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ウクライナでアメリカ/NATOの敗北が決定的になる中、宣伝機関で必死の反撃
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202304140000/
2023.04.14 櫻井ジャーナル
ジョー・バイデン政権は軍事情報の漏洩に狼狽しているようで、NSC(国家安全保障会議)戦略広報調整官のジョン・F・カービーは4月10日の記者会見で、正当性が文書されていない文書を公にするべきでないと発言した。
どうやら漏れた文書は本物のようだ。本物の情報だとするならば、内部にリークした人物がいるわけだが、その人物を守る勢力が存在しているのだろう。目的もあるだろう。つまり権力層の内部で抗争が始まった可能性がある。
例えば、内部告発を支援する活動をしてきたウィキリークスの象徴的な存在であるジュリアン・アッサンジの場合、オーストラリア人でヨーロッパで活動していたにもかかわらず、アメリカ政府はイギリスの司法システムを使って逮捕、拘束、「1917年スパイ活動法」で起訴した。アメリカへ引き渡された場合、彼は懲役175年が言い渡される可能性がある。
そのほか、イラクのアブ・グレイブ刑務所でCIAが行った拷問を告発したジャニス・カルピンスキー所長は停職になり、准将から大佐へ降格になった。同じように拷問を明らかにしたCIAの分析官だったジョン・キリアクは懲役30カ月の判決を受けている。NSAの監視システムに関する情報を明らかにしたエドワード・スノーデンはロシアから出られない状態にある。
ここにきてリークされた軍事情報によると、ウクライナの防空能力は5月23日までに壊滅的な状況になるようだ。防空システムの中心的な存在はSA-10(S-300P)とSA-11(Buk)だが、SA-11は3月31日までに使い果たし、SA-10は5月2日までになくなると分析されている。そのほかの防空システム、例えばSA-3(S-125)、SA-12(S-300V)、アメリカとノルウェーが開発したNASAAM、ドイツ、スイス、イタリアで開発されたIRIS-Tは数量が限られている。スティンガーやアベンジャーなどは近距離用で、ロシア軍機には無力だ。つまり6000メートル以上の高度を飛行するロシア軍機に対する防空能力はないと判断されている。
日本のマスコミはウクライナの戦況についてウクライナ側の発表を垂れ流してきたが、アメリカ軍はそうした情報を評価していない。信頼していないのだ。ウクライナの政府、軍、情報機関はアメリカに対しても正確な情報を伝えてこなかったのだろう。
そのウクライナ政府からも事実が漏れ始めた。例えば、バディム・プリスタイコ英国駐在大使はイギリスのイクスプレス紙に対し、当初から自軍の損害を明らかにしない方針だとしたうえで、死傷者数は身の毛のよだつ数字だと語った。
ウクライナ軍が1日に発射する砲弾の数は約7700発、ロシア軍はその3倍だとウクライナ軍当局者が話しているとも伝えられている。ウクライナ軍の戦死者数は十数万人から二十数万人、ロシア軍の約10倍以上だと推計されていた。そのロシア軍はまだ動員した兵士を事実上、投入していない。
このままロシア軍と戦闘を続けてもウクライナやその後ろ盾であるアメリカ/NATOの置かれた状況は悪くなるだけであり、止め時だと考えても不思議ではないが、ネオコンは抵抗している。
ネオコンの中にはビクトリア・ヌランド国務次官やアントニー・ブリンケン国務長官も含まれている。ヌランドは2014年2月のウクライナにおけるクーデターで中心的な役割を果たした人物で、父方の祖父母がウクライナからの移民。ブリンケンの場合、父方の祖父がウクライナ出身だ。ちなみにポーランド駐在大使を務めているマーク・ブレジンスキーの父親はアメリカの反ロシア戦略で重要な役割を果たしたズビグネフ・ブレジンスキー。この人物はポーランドの生まれだが、一族の出身地ブゼザニは現在、ウクライナに含まれている。
国家安全保障担当大統領補佐官のジェイク・サリバンは2014年当時、ジョー・バイデン副大統領の国家安全保障担当補佐官だった。エール大学時代、ローズ奨学生としてイギリスのオックスフォード大学へ留学している。
2009年にバラク・オバマ政権へ上級顧問として参加、中東から北アフリカにかけての地域で実行された体制転覆工作にも加わり、2012年にはロシアの大統領選挙に介入して反プーチンの工作を指揮したマイケル・マクフォールもローズ奨学生としてオックスフォード大学に留学した。
ちなみに、ヒラリー・クリントンの夫、ビル・クリントンもローズ奨学生だ。
ウクライナでの戦乱でロシアを疲弊させ、世界制覇を実現しようとしていたネオコンはウクライナでの敗北を認められないのだろう。認めたならアメリカでの権力抗争に敗れることになりかねない。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は読売新聞に対し、ドンバスでの戦況は「良くない」と認め、APに対し、バフムート(アルチョモフスク)で負けたならロシアに「妥協」しなければならないだろうと語っている。
そのバフムートをロシアのワーグナー・グループは事実上、制圧したとされている。アメリカのネオコン、イギリス政府やポーランド政府、そしてウクライナの治安機関SBUなどはゼレンスキーが敗北を認めることを容認できないはずだ。
そうした中、兵士の首を切っている場面だとする映像が流された。実際のところは不明だが、ワーグナー・グループがウクライナ軍の捕虜を殺害したと説明されている。
ロシア軍が介入した直後にウクライナ軍の敗北は決定的だったことは本ブログでも繰り返し書いてきたが、昨年5月頃には捕虜になったロシア軍を射殺する映像をインターネット上に流すウクライナ兵がいた。
そうした行為はネオ・ナチ(親衛隊)によると見られているが、彼らは住民やロシア兵を殺害するだけでない。ロシア軍の捕虜になったウクライナ兵によると、退却しようとするウクライナ兵も殺されていた。
アメリカ、イギリス、フランスなどは一部のイスラム国と連携してシリアやイランに対する軍事侵攻を2011年春に始めた。その手先になった武装集団はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団が中心だ。
リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制は2011年10月に倒され、カダフィ自身は惨殺された。その後、アメリカ/NATOは戦闘員と武器/兵器をシリアへ移動させるのだが、その際にNATO/アメリカがアル・カイダ系武装集団と連携していることが明確になった。
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すためにバラク・オバマ政権は軍事援助を強化するが、アメリカ軍の情報機関DIAはそれを危険だと考え、2012年8月にホワイトハウスへ報告書を提出した。2012年当時のDIA局長はマイケル・フリン中将だ。
その報告書はオバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告、この警告は2014年にダーイッシュという形で現実なった。この武装勢力は同年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にモスルを制圧する。
この新たな武装集団は残虐さを演出、2014年8月には12年11月から行方不明になっていたアメリカ人のジェームズ・フォーリーの首を切る映像をダーイッシュは公開した。実際に殺したのかどうかは不明だが、そうした演出をしたことは確かだ。アメリカ/NATO軍の軍事介入が必要だと欧米の人びとに印象付けることが目的だったとする見方もある。
2014年8月にフリンがDIA局長を解任され、15年2月には国防長官をチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ交代、9月には統合参謀本部議長をマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代させた。デンプシーが退任した5日後、9月30日にロシアはシリア政府の要請で軍事介入、アメリカの手先として活動していたジハード傭兵を敗走させた。ロシア軍の介入がなければ、オバマ政権はアサド政権を倒し、リビアのような無法地帯にするつもりだったのだろう。
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