
アメリカの外交官たちはこのシナリオについて考えることを避けている。彼らはアメリカが提供できる唯一の利点に頼っている。それは空爆を控えることかもしれないし、国家民主化基金による「ピノチェット化」のためのカラー革命を起こさないか、経済をクライアント寡頭政権に引き渡す新たな「エリツィン政権」を立てないことかもしれない。
しかしアメリカができるのはそのような行動を控えることだけなのだ。アメリカは自国の経済を非工業化し、アメリカの海外投資の考え方は、技術独占と石油・穀物貿易の支配をアメリカの手に集中させることで独占的な利権を追求することなのだ。あたかもそれが利益追求ではなく経済的効率であるかのように。
今起きているのは意識の変化である。私たちはグローバル・マジョリティ(多数派)が、自分たちが望む国際秩序とはどのようなものなのか、自主的かつ平和的に交渉しながら選択しようとしているのを目にしている。彼らの目的は、単にドルの使用に対する代替手段を作ることではなく、IMFや世界銀行、SWIFT銀行決済システム、国際刑事裁判所、そしてアメリカの外交官たちが国連から乗っ取った諸機関に対して、まったく新しい制度的代替手段を作ることなのである。
その結末は文明的な範囲に及ぶだろう。私たちは、「歴史の終わり」ではなく、新自由主義的な金融資本主義と民営化というジャンク経済学、労働者に対する階級闘争、そして貨幣と信用は経済的ニーズと生活水準の向上のための資金調達のための公益事業ではなく一部の金融階級の手に私有化されるべきだという考えに代わる新しいものを目にしているのである。
Links:
{1} https://www.nakedcapitalism.com/2023/02/an-old-small-opening-salvo-v-russia-2013-bank-bail-in-increasingly-has-the-smell-of-a-proxy-germany-v-russia-struggle-through-cyprus.html
{2} https://www.amazon.com/Destiny-Civilization-Capitalism-Industrial-Socialism/dp/3949546065/ref=pd_lpo_3?pd_rd_i=3949546065&psc=1
https://www.nakedcapitalism.com/2023/06/america-has-just-destroyed-a-great-empire.html
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