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※紙面抜粋
※2023年3月29日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
実は“軍事好き”(朝霞駐屯地で戦車に試乗する岸田首相=代表撮影)
さすがに、あの訓示には、ぎょっとした国民も多かったのではないか。
防衛大学校の卒業式(26日)に出席した岸田首相が、中国を念頭に「今日のウクライナは、明日の東アジアかも知れない」「防衛力を抜本的に強化する」と、わざわざ中国脅威論を煽ってみせたからだ。ほとんど“戦争前夜”という感じである。
中国が軍事力を拡大していることは確かだろう。しかし、ウクライナがロシアに侵攻されたから日本も危ないというのは、いくらなんでも論理が飛躍しすぎているのではないか。
そもそも、岸田自民党は、明日にでも“台湾危機”が勃発し、“日本有事”が起きるかのように危機を煽っているが、中国による台湾侵攻などということが、そう簡単に起きるのだろうか。
アメリカのバイデン大統領は昨年11月、「台湾に侵攻する差し迫った試みがあるとは思わない」と会見で否定し、米軍トップのミリー統合参謀本部議長も、習近平主席を「合理的な人物だ」と評価し、近い将来、侵攻することはないと分析している。
「いま中国が台湾に攻め込むメリットはほとんどない。中国にとって現状は決して悪くないからです。人が往来し、経済も台湾と結びついている。現状維持を続けた方が得策というのが中国共産党のホンネでしょう。それに、ウクライナに侵攻したロシアが国際社会から制裁を受けている姿を見て、攻め込むのは割に合わないと計算しているはず。ただ、アメリカや日本が台湾独立をたきつけると、中国も黙っていられなくなります」(元外務省国際情報局長の孫崎享氏)
自民党総裁をつとめた河野洋平元衆院議長も、「サンデー毎日」(4月2日号)で、「僕は(軍事侵攻は)ないと思っている。中国は今、経済的にそんな自信がない」「台湾への武力侵攻が相当なリスクをもたらすことも彼らはよく分かっている」と指摘している。
なのに、岸田政権は、「安保関連3文書」でも、中国のことを“挑戦”“脅威”と指摘し、中国脅威論を煽りたてている。さすがに、福田康夫元首相までが「このままでは日本と中国が互いに軍備を強化しあわなければならない関係になってしまう。それで両国は幸せになれるのか」(毎日新聞1月5日付)と、懸念しているほどだ。
なぜ、岸田首相は“危機”を煽りつづけているのか。
日本だけが前線に立たされる
“台湾危機”“日本有事”を煽りたてる岸田のやり方は、安倍元首相と全く同じだ。安倍は「国難」をでっち上げ、まんまと選挙に勝っている。
安倍政権下の6年前、加計学園問題で支持率が低迷していた時、北朝鮮が弾道ミサイル「火星12」を発射。すると、安倍は会見で「脅威が増した」とボルテージを上げ、ミサイル飛来を想定した避難訓練を呼びかけた。そして、突然、解散総選挙に踏み切り、勝利を収めたのだった。
岸田のやっていることは、安倍とウリ二つだ。対中強硬策を取るアメリカに付き合わされている側面もあるのだろうが、中国脅威論を煽って求心力を高め、支持率アップをもくろんでいるのは間違いない。
しかし、一国のトップなら、「台湾有事にしないためにはどうすればいいか」を議論すべきなのではないか。「有事が起きたらどうするか」ばかりを叫んでいるのだからどうかしている。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「米中関係が緊迫する今こそ、日本は仲裁役を買って出るべきでしょう。中国とは1970年代に国交正常化、平和友好条約を結び、対話できる関係にあるはずです。なのに、アメリカに寄り添って対立を煽っている。そもそも、これから自衛官になろうという若者を前に、危機を煽るなどあり得ません。国民に冷静になるよう呼びかけるのが首相の役割でしょう」
前出の孫崎享氏はこう言う。
「岸田政権はアメリカと一緒になって“中国脅威論”を煽っていますが、非常に危険です。中国を弱体化させたいアメリカは、台湾に“独立”をたきつけ、中国に“台湾侵攻”をやらせようとしているふしがあるからです。中国が台湾に武力侵攻したら、国際社会に呼びかけて厳しい経済制裁を科すシナリオでしょう。しかし、“台湾危機”“日本有事”が起きても、アメリカは兵器は供給するが、参戦せず、中国との戦争は日本にやらせるつもりだと思う。ウクライナ戦争と同じ構図です」
本性はタカ派の“軍事好き”
ヤバいのは、ああ見えて岸田は、安倍と並ぶ「タカ派」の可能性があることだ。
月刊誌「選択」(3月号)が、〈岸田の本性は「タカ派の軍事好き」〉と報じている。
17年7月、当時、外相だった岸田は、1週間だけ防衛相を兼務している。陸上自衛隊の「PKO日報問題」で引責辞任した稲田朋美防衛相の後任としての就任だった。ただし、すでに8月3日の内閣改造が予定されていたため、土日を除けば「正味4日間だけの防衛大臣」「名ばかり兼務」だった。
ところが、防衛相に相当なこだわりがあるのか、岸田は後に大手紙からインタビューを受けた際、略歴に「防衛大臣」を加えてほしいと要望したという。
就任後、防衛省と自衛隊の幹部がレクチャーした際の岸田の様子を活写した一節が強烈だ。
〈防衛省側の出席者の印象に強く残ったのは、岸田が嬉しそうに『俺は一度、防衛大臣をやってみたかったんだ』と繰り返す姿だった。岸田は戦闘機や艦船など自衛隊の装備品についても並々ならぬ興味を示し、積極的に質問した。出席者は『本当はハト派ではなく、タカ派の軍事好きだと思うようになった』と、岸田に対する見方を変えたと打ち明ける〉
こんな“軍事好き”に政権を任せていたら、日本の軍国化は止まらないのではないか。大マスコミも、北朝鮮のミサイル発射を大々的に報じ「台湾有事」を煽りたてているが、このままでは「戦争できる国」に一瀉千里である。
「メディアも国民も、岸田首相のことを勘違いしている恐れがあります。この間、岸田首相は、安保関連3文書を改定し、専守防衛を逸脱する“敵基地攻撃能力”の保有や“防衛費倍増”を閣議決定した。やっていることはエゲツないことばかりです。とてもハト派の宏池会出身とは思えない。日本は、完全に『戦争準備』状態に入ってしまった。安倍元首相でもここまでの“戦争政策”は決められませんでした。メディアも国民も、宏池会出身の岸田首相なら『そこまではやらないだろう』と受け止めていたのでしょうが、甘く見ていると取り返しのつかないことになります」(本澤二郎氏=前出)
ハト派のふりをした岸田は、“つくられた危機”を利用して、一気に軍拡を進めるつもりだ。国民が目を覚まさないと、この国は後戻りできないところまで行ってしまうだろう。
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