http://www.asyura2.com/22/senkyo289/msg/524.html
Tweet |
※紙面抜粋
※文字起こし
「実行犯」を継承(C)日刊ゲンダイ
「何の反省もありませんし、負の遺産だとも思っていません」──。不愉快そうな表情でそう答えたのは日銀の黒田総裁だ。10日の金融政策決定会合後の記者会見。来月8日に任期満了を迎える黒田にとって最後の定例会合で、記者の質問は当然、この10年続けた大規模金融緩和政策の総括と自己評価に集中した。
「デフレでない状況になり、雇用も400万人以上増加し、ベアも復活した」
「就職氷河期も完全に解消した。日本経済の潜在的力が十分、発揮された」
「副作用より経済へのプラス効果がはるかに大きかった。金融緩和は成功だった」
時折ニヤつきながら、ご機嫌に自画自賛を繰り返す黒田にすっかり記者たちも飼いならされてしまったのだろう。とりわけ批判的な質問が出ない中、そろそろ終了の予定時間が近づいたころ、一瞬だけ空気が変わった。黒田が挙手していた朝日新聞の原真人編集委員を質問者に指名したのだ。
この10年、原氏は一貫して大規模緩和を批判。会見の場で黒田ととことんやり合った結果、ついには指名されなくなった「天敵記者」である。自身最後の定例会合後会見だからと黒田はサービスしたつもりなのか。原氏は「この10年間で国債500兆円、ETF35兆円を買い上げた。これは明らかに大きな負の遺産として植田日銀に引き継がれるが、反省はないか」と迫った。すると、黒田は食い気味に冒頭の捨てゼリフを残し、すぐさま次の質問者を指名したのだ。
なるほど、「類は友を呼ぶ」の言葉通り。アベノミクスの“実行犯”は不都合な真実から目をそむけ、自分への批判を許さない。唯我独尊の姿勢は“指示役”だった安倍元首相とそっくりである。
国民を苦しめる政策は続く
「何の反省もない」とは、黒田はよく言えたものだ。「2年間で2%の物価目標を達成し、経済の好循環をつくる」と豪語して就任したクセに、10年経っても実現できなかったことは、黒田自身も認めている。
その言い訳も振るっている。会見で黒田は「15年の長きにわたるデフレの下で定着した物価や賃金が上がらないことを前提にした考えや慣行が、予想以上にかなり根強かった」と何回も繰り返した。緩和策は成功し、デフレではない状況にはなったけど、人々のマインドはまだデフレ下のままだと言いたいらしい。
政策は間違っていなかったが、「時代の空気」にはね返されたとの屁理屈で、専門外の心理学や哲学の領域に踏み込んでまで自己弁護する。足元の狂乱物価高を招いた大規模緩和の無軌道な円安政策の「副作用」など、どこ吹く風。最悪の詭弁だ。
この10年の無為無策の反省もなく、黒田は最後の政策決定会合でも「必要な時点まで、金融緩和を継続する」と決めた。自己正当化の最後っ屁を放ち、国民生活を苦しめている責任から逃れ、無傷のまま、次期総裁にバトンタッチとは大層なご身分である。
くしくもきのうは参院でも日銀正副総裁人事案が承認され、経済学者の植田和男氏の新総裁就任が正式に決まった。植田は大規模緩和を「適切だ」と明言。アベノミクスの「実行犯」を引き継ぐ気マンマンだ。この「黒田は正しい」と言わんばかりの妄言は、自民党最大派閥の安倍派に言わされているに等しい。
次期日銀総裁人事に対し、安倍派は前々から「アベノミクスを否定する人を充てるなら、国会同意人事で造反して反対する」(中堅議員)と強硬姿勢で、岸田首相もドーカツに白旗。亡くなった親分の失敗を絶対に認めようとしない圧力団体に屈し、植田日銀下でも国民を苦しめる金融政策は継続することになる。
物価高騰対策は金融引き締めがイロハのイ
アベノミクスが続けば、大規模緩和がもたらす円安・物価高の害悪まで続くのは、自明の理だ。そんなことは百も承知で、岸田は自公与党に物価高騰を受けた追加対策を検討し、17日までに結論を得るよう指示した。
自民党内では生活困窮の子育て世帯を対象に子ども1人当たり5万円を給付する案や、地方に多いプロパンガス利用者への支援強化案などが浮上。財源は今年度の予備費5兆円をフル活用する考えで、4月の統一地方選前のバラマキ策なのはミエミエである。
「いかにも政府・与党が困った世帯に『お恵み』を与える政治本位の姿勢こそ、本末転倒の極みです」と言うのは、経済評論家の斎藤満氏だ。こう続ける。
「物価高騰対策を急ぐのに、なぜインフレを退治する姿勢を見せないのか。物価上昇を抑えるには金融政策を引き締め、財政支出を削減して需要を抑制するのが、経済学のイロハのイ。実際に欧米各国は軒並み、それを実行しています。ところが、岸田政権はガソリン価格が大きく上昇すれば石油元売りに、光熱費が高騰すれば電気・ガスの小売事業者に、と補助金バラマキに終始。物価高の“症状”が出るたび、絆創膏を貼るような対症療法を繰り返しています。病気の根源を治療しなければ、いずれ薬代も底をつく。これ以上、金融緩和を放置し、積極財政を続ければ、物価高の症状はますます悪化するばかりです。恩着せがましいバラマキ策の財源は本をただせば国民の血税で、まるで腹をすかせたタコに自分の足を食わせているのと同じ。馬鹿げたバラマキはやめるべきです」
補助金バラマキという一時しのぎで弱者に施しを与えるフリをして有権者の歓心を買い、自公与党が統一地方選の本番に備える。こんな税金私物化を許していいのか。
呪縛は解かれず時代閉塞の現状
岸田政権が本気で物価高騰対策に取り組み、国民生活を救う気があるのであれば、大規模緩和は見直しがスジだ。継続はあり得ない。
「その見直しを困難にさせているのも、10年に及ぶ大規模緩和の弊害です。国債やETFなどリスク資産を無軌道に爆買いしたせいで、日銀のバランスシートはズタズタになってしまった。昨年末に長期金利の上限幅を引き上げた影響により、すでに日銀の保有国債は8.8兆円の含み損が発生。いざ金融引き締めで利上げするにも債務超過リスクが増し、とても踏み切れない。大規模緩和は国民生活を苦しめた上、その苦しみを取り除く最大の障壁にもなっている。この大罪を招いたのも愚かな政策を10年も続けたせいで返す返すも黒田総裁は『何の反省もない』などと言えたものです」(斎藤満氏=前出)
まさに、出口ナシの八方ふさがりだ。今年1月の実質賃金は前年同月比4.1%減。1月としては過去最大の減少幅で、賃金の伸びが歴史的な物価上昇にちっとも追いつきそうにない庶民にすれば、踏んだり蹴ったりだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
「この10年で日本は『賃金の上がらない国』に成り果てただけではありません。国際人材競争力ランキングは世界39位、昨年の貿易赤字は19.9兆円と過去最大。H3ロケット打ち上げは失敗続きと技術開発力にも暗雲が垂れ込めています。アベノミクスの大罪を数え上げればキリがないのに、岸田政権は金融緩和を継続。安倍政権を支えた保守の岩盤支持層や、最大派閥・安倍派の離反を恐れ、安倍路線の呪縛から抜け出せない。防衛・安保や原発政策などは、むしろ安倍路線を強化しています。かつての『振り子の理論』による政策の揺り戻しは、もはや自民党には期待できません。この国の閉塞感は強まるいっぽうです」
自民党政権に任せていたら、いつまでたってもゼロ成長が続くだけだ。
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK289掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK289掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。