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子どもよりミサイルの数が上回る「異次元の少子化対策」 金子勝の「天下の逆襲」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/319356
2023/02/28 日刊ゲンダイ
女性の社会的地位の向上、子どもを持つ環境、岸田政権のやり方では…(C)共同通信社
岸田首相が年頭にブチ上げた「異次元の少子化対策」は迷走している。国会で「家族関係社会支出は2020年度でGDP比2%を実現した。さらに倍増しようと申し上げている」と答弁したが、松野官房長官が「どこをベースとして倍増するかはまだ検討中だ」と修正するなど、火消しに躍起。岸田も安倍元首相と同じく3代目の世襲政治家だ。先人と同様に口先だけなのだろう。
新型コロナウイルス対策の「岸田4本柱」は大して実行されず、金看板の「新しい資本主義」は骨抜き。「インフレ率を超える賃上げ」は一部の大企業でしか実現しない。「子ども予算倍増」も同じ道をたどることになるだろう。木原官房副長官は「子ども予算というのは、子どもが増えれば、それに応じて予算は増えていくということになります」とかデタラメを言っていた。子どもが減っているから政策支援が必要だというのに、やる気のなさが浮き彫りだ。
この国の少子化は恐ろしいスピードで進んでいる。日本が消滅しかねない勢いだという認識が岸田自民党には決定的に欠けている。
2005年に人口減少局面に入り、16年の出生数は100万人割れ。22年はおよそ77万人の見通しだ。昨年生まれた子どもの半数を女性と仮定し、東京都の21年の合計特殊出生率1.08を当てはめると、20〜30年後の出生数は38万人ほど。さらに20〜30年後には20万人を割り込んでしまう。米国に媚びへつらって防衛予算を倍増し、ミサイルを大量購入しても、守るべき国民はいない。笑い話にもならない。
少子化対策で注目を集める兵庫県明石市は高3まで医療費無料、第2子以降の保育料完全無料、中学校の給食費無償などを実施し、奏功している。だが、そもそも産業衰退を食い止め、誰もが就職し、結婚しやすい環境を作らなければ、根本的な問題解決は難しい。共働きでなければ子どもを持つゆとりが生まれないことから、女性の正社員登用を進めるなど、社会的地位の向上が不可欠。欧州並みの高等教育無償化も必須だ。
この国の先端産業の低迷は著しい。情報通信、RNA医薬品、再生エネルギーへの転換、電気自動車分野などの産業育成によって雇用不安を解消し、女性の正社員化と共働きという条件がそろって、初めて子どもを持つ環境が整う。その上で、明石市のような対策や教育費への公的支出拡大で子育て負担が大幅に改善されるのだ。岸田政権のやり方では子どもよりミサイルの数が上回り、日本という国は消えてなくなるだろう。
金子勝 立教大学大学院特任教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現職。慶応義塾大学名誉教授。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。近著「平成経済 衰退の本質」など著書多数。新聞、雑誌、ネットメディアにも多数寄稿している。
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