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※紙面抜粋
※2023年4月6日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
他国軍への支援を始める(岸田首相)(C)日刊ゲンダイ
新年度予算があっさりと成立し、後半国会では「防衛増税」が大きなテーマになりそうだ。
防衛費の増額に必要な財源確保法案が6日の本会議で審議入り。これに対し、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の野党3党は「安易な増税に反対」の方針で一致しているが、財源論の話で済ませていいのか。それが問題の核心ではないはずだ。
戦後日本の平和主義を投げ捨て、やにわに軍国化を進める岸田政権を続けさせればどうなるか。憲法も国是も踏みにじられようとしている今こそが日本の分岐点だったと、後から悔やむことになりかねない。
岸田首相が心待ちにしている来月のG7広島サミットの議長はただの持ち回りなのだが、世界のリーダー気取りで高揚する岸田の暴走によって、わが国は極めて危険な領域に足を踏み入れつつある。
支持率上昇に気をよくしたのか、岸田政権は矢継ぎ早に軍事立国政策を繰り出し始めた。
4日の衆院本会議でようやく、昨年末に改定した国家安全保障戦略など3文書について報告したと思ったら、5日は「同志国」の軍を直接支援する新たな枠組みの創設を決定。国家安全保障会議(NSC)の9大臣会合を持ち回りで開いて決めたという。
従来の政府開発援助(ODA)では他国の軍への支援はできない。それで、「政府安全保障能力強化支援(OSA)」なる枠組みを創設するというのだ。
「同志国」とは何なのか、いつそんな概念ができたのかと思うが、政府によれば価値観を共有する国のことで、第1弾としてフィリピンやマレーシア、バングラデシュ、フィジーなどへの支援を想定。インド太平洋地域における中国の覇権主義を念頭に抑止力を高める狙いで、警戒監視用レーダーなどの資機材を供与するという。
平和主義からの大転換を閣議で決定
「岸田首相は、安保3文書の改定でも『専守防衛の考え方は堅持』と口では言いますが、やっていることはアベコベです。安保3文書には『敵基地攻撃能力』の保有も明記した。先制攻撃ができるようにするということです。さらには他国の軍への支援もできるようにするなど、次々と制約を取り払って、なし崩し的に憲法9条を葬り去ろうとしている。主権者・国民への十分な説明もないまま、戦後の平和主義からの大転換を閣議で決めて、国権の最高機関であるはずの国会は内閣の決定を与党の数の力で承認する場になってしまっています。これでは、どこぞの軍事独裁政権と変わりません」(立正大名誉教授の金子勝氏=憲法)
政府は他国軍へのOSAについても、「防衛装備移転三原則」の範囲内で行い、国際紛争に直接関わらない分野に限定すると説明しているが、これもマヤカシだ。
武器輸出を全面禁止する「武器輸出三原則」を国是としてきた日本は、2014年に「防衛装備移転三原則」を閣議決定して海外輸出の道筋をつけたが、それでも輸出できる装備品は「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5つに限っている。岸田はその歯止めさえ取っ払おうとしているのだ。
統一地方選と衆参5補選が終わる今月23日以降、自民党と公明党による「防衛装備移転三原則」の運用見直し議論が始まる。選挙が終わるのを待って実務者協議をスタートとは、いかにも姑息だが、これがいつものやり口だ。
協議の焦点は、殺傷能力のある武器の輸出解禁。防衛装備という呼び名で、「殺す武器」の輸出解禁が既定路線になりつつある。しかも、それは近日中に現実になる。岸田が夢想しているのは、G7広島サミットの議長国として、華々しくウクライナ支援を主導することだからだ。
G7でウクライナへの武器支援をブチ上げたい浅慮
OSAの枠組みを使い、「防衛装備移転三原則」の制約も外して、殺傷能力のある武器輸出を解禁すれば、ウクライナに戦闘機などの攻撃兵器を供与する道が開かれる。
G7でウクライナを訪問していない唯一の首脳だったことを気にしていた岸田は、サミット前になんとか訪問できて安堵したものの、欧米各国は戦車など武器の供与を拡大。岸田も足並みをそろえて、ウクライナへの武器供与をブチ上げてG7でいい顔をしたいのだ。
そのお先棒を担ぐように、政府・与党内では、日本も戦闘機や護衛艦などの提供を可能にするべきだという声が日ごとに大きくなっている。
岸田派の小野寺元防衛相も5日、都内で行った講演で、殺傷能力のある武器のウクライナへの輸出を認めるべきだと主張。これまで日本はウクライナに防弾チョッキやヘルメットを送っているが、小野寺は「装備や弾薬が足りない時に『防弾チョッキとヘルメットをください』と頼むか?」などと気勢を上げた。「外交はギブ・アンド・テイクだ。他国から支援を受けたいなら日本はどうあるべきか」というのだ。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏が言う。
「ある国に軍事支援をすれば、その国の敵対勢力から日本に対する反発を招くのは必然です。ウクライナに武器を供与すれば、反発するのはロシアです。ロシアは日本の隣国であり、軍事大国だということを忘れてはいけません。将来的にずっとロシアが黙っている保証はないのです。他国軍への支援は、間接的に紛争を助長することにもつながります。ロシア・中国と敵対する米国の戦略に乗っかるだけでは、岸田首相がG7サミットでいい顔をしたいという目先の利益のために、国益を損ないかねません」
安保3文書を支援する大メディア
ウクライナ支援のためと言えば、多くの国民は武器供与にも反対しないのではないか。そこが危ういし、岸田の狙いでもある。
「防衛装備移転三原則」の範囲内で、国際紛争に直接関わらない分野に限定するという名目で創設するOSAは、三原則を見直してしまえば、あれよあれよで紛争当事国に武器を供与する枠組みになってしまう。
「サミットで脚光を浴び、米国から褒められるために、ロシアによる侵略行為も利用して“異次元の軍国化”を推し進めているのが岸田首相です。そのうち核保有も言い出しかねない。こんな首相に広島サミットなんて、本当はやらせてはいけないのです。しかし問題は、国会でも軍拡に本気で反対する野党勢力がいないこと。防衛増税反対でお茶を濁そうとしていますが、軍拡そのものには反対しないから、岸田首相を引きずり降ろす勢力が存在しない。国民が刮目して声を上げなければ、日本はまた戦争推進の過ちを繰り返しかねない剣呑な状況なのですが、この危機感を大メディアが伝えないから、国民もノンキなもので、内閣支持率は上昇している。戦後の新聞は戦争翼賛の反省からスタートしたはずなのに、大メディアは安保3文書の改定に加わり、軍事立国を支援する側に回ったのだから、どうしようもありません」(金子勝氏=前出)
安保3文書改定に先立つ「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」には読売新聞グループ本社の山口社長、日経新聞社の喜多顧問、元朝日新聞主筆の船橋洋一氏がメンバーに名を連ねた。公開された議事録によれば、読売の山口氏は最後の会合で「メディアも防衛力強化の必要性について理解が広がるようにする責任がある」と、決意表明していた。
新聞社はどこも本業の経営が苦しい。朝日は5日付朝刊で購読料の値上げと東海3県の夕刊休止を発表。まさか、戦時報道でひと儲けした「夢よ、もう一度」というわけではないと思いたいが、岸田が喜々として進める軍拡を猛批判する機運は皆無だ。OSA創設の意図も、殺傷兵器輸出の危うさも、まったく国民に伝わっていない。
平和国家としての知見をもって国際社会に貢献するのではなく、軍事支援でG7諸国から褒められることを国民は本当に望んでいるのか? その先には、日本が戦争当事国になる覚悟も求められる。
国会で安保議論が深まらないまま、岸田はわれわれをどこに連れて行こうとしているのか。浮かれた宰相ほど危険なものはない。
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