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バフムートの陥落でウクライナ軍にロシア軍と戦わせていた欧米諸国は苦しい状況
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202303070000/
2023.03.07 櫻井ジャーナル
ロシア軍の一角を占めるワーグナー・グループが地理的に重要なバフムート(アルチョモフスク)を包囲したようだ。相当数のウクライナ兵は撤退したようだが、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の「死守しろ」という命令に従った兵士もいるだろう。降伏しなければ戦死するしかない。
アメリカで2月末に報道された情報によると、ウクライナ側の戦死者や負傷が原因で死亡した兵士の数は約26万人、負傷者や障害者は約25万人、行方不明8万人、捕虜3万人。60万人以上が戦線から消えたことになる。ロシア側の戦死者は1万人余りだとみられている。しかも部分的動員で集めた約30万人は訓練の終盤で、まだ大半は戦線に投入されていない。
本ブログでも書いてきたが、昨年2月24日にロシア軍が巡航ミサイル「カリブル」などでウクライナ軍の基地や生物化学兵器の研究開発施設などを攻撃しはじめて間もなく、ゼレンスキー政権とウラジミル・プーチン政権はイスラエルのナフタリ・ベネット首相(当時)を仲介役として停戦交渉を進め、ほぼ合意に達したという。
同年3月5日にベネットはモスクワでプーチンと数時間にわたって話し合い、ゼレンスキーを殺害しないという約束をとりつける。その足でベネットはドイツへ向かい、オラフ・シュルツ首相と会うのだが、その日にウクライナの治安機関SBUがキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺した。
4月に入ると西側の有力メディアはロシア軍がブチャで住民を虐殺したと宣伝し始める。マクサー・テクノロジーズなる会社から提供された写真を持ち出し、3月19日に死体が路上に存在していたと主張しているが、疑問が噴出、実際はウクライナ側の親衛隊がロシアに敵対していないと判断された住民が殺された可能性が高い。
そうした中、4月9日にボリス・ジョンソン英首相はキエフへ乗り込んでロシアとの停戦交渉を止めるように命令。4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。つまり、戦闘を早い段階で終えようとしたゼレンスキー政権の動きをアメリカ/NATOは潰し、惨状を招いたのだ。
アメリカ/NATOはロシアの軍事力と経済力を見誤ったのだが、アメリカやイスラエルの支援を受けたジョージアが2008年8月に南オセチアを奇襲攻撃した際、ロシア軍の反撃で完膚なきまで叩きのめされているわけで、学ぶチャンスはあった。
イスラエルがジョージアに武器/兵器を含む軍事物資を提供、将兵を訓練しはじめたのは2001年のこと。ジョージア軍を訓練したのはイスラエル軍のガル・ヒルシュ准将(予備役)が経営する「防衛の盾」で、予備役の将校2名の指揮下、数百名の元兵士が教官としてグルジア入りしていた。イスラエルから供給された装備には無人飛行機、暗視装置、防空システム、砲弾、ロケット、電子システムなども含まれていた。
そのほか、アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズが元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣して軍事訓練を実施、同年7月にはコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問している。南オセチアへの奇襲攻撃はその翌月だ。
アメリカは2011年春からリビアやシリアに対する侵略をイスラム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を使って実行した。シリア軍を倒せないため、バラク・オバマ政権は支援を強化し、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を生み出すことになった。
ダーイッシュは残酷さを演出、それを口実にしてアメリカ/NATO軍を介入させようとしたようだ。2015年2月に国防長官がチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、9月には統合参謀本部議長がマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代、好戦的な陣容ができた。その直後、2015年9月末にロシア軍がシリア政府の要請で介入、アル・カイダ系武装集団やダーイッシュの支配地域は急速に縮小した。このシリアでの戦闘でもロシア軍の強さ、ロシア製兵器の優秀さは証明された。
ウクライナの場合、ロシア側にとっての懸念材料は最前線で戦う部隊の司令官とセルゲイ・ショイグ国防大臣の対立。ジョイグは十分な兵力や武器弾薬を供給していないというのだ。昨年10月にセルゲイ・スロビキンをドンバス、ヘルソン、ザポリージャの統合司令官に据えた一因はそうした不満を和らげるためだったのだろう。
ウクライナ軍が地下要塞を築いていたソレダルをワグナー・グループが制圧した直後、ワレリー・ゲラシモフ参謀総長をウクライナにおける軍事作戦の統合司令官にし、スロビキンは副官になるという発表があった。指揮はスロビキンが行うので実態に変化はないと言われた。
バフムートの制圧を目前にして、ワーグナー・グループからショイグに対する批判があった。十分な武器弾薬が供給されていないというものだが、ほぼ同時にショイグと司令官たちが武器の供給について話し合っている。これまでの例からすると、司令官たちの要求が受け入れられるだろう。バフムート制圧後、ワーグナー・グループは休養に入り、訓練を受けていた兵士が投入されるかもしれない。
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