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※紙面抜粋
※2023年3月24日 日刊ゲンダイ
※文字起こし
世界のリーダー気取り(ウクライナのゼレンスキー首相を電撃訪問した岸田首相) (C)ロイター/ウクライナ大統領府提供
「日本とウクライナの関係はより一層強固なものとなり、G7議長国を務める日本として、ウクライナ侵略への対応を主導する決意を示すことができた」
キーウ電撃訪問から23日早朝戻った岸田首相。午後から参院予算委員会に出席し、外交報告を求められると、こう言って胸を張った。
すでに与野党は「今回は特殊事情。事前に了解がないまま行ってもしかるべき」(自民党・高木国対委員長)、「内々に『国会承認を得ないで行って下さい』と了解していた」(立憲民主党・安住国対委員長)と問題視する空気はない。ウクライナ訪問は24日以降の国会でも議題にはなるが、「もっとウクライナ支援を」などと次の議論に移っているほどである。
だが、こんなにアッサリ了承するだけでいいのか。
岸田には、G7首脳で唯一、ロシア侵攻後のウクライナを訪問していないという焦りがあった。ましてや今年はG7議長国だ。5月の広島サミットへのゼレンスキー大統領の招待とG7各国に負けない規模の支援が必要。統一地方選前の訪問で、選挙へのプラス効果も当て込んだのがこのタイミングだった。「今さら現地に行って、何ができるのか」という冷ややかな視線を振り払って強行したのは、「政権浮揚」「政権維持」優先のパフォーマンスだった。
「驚いたのは、ゼレンスキー大統領に、岸田首相の地元・広島県で有名な『しゃもじ』を贈ったことです。『敵を召し(飯)捕る』との語呂合わせから『必勝祈願』に使われるしゃもじですが、戦争はいわゆる勝負ごととは違う。ちょっと発想が軽すぎるのではないか。ゼレンスキー大統領も、しゃもじをもらってうれしいわけないでしょうし。パフォーマンス先行だと言わざるを得ません」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
平和国家が紛争支援の倒錯
岸田は現地で、ゼレンスキーから「首相は国際秩序の守護神だ」との謝辞をもらい、蜜月をアピール。両国関係を「特別なグローバル・パートナーシップ」に格上げするとともに、殺傷能力のない装備品3000万ドル(約40億円)の拠出や、エネルギー分野などに4億7000万ドル(約620億円)の追加支援を伝えた。日本はすでに人道支援などに計71億ドルの拠出を表明している。今回の5億ドルを加え、支援総額は76億ドル(約1兆円)もの巨額となる。
当初、支援額はG7内で最下位を争っていた。そこで、侵攻1年を機に、2月に55億ドルの追加を決め、英米に次ぐ71億ドルにまで増やしたばかりだ。G7議長国のメンツ、そして戦車など殺傷能力のある兵器を送れない“負い目”から支援額をジャブジャブ拡大させている。ウクライナの隣国、ポーランドへの政府開発援助(ODA)支援も表明した。
しかし、である。
紛争地を日本の首相が訪れるのは異例中の異例。岸田が望んでも、なかなかキーウ訪問が実現しなかったのは、安全確保の難しさだけでなく、紛争当事国の一方に肩入れすることは避けるべき、というのが、平和主義を掲げる日本の戦後外交だったからだ。
G7や米国に評価されることしか眼中にないのだろうが、岸田のキーウ訪問と支援強化は、平和憲法の国が紛争の激化を促す倒錯と言えまいか。ロシアの侵攻は国際法違反であり、決して許されないとしても、日本が今やるべきは、ただただウクライナに寄り添い、一方だけに加担することなのか。G7の議長国を気取るのなら、停戦への呼び掛けこそすべきじゃないのか。
停戦を視野に世界が動き出した今 タイミングが悪すぎる
「問題はそこです。岸田首相はグローバルサウスとの関係を強化するとしていますが、アジアやアフリカ、ラテンアメリカには西側諸国と距離を取る国が少なくない。本来なら日本は、非西欧世界のリーダーとしてふるまうことを期待されていたはずです。中国が停戦を呼び掛ける和平仲介案を提案したように、日本もなぜ同じことができないのか。G7議長国であり、首相は広島の出身。広島でサミットを開く。まさに、自由主義陣営の側からの仲介案を出せる立場です。日本は長年TICAD(アフリカ開発会議)を主催してきていますしね。仲介国家としての道があったのに、そのチャンスを捨ててしまっています。外交的な構想力がなさすぎる」(五野井郁夫氏=前出)
中国は侵攻1年に合わせて、敵対行為の停止や和平交渉の再開などを含む12項目の和平案を提案した。ロシアがウクライナから自軍を撤退させなければならないとは明記されていないため、NATO諸国は“ロシア寄り”の提案だと厳しいが、それでも世界は中国を注視している。
中国はイランとサウジアラビアの電撃的な関係正常化合意で仲介役としての存在感を示した。南米ブラジルのルラ大統領が今月末に中国を訪れて習近平国家主席と会談、関係強化を協議する。ブラジルは欧米主導の対ロ制裁やウクライナへの軍事支援には否定的な姿勢を見せている。世界はG7を中心に回っているわけではないのだ。
岸田のキーウ訪問と習近平のモスクワ訪問の日程がかぶったことから、欧米メディアは日中の「外交対決」と報じた。サリバン米大統領補佐官がキーウへ行った岸田を「世界のリーダーだ」と褒め称えるなど、米政府はこぞって岸田を大絶賛だ。背景に米中対立の激化があるのは間違いなく、いまや米国にとってはロシアよりも中国が脅威。「ウクライナ・日本VSロシア・中国」の構図が強調されることを米国は歓迎し、世界の分断をますます加速させる。
率先して敵国をつくる愚行
元外務省国際情報局長の孫崎享氏はこう言う。
「世界中が極東の2つの国を対比して見ている。日本だけが分かっていないのですが、ウクライナ戦争については、今は和平を考えなければならない時期に差し掛かっています。米国は夏までは全力でウクライナを支援しますが、8月以降は状況が変わる。米議会の下院を握っている共和党は追加支援に消極的ですから、ウクライナ側の情勢は厳しくなる。世界は確実に停戦に向け動き出しているのです。それが分かっているので、フィンランドなど欧州諸国がウクライナに戦車などを提供するのを渋っている。今、ウクライナ支援に突っ込んでいるのは日本と米国とポーランドぐらいなのです。ポーランドは旧ソ連と反目してきた歴史があるのでロシアとの敵対は覚悟の上ですが、日本にその覚悟があるのでしょうか」
日本とウクライナの共同声明では、岸田が繰り返す「ウクライナは明日の東アジアかもしれない」という主張が採用された。中国を念頭に東・南シナ海情勢への深刻な懸念を表明し、台湾海峡の平和と安定の重要性も強調されている。
こうして自ら率先して、安全保障上重要な隣国であるロシアと中国を“敵国”に位置づけようとしているのだが、日本の平和と安全を考えたらこれほどの愚行はない。
「ウクライナ戦争が終わった後、日本はどうするのでしょうか。G7各国とともにキーウを訪問してもいい時期はありましたが、世界が停戦を意識し始めた今のタイミングに行く必要はないし、行くべきではありませんでした。『ウクライナに肩入れする日本』という姿が際立ってしまいました」(孫崎享氏=前出)
国内向けの人気取りを狙って、遠くの戦争に前のめりの亡国首相。世界のリーダー気取りの結果、平和国家の矜持はズタズタだ。
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