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根拠のない優越意識で窮地に陥った米国やその従属国
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202305240000/
2023.05.24 櫻井ジャーナル
ウクライナでの戦いでロシアに敗れたアメリカ/NATOは東アジアへの「転進」を図っている。台湾で軍事的な緊張を高めているが、戦闘員として想定しているのは日本と韓国のようだ。
本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が昨年に発表したレポートによると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしている。
しかし、その時点でミサイルの配備を容認しそうな国は日本だけだった。しかも日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。そこで、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成された。
陸上自衛隊は2019年に宮古島と奄美大島で軍事施設を建設、16年には与那国島、そして今年3月16日には石垣島でも自衛隊の施設を完成させた。これらにミサイルを配備することになるが、その目標は中国にほかならない。日本では抵抗らしい抵抗がないまま中国やロシアをミサイル攻撃する準備が進められていると考えねばならない。それがアメリカの戦略なのだ。
そのアメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけての時期にネオ・ナチを利用し、ウクライナでクーデターを行った。ビクトル・ヤヌコビッチ政権が倒され、ネオ・ナチ体制が樹立されたのである。ヤヌコビッチはウクライナの東部や南部を支持基盤にしていたが、その東部や南部の住民は7割以上がロシア語を話し、東方正教会の影響を強く受けている。この地域はソ連時代にロシアからウクライナへ住民の意向を無視して割譲されたのだ。
南部のオデッサではネオ・ナチが反クーデター派の住民を虐殺、占領したものの、クリミアはいち早くロシアと一体化、東部のドンバスでは内戦が始まる。
内戦が始まった当時、ウクライナの軍や治安機関にもネオ・ナチ体制に反発するメンバーが存在、ドンバスの反クーデター軍へ合流したと言われている。そうしたこともあり、ドンバスでの戦闘は反クーデター軍が優勢だった。
そうした中、ドイツやフランスが仲介するかたちで2014年9月に停戦で合意して調印されたものの、停戦は実現しない。そこで新たに話し合いが行われ、2015年2月に新しい議定書が作成され、署名された。これがミンスク2だ。
しかし、この停戦合意はクーデター体制の戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかったことをアンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領が認めている。メルケルは昨年12月7日にツァイトのインタビューで認め、その直後にオランドはメルケルの発言を事実だと語っている。
アメリカやイギリスが戦闘の継続を望んでいることは明らかだったのでドイツやフランスが前面に出てきたのだろうが、その両国もアメリカやイギリスと同じようにロシアに対する戦争を意図していた。停戦が実現しなかった責任はアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスという欧米主要国にあった。
それから8年、アメリカ/NATOはクーデター体制の軍事力を増強する。戦闘員を育成、訓練し、武器弾薬を供給、ソレダルでは岩塩の採掘場を利用して全長200キロメートルという「地下要塞」が築かれた。同じようの要塞はドンバスの周辺に広がっているようだ。
昨年初頭になるとドンバスの周辺にウクライナ軍が集結、大規模な攻勢が近いと言われた。2月24日にロシア軍がミサイル攻撃を始めるが、その直前にウクライナ軍はドンバスへの砲撃を激化させていた。
ロシア軍は軍事作戦を開始してからウクライナ側の機密文書を回収しているが、その中にドンバス攻撃に関するものがあった。2月中に攻撃の準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたようだ。
ドンバス周辺に集まっていたウクライナ軍はロシア軍の攻撃で大きな打撃を受け、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はウラジミル・プーチン大統領と停戦交渉を始める。その仲介役はイスラエルの首相だったナフタリ・ベネットだ。
ベネットによると、双方は妥協に応じて停戦は実現しそうだった。3月5日にベネットはモスクワでウラジミル・プーチン露大統領と数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつけた。その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会っている。
ところが、その3月5日にゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフをウクライナの治安機関SBUのメンバーが射殺してしまう。クーデター直後からSBUはCIAの下部機関化しているので、アメリカ政府が殺したと言えるだろう。ジョー・バイデン政権はウクライナでの停戦を許さない姿勢を示した。
西側有力メディアの流す物語から考えて、バイデン政権は簡単にロシアを倒せると思い込んでいたのだろう。EUや日本もその話を信じていたと推測できるが、現実はその物語と違う展開になる。
ネオコンの上院議員だった故ジョン・マケインは生前、ロシアについて「国を装ったガソリンスタンド」だと表現していた。フロリダ州知事のロン・デサンティスは2023年3月の段階になっても「核兵器の束を持つガソリンスタンド」と呼んでいる。幼児がよく口にする悪口と同じレベルだ。その悪口で現実に対する恐怖を誤魔化そうとしているのかもしれない。
しかし、アメリカやその従属国以外は現実を見ている。アメリカを中心とするシステムが敗北しつつあることを理解している。アメリカの「強固な同盟国」だったはずのサウジアラビアがアメリカから離れてロシアやイランに接近しているのもその一例だ。アメリカ中心のシステムから抜けられない人びとが幻影に救いを求める。
平和が訪れると人びとには考える余裕ができ、幻影から抜け出してしまう人が増えるだろう。そうならないためにも戦争を続ける必要があるだろう。東アジア情勢は危険だ。その危険な状態を理解している日本人が多いとは思えない。
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