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※紙面抜粋
※2023年3月7日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
自民党政権の「啖呵」は決まって後ろ暗いことの裏返し(左から安倍元首相、菅前首相、岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
第2次安倍政権以降、権力は公然と大手メディアに圧力をかけ、萎縮したメディアによる忖度は常態化し、「権力の監視」は骨抜きにされた。大きな転換点となったのが、2015年5月に示された放送法の政治的公平性をめぐる「新たな解釈」の追加だ。政権に批判的なメディアに対する圧力を強めるため、安倍元首相の名代気取りの首相補佐官が総務省に圧力をかけた疑惑が急浮上し、国会で大炎上している。
政府は従来、政治的公平性について「ひとつの番組ではなく、放送事業者の番組全体をみて判断する」と解釈していたが、15年5月に高市総務相が国会答弁で「ひとつの番組でも、極端な場合は政治的公平を確保しているとは認められない」とし、「新たな解釈」を加えた。16年2月には「放送法の規定を順守しない場合は行政指導を行う場合もある」「行政指導しても全く改善されず、公共の電波を使って繰り返される場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにいかない」と踏み込み、停波命令の可能性にも言及した。放送法は第1条で放送の自律や表現の自由の確保を原則に掲げ、第3条では何人からも干渉され、規律されることがないと規定。先の大戦でメディアが軍部に協力して国民を戦争に動員した反省に立ち、憲法第21条が定める「一切の表現の自由」に基づいて番組編集の自律・自由を明文化しているのだ。高市の脅しに専門家らから「言論への介入」「憲法が保障する表現の自由と放送法の精神に違反する」などの批判が相次いだが、馬の耳に念仏。行き着いた先は大本営発表の垂れ流し。先祖返りしたのが、メディアの現在地なのである。
安倍政権がなりふり構わぬ言論への介入に突き進んだ経緯をつまびらかにしたのが、立憲民主党の小西洋之参院議員が公表した約80ページに及ぶ総務省の内部文書だ。安倍派の参院議員だった礒崎陽輔首相補佐官が14年11月末以降、事務方に「新たな解釈」をまとめるよう執拗に迫り、時には恫喝し、停波発言に至る過程を記録。高市に関しては事務方によるレクのほか、15年3月ごろに安倍に電話した際の概要がまとめられ、〈総理からは、「今までの放送法の解釈がおかしい」旨の発言。実際に問題意識を持っている番組を複数例示?(サンデーモーニング他)〉などの記載がある。標的にしていたのはTBS系「サンデーモーニング」「NEWS23」、テレビ朝日系「報道ステーション」だ。
高市答弁でがんじがらめ
先週3日の参院予算委員会で小西から事実関係をただされた高市は、内部文書を「捏造」と断言。「これが捏造の文書でなければ、大臣、議員を辞職するということでよろしいですね」と迫られても、「結構ですよ」と一歩も引かず。6日の予算委でも「私の発言や私と安倍総理の電話にかかる内容だ、とされる文書計4枚。お時間をいただけるんでしたら、ひとつひとつ、これが事実ではないと、しっかりと申し上げさせていただきます」と強気一辺倒だった。一方、松本総務相は内部文書の真贋について「精査中」としたものの、「(礒崎)補佐官から問い合わせを受け、これを契機として解釈の補充的な説明が示された」と答弁。礒崎の働きかけ、および文書の一部を認めた。
「NEWS23」の岸井成格氏(故人)、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子氏、「報ステ」の古舘伊知郎氏──。この間、安倍政権に目を付けられたキャスターは降板した。元経産官僚の古賀茂明氏も言論弾圧の対象とされた1人だ。コメンテーターを務めていた「報ステ」に対し、政権が圧力をかけ15年2月に降板が決定。最後の3月の出演時に「I am not ABE」と書かれたA3の紙を掲げた。古賀氏はこう言う。
「官僚だった経験から言って、小西議員が公表した文書が捏造されたものとは思えません。総務省の事務方が詳細な記録を残したのは、ペーパーを作成して関係者に回すことで正確な情報を共有するためでしょう。官邸、それも総理までつながる案件ですから、可能な限り正確を期そうとしたと考えられます。少しでも齟齬をきたせば混乱し、クビが飛びかねませんから。総務省は早急に関係者をヒアリングし、文書の真贋をハッキリさせるべきです。時間が経てば経つほど、多方面から圧力がかかり、難しくなる。そうでなくても、高市大臣が捏造でなかった場合は議員辞職するという趣旨の答弁をしてしまった。事務方が捏造を否定すれば、大臣のクビを取る形になってしまいます。総務省トップの松本大臣が官僚の立場に配慮して、事実を明かすよう求めたほうがいい」
「俺の顔をつぶすことになれば首が飛ぶぞ」
礒崎はツイッターで「サンモニ」にたびたび文句を付けていて、その敵意は尋常ならざるものがある。内部文書によると、14年11月23日の放送内容に〈問題意識〉を持ち、3日後には放送政策課にレクを要求。オンエア当日にはこうツイートしていた。
〈日曜恒例の不公平番組が、今日も、放送されています。仲間内だけで勝手なことを言い、反論を許さない報道番組には、法律上も疑問があります〉
〈放送法上許されるはずがありません。今の立場では余り動けませんが、黙って見過ごすわけにはいきません〉
放送は衆院解散後で、アベノミクスを批判していた。暴走する礒崎は解釈拡大を回避しようとする事務方にブチ切れ、「新たな解釈」の私案を押し付け、菅官房長官への根回しを求められると「これは高度に政治的な話。官房長官に話すかどうかは俺が決める話」「この件は俺と総理が二人で決める話」と激高。「俺の顔をつぶすようなことになれば、ただじゃあ済まないぞ。首が飛ぶぞ」などと、チンピラ顔負けの脅迫を官邸で繰り広げていたというのである。元総務官僚でもあるというのに、憲法順守義務はクソ食らえ。永田町に戻らせてはいけない類いの人間だ。野党が要求する証人喚問を実施しなければラチがあかない。
この10年あまり、時の政権が陰に陽にテレビ局に圧力をかけ、批判を封殺してきたのは紛れもない事実だ。そうでなければ、なぜマトモなコメンテーターが次々にテレビから去っていったのか。いま、白日の下にさらされているのは、安倍、菅、岸田と続く自民党政権による言論弾圧の「黒歴史」なのである。
同時並行で自民党も圧力
放送法が水面下で歪められていく中、自民党は同時並行で露骨な圧力をかけ始めていた。在京キー局に対し、安倍派の萩生田筆頭副幹事長らが14年11月20日付で「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」と題した要望書を配布。「NEWS23」に生出演した安倍が街頭インタビューを見て「おかしいじゃないですか!」とブチ切れた直後だった。同時期に「報ステ」の放送内容にも注文を付け、15年4月にはテレ朝とNHKを呼び出して事情聴取。半年後には、アベ応援団が政権寄りの読売新聞と産経新聞に「私達は、違法な報道を見逃しません。」と題した全面意見広告を掲載し、安保法制に反対する岸井氏を名指しで批判。16年春の改編で気骨のあるキャスターは交代した。
結果、自民党政権が大手メディアを使った世論誘導で選挙を制し、「勝てば官軍」とばかりにデタラメ政策をゴリ押し。安倍は特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法の戦争3法をまとめて米国と戦争のできる国へ地歩を固め、菅前首相は台湾有事をにらんだ防衛力強化をバイデン大統領に公約。岸田首相は安保関連3文書を改定し、専守防衛を逸脱する敵基地攻撃能力保有や防衛費倍増を閣議決定。国会審議も、国民への説明も尽くされることなく、国の形を変えた。
評論家の佐高信氏はこう言った。
「新聞記者とかジャーナリストはカタギの仕事じゃない。コンプライアンスなんて言っていたらオシマイで、そんなものは権力に対して迫るもの。沖縄返還をめぐる日米密約を報道した元毎日新聞記者の西山太吉さんの事件は教訓ですよ。あの渡辺恒雄(読売新聞グループ本社代表取締役主筆)が西山さんの刑事裁判で弁護側証人として立った時には、〈新聞記者はネタを取るためには殺人と放火以外は何でもやる〉と証言していたものです。権力は実のところ、穴だらけ。統一教会問題もしかりで、徹底して攻めれば、どんどんボロを出す。報道側が覚悟を持たなければ、押し戻せない」
森友疑惑をめぐる安倍がそうだったが、自民党政権の「啖呵」は決まって後ろ暗いことの裏返し。暗愚政治を叩きのめさなければ、この国は二度と浮上しない。
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