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※紙面抜粋
※2023年2月22日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
3回目の関連会議に初出席(C)共同通信社
岸田首相が年頭記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」とブチ上げてから2カ月近く経ったが、雲行きはどんどん怪しくなっている。人口減少と国力低下はイコールだ。無論、経済力の浮沈にも直結する。自民党を支持する保守層が誇る「伝統あるニッポン」の歴史を紡ぐためにも、国家を挙げた少子化対策は待ったなしだ。にもかかわらず、煮詰まる気配はない。
児童手当の所得制限は撤廃するのか、しないのか。自民党の茂木幹事長が口火を切り、連立を組む公明党も積極的で、野党も一致して賛成しているのにまとまらない。なぜかといえば、伝統的家族主義にこだわり、子育てを家庭に封じ込めたい自民の保守派がゴチャゴチャ言っているから。もっと言えば、そもそも岸田政権にヤル気がないからだ。
年頭会見での岸田は力強かった。「こどもファーストの経済社会をつくり上げ、出生率を反転させなければなりません。4月に発足するこども家庭庁の下で、今の社会において必要とされるこども政策を体系的に取りまとめた上で、6月の骨太方針までに将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示していきます」と意気込み、「こども家庭庁の発足まで議論の開始を待つことはできません」として、小倉少子化担当相にたたき台の取りまとめを指示。対策の柱は@児童手当などの経済的支援A幼児教育・保育サービスの拡充B育児休業制度の強化や働き方改革──で、3月末を期限としている。
残された時間が1カ月余りとなる中、岸田は20日に官邸で開かれた「こども政策の強化に関する関係府省会議」に出席。3回目となる会議に初めて顔を出し、「年齢、性別を問わず、皆が参加する、次元が異なるこども・子育て政策を進め、日本の少子化トレンドを何とか反転させたい」と言ってはいたものの、「児童手当などの経済的支援」については全く触れなかった。現行の児童手当は15歳までの子どもがいる世帯を対象に原則月1万円から1万5000円を支給。夫婦と子ども2人の場合、世帯年収が960万円以上で5000円に減額し、1200万円超の世帯には給付していない。
75年変わらない保育士配置基準
幼児教育・保育サービスの拡充に欠かせない保育士の配置基準見直しも差し迫った課題だ。4〜5歳児は1948年に「30人に1人」と定められて以降、75年間も変わらず、保育士の負担は大きい。消費税率10%への引き上げを決めた2012年の3党合意で、子ども・子育て支援制度導入に必要な財源1兆円のうち、約7000億円を増税分から確保するとしたものの、約3000億円を要する配置基準見直しに回ることはなかった。自民党が政権復帰し、第2次安倍政権が発足すると、待機児童解消に注力し、保育所増設などのハコづくりに予算をつぎ込んだからだ。4〜5歳児は「25人に1人」、1歳児は「6人に1人」から「5人に1人」に改善されるはずが、たなざらしにされたまま。
岸田は国会で「産休・育休中のリスキリングでキャリアアップ」を奨励し、大ブーイングを食らって釈明に追われたこともあった。「少子化対策は今年の大きな挑戦のひとつ」とまで言っていたのに、ブレブレのトンチンカン。異次元の不人気政権のやるやる詐欺といった様相だ。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「社会保障政策には必ず所得制限を設け、無条件に支給することはしない。これが自民党政権の伝統的な手法です。民主党政権が創設した子ども手当は〈社会全体で子どもを育てる〉という理念の下、所得制限なしで中学生まで一律で月額1万3000円を給付する内容でしたが、自民党は徹底的に批判。安倍政権が所得制限付きの児童手当に戻した経緯がある。それをさらに元に戻せば、〈悪夢のような民主党政権〉と揶揄してきた安倍元首相の否定につながり、その発言は嘘っぱちだったことになってしまう。そうした事情もあいまって自民党内には所得制限撤廃に異を唱える声が渦巻いているのでしょう。米国の機嫌を損ねないよう防衛費に糸目は付けないのに、社会保障費はケチるのが自民党のやり方でもある。第4派閥の領袖に過ぎない岸田首相がトーンダウンしていくわけです」
防衛費6%で制限撤廃、サービス拡充はできる
安倍元首相が言い出した敵基地攻撃能力の保有を含む防衛力強化をめぐっては、岸田は世論や野党の反発には全く耳を貸さず、一気呵成に突き進んだ。昨年末、米国の意向を丸のみする形で安保関連3文書の改定を閣議決定。年明けには念願のホワイトハウス訪問と日米首脳会談を実現し、バイデン大統領に成果を報告した。岸田は異様な高揚感に包まれたまま訪米先で講演し、「吉田茂元首相による日米安保条約の締結、岸信介元首相による安保条約の改定、安倍晋三元首相による平和安全法制の策定に続き、歴史上最も重要な決定のひとつであると確信している」と自画自賛していたものだ。
そうして、敵基地攻撃能力の装備として米国製巡航ミサイル「トマホーク」の大量購入も決定。23年度予算案には取得費として2113億円を計上し、年度内に一括購入する契約を米国と結ぶことにしている。かたや、具体的な中身は4月の統一地方選後に先送り、財源もごまかす無責任。取って付けたように言い出した異次元の少子化対策という欺瞞が浮き彫りである。
児童手当の所得制限を撤廃する児童手当法改正案を衆院に共同提出した立憲民主党と日本維新の会によると、5月末までに法案が成立して施行されれば、2月から5月までの4カ月分を6月に支給できるという。撤廃に伴う追加の経費は年1000億円程度との試算だ。保育士の配置基準見直し分を合わせても4000億円。6兆7880億円も計上した防衛費の6%を融通すれば事足りるが、岸田の頭にあるのはトマホークだけだ。
少子化で自衛隊も採用難に直面
政治評論家の本澤二郎氏はこう言った。
「岸田首相のブレ具合からいって、人気取りで異次元の少子化対策を打ち出したはいいものの、頭の中が全く整理できていないのでしょう。自民党を支持する日本会議や統一教会(現・世界平和統一家庭連合)もわりあい少子化対策には熱心ですから、統一地方選に向けて押し込まれたのかと勘繰ってしまいます。国会審議も経ずに、23年度からの5年間で防衛費を43兆円へ積み増すなんてトンデモない。防衛費がGDP比2%以上に膨張すれば年間11兆円に上り、米国、中国に次ぐ世界3位の軍事国家へ変貌してしまう」
岸田は防衛費倍増については「今の時代を生きるわれわれに大きな責任がある」と繰り返す一方、「社会保障費を含め、子ども、子育て政策については、防衛費と違って、すべての国民が裨益するのではなくして、地域とかあるいは職業、立場によって、政策によって裨益する方々は変わっていきます」などと、国会で答弁していた。少子化対策は防衛費とは異なり、全国民の利益にはならないとの趣旨だ。
しかし、防衛費をいくら積み上げても、自衛隊が人員不足では宝の持ち腐れ。防衛省は22日、自衛隊の人材確保や能力向上などの人的基盤強化に向けた初会合を開催。少子化による採用難などの課題に関して提言を取りまとめるというから、ちゃんちゃらおかしい。少子化対策こそ、将来世代に付け回しできない焦眉の急ではないのか。
「軍拡は軍需産業を潤わせ、自民党は多額の献金として見返りを得られる。主権者が権力をしっかりと監視しなければ、大企業や富裕層の利益になる政治しか行われず、弱者が切り捨てられるのは歴史の教訓です。真面目に働けばマトモな暮らしができ、安心して子どもを生み育てる社会を実現できるかは、国民の意識の問題でもあることを改めて考えなければなりません」(金子勝氏=前出)
このままいけば、「軍事栄えて民滅ぶ」。政府が守るべき国民がみるみる減っていく。もはやマンガだ。
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