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※紙面抜粋
※2023年3月1日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
予算案が衆院通過で満面の笑み(岸田首相=央)(C)日刊ゲンダイ
「本年のG7議長国としてウクライナ問題に対する結束を主導していく」
「日本は今年から国連安保理非常任理事国も務めている」──。
最近やたらとこうアピールして、国際社会のリーダー気取りの岸田首相だが、能力不足は誰の目にも明らかだ。
トルコ南部で2月6日に大地震が起きてから3週間。27日もトルコ東部マラティヤ県でマグニチュード5.2の強い地震が発生した。トルコ大地震で、これまでに確認された死者はシリアと合わせて5万人を超える。地元メディアによれば、トルコ国内の避難民の数は約150万人に上るという。今なお多くの人が、不安な夜を過ごしている。
2011年に起きた東日本大震災の記憶が生々しい日本人としては、身につまされる思いだ。今年も、はや3月。あの大震災から12年である。
トルコ大地震直後の2月8日、衆院予算委員会で地震への対応を聞かれた岸田は、国際緊急援助隊の救助チームを派遣したと説明。「引き続き現地のニーズを踏まえ、被害を受けた地域への必要な支援を検討する」と言っていた。ここでもやはり「検討」だった。
2月17日夜になってようやく、トルコのエルドアン大統領と電話で約10分間会談し、850万ドル(約11億円)の人道支援を行うことを表明。電話会談後、岸田は「大地震で亡くなった方々に弔意を表し、被災された方々へお見舞いを伝えた。東日本大震災の際にトルコからいただいた支援に触れながら、今回の日本の支援について伝えた」と胸を張っていたが、あまりに対応が遅いのではないか。
トルコに11億円、ウクライナに7370億円
ともに地震国のトルコと日本は、過去の震災でも互いに困難を支え合ってきた。1999年にトルコ北西部で地震が起きた際は、日本は最も迅速で総合的な支援を行ったと感謝され、その「恩返し」にと、2011年の東日本大震災ではトルコ政府が救助チームを派遣。宮城県内で約3週間にわたって行方不明者の捜索を行った。各国からの救助・支援チームの中で最長期間だった。
古くは1890年に和歌山県沖で起きた「エルトゥールル号遭難事件」以来、両国は友好関係を築き、トルコは世界屈指の親日国として知られている。
世界銀行の試算によると、この大地震によるトルコの物理的被害額は最低でも342億ドル(約4兆6500億円)に上り、再建や復興に必要な費用は、さらに倍以上になるという。
東日本大震災の際には、世界各国からの支援が本当にありがたく感じたものだ。こんどは日本がトルコを助ける番だし、岸田が世界のリーダーを気取るなら、国際社会にさらなる人道的支援を呼びかけてはどうなのか。
避けようがない大地震の恐ろしさ、被害の悲惨さを日本国民は身に染みて知っている。トルコのチャブシオール外相が明かしたところでは、各国のトルコ大使館の銀行口座に寄せられた大地震支援の募金で「最も多いのは日本だ」という。
一般国民がトルコの地震被害に心を痛め、世界一の募金が集まっているというのに、日本政府の動きは鈍い。
岸田はトルコへの850万ドルの人道支援を表明した3日後の2月20日に、ウクライナに対する55億ドル(約7370億円)の追加財政支援を表明。支援は金額だけの問題ではないが、それにしても差が大きすぎる。ウクライナへののめり込み方と比べると、岸田はトルコの地震に冷淡なように見える。
米国の顔色をうかがうばかりで、アジアを軽視する主体性のなさ
「トルコはロシアと親密な関係にあり、経済制裁にも原則として反対している。岸田首相がトルコ地震への大々的な支援に及び腰なのは、米国の顔色をうかがってのことでしょう。岸田首相にとっては、人道や平和は大きな問題ではなく、米国に服従して政権を維持することが外交のすべてなのです」(政治評論家・本澤二郎氏)
トルコ大地震が起きたのは、米財務省のネルソン次官(テロ・金融情報担当)が2月2日にトルコを訪れて、ロシアとの取引に難色を示した直後のことだった。ロシアの軍事作戦に転用可能な化学製品やマイクロチップなどがトルコから輸出されていることを問題視した米政府は、このままではトルコの企業や銀行が制裁対象になると警告したのだ。
そういう米国の意向をくんで、岸田がトルコ支援を最小限にしたのなら、なんと器の小さなリーダーであることか。この大地震が米国で起きていたら、もっと大規模な支援を申し出たことは容易に想像できる。
「岸田外交は、米国を重視するあまりアジア・アフリカを軽視しているように見えます。世界有数の親日国であるトルコとの関係は大切にすべきで、米国に忖度して萎縮する必要はない。もちろんウクライナ問題は重要ですが、トルコだって大変なのです。岸田首相はG7議長国で“名誉白人”的な扱いに浮かれているのかもしれませんが、欧米目線で国際政治を捉え、日本はアジアの一員であるということを忘れているのではないか。外務大臣を長くやった人とは思えない外交センスの欠如です」(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)
日本はG7の一角だが、NATO(北大西洋条約機構)加盟国ではない。米国追従が日本の国益に適うとはかぎらないのだ。元外務省国際情報局長の孫崎享氏もこう言う。
「欧米は安全保障上の理由があってウクライナを支援しているのですが、日本は直接的な利害関係はないのに、米国に取り入るためにウクライナ支援に前のめりになっている。どういう形であれ、ロシアとウクライナの戦争はいつかは終わります。その時に、領土問題も抱える隣国ロシアとどう向き合うつもりなのでしょうか。岸田政権では日本独自の外交がまったくナリを潜め、米国の利益が最優先になっている。米国追従という短絡的な思考では、将来の日本にツケが回りかねません」
米国産武器爆買いの予算案が成立
28日、衆院本会議で2023年度予算案が自民、公明両党の賛成多数で可決、参院に送られた。憲法の規定に基づき、参院送付から30日で自然成立するため、年度内成立は確実になった。一般会計の歳出総額は114兆3812億円で過去最大。このうち防衛費は6兆8219億円と大幅に増額された。
「衆院予算委を通じて、今後5年間で総額43兆円を確保するとした防衛費の中身に関して納得できる説明はまったくありませんでした。最後の最後で23年度予算案に2113億円を計上した米国製巡航ミサイル『トマホーク』について、400発を購入予定だと公表しましたが、その理由や使途は不明なままです。結局、金額ありきで、米国に言われるがまま武器弾薬を爆買いするという話なので、国民に対する説明もマトモにできないのでしょう」(五野井郁夫氏=前出)
それでも、予算審議がストップすることはなく、年度内の成立が決まった。野党の体たらくか、岸田政権の独裁体質ゆえなのか。
岸田はことあるごとに「ウクライナに対する人道支援」と言うのだが、これも欺瞞だ。7000億円以上の“財政支援”は、戦費支援とどう違うのか。平和国家としての人道支援を標榜するのなら、大地震に見舞われたトルコにこそ手厚くしてはどうなのか。米国産兵器を爆買いするより、せめてトマホーク10発分でもトルコ地震の支援に回した方が、よほど国際社会でのリーダーシップを認められそうなものだ。
1日からは参院に舞台を移して予算案の審議が始まる。野党は岸田の言う「人道」の欺瞞も追及すべきだ。
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