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※紙面抜粋
※2023年2月21日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
GDP世界3位転落目前 自民党政権を続けさせたら凋落するだけ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/319057
2023/02/21 日刊ゲンダイ
日本経済は浮上できない(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
「安いニッポン」「先進国で唯一ゼロ成長」「賃金の上がらない国」──。そんなうれしくない代名詞が定着し、日本が“貧しい国”へと転落しつつあることを、国民もだんだん分かってきた。それでも、あらためて具体的な数字を突きつけられると愕然とする。
<名目GDP、ドイツが肉薄><日本、世界3位危うく>
19日付の日経新聞の記事の見出しだ。
日本がずっと維持してきた国内総生産(GDP)で、米国、中国に次ぐ3位という地位が危うくなっている。4位のドイツとの差が急速に縮まっている、というものだ。
2022年のドル建て名目GDPは日本が4兆2300億ドル(約560兆円)に対し、ドイツは4兆600億ドル。その差は1700億ドルしかない。20年は1兆1500億ドル、21年は6700億ドルの差だった。
大きな要因は、一時32年ぶりの1ドル=150円超となった円安だ。物価高にしても、インフレ率が日本はドイツほどではないことも影響しているという。
このドル建て名目GDPを20年前と比較すると、さらにショッキングだ。ドイツは2倍、米国も2倍、中国は12倍にまで膨んだのに、日本はわずか1%増とまったく成長していないのだ。
日本だけがしぼんでいく理由について、日経新聞はこう分析している。
<日本は構造的な成長力の弱さがある。海外からエネルギー資源の多くを輸入する体質がかわらず、資源価格高騰で輸入額が膨らむ。電機業界の競争力が弱まり、モノの輸出で稼ぐ力も落ちた。少子高齢化や人口減少が進み、基本的な「体力」が落ちつつあることも大きい>
非正規雇用と円安のぬるま湯
“ものづくりニッポン”の稼ぎ頭は、長年、電機と自動車といわれてきた。だが、気づけば日本の電機産業は完全に没落。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は、22年下半期(7〜12月)に、半期ベースとしてはデータが残る1988年以降で初の赤字に転落した。貿易黒字の稼ぎ頭だったテレビなどのデジタル家電は割安な海外メーカーに敗北し、携帯電話市場も「iPhone」など海外スマホに奪われた。
残された自動車産業もEV(電気自動車)の出遅れで正直、危うい。米テスラや中国BYDといった“EV台風”を前に、世界のトヨタもいつまでその地位にいられるだろうか。
「日本には自動車に取って代わる次の産業がありません。日本政府がGAFA(米主要IT企業)のような新しい産業が生まれる環境をつくらなかったことが原因です。アベノミクスの『3本の矢』も成長戦略とは名ばかりでした。日本企業が目先の利益ばかりを追いかけるようになったことも、経済を弱体化しました。小泉内閣あたりから加速させた非正規雇用の活用が元凶です。
米国のように労働市場を流動化し、固定費としての人件費を変動費化するよう制度を改正したのです。必要な時だけ必要なだけの労働力を使えれば、企業は人件費を抑えられる。その結果、非正規雇用が労働者全体の4割を占めるようになりました。社員教育への資源配分を減らす企業が増え、『わが社』『うちの会社』というロイヤルティーもなくなった。長い目で見れば生産性の低下につながっていることは否定できません」(経済評論家・斎藤満氏)
2000年代初頭の小泉・竹中構造改革で、日本の雇用はメタメタにされた。
「強い者はより強く、弱い者はより弱く」という新自由主義路線だ。竹中平蔵氏が昨年8月まで会長を務めたパソナグループなどの人材派遣会社は大儲けした。
非正規は製造現場などあらゆる分野に拡大され、企業が労働者を資産ではなくコストと考えるようになった。給料の安い非正規を増やせば、企業は人件費を減らせ、見せかけの利益は増えるから喜ぶ。
そんなリストラ経営が10年続いたところに、第2次安倍政権の異次元金融緩和で円安が加速。企業は為替差益のぬるま湯に安住し、ますます競争力を失ったのだ。
中長期的な視野なく、「今だけ、カネだけ、自分だけ」
とどのつまり、世界経済において日本が一人負けしているのは、歴代自民党政権の利権あさりと無為無策に尽きる。
今ごろになって岸田政権は「異次元少子化対策」と大騒ぎしているが、こうなることは「出生率1.57ショック」の30年前から分かっていたことだ。それを自民党政権は長年放置してきた。
「少子化問題には非正規雇用の拡大も影を落としています。国税庁の『民間給与実態統計調査』によれば、正社員と非正規雇用との賃金格差は3対1に拡大しました。年収190万円の非正規雇用では、子どもを持つことが難しい。少ない給料から家賃や社会保険料を払えば、あとはいくら残るのか。子どもどころか結婚すらできません。人口は経済成長に直結する。働き手が減れば、成長できなくなるのは当然です」(斎藤満氏=前出)
少子化には自民党の古い家族観も多大な影響を与えている。
09年の政権交代で民主党政権は「社会で子どもを育てる」という理念を掲げ、所得制限なしの「子ども手当」を創設するなどした。しかし、12年末に自民党政権に戻ると、安倍元首相の下、保守派が党の主流となり、再び子育ては「家庭」に閉じ込められた。
その間、世界は、LGBT法や同性婚を認める法律が制定されるなど、多様性が進む社会に呼応して“進化”したのに、日本はそうした先進国のスタンダードからも取り残されたのだ。
倒錯した岸田政権
そして、無為無策の政治は、岸田政権で絶望的に悪化している。
少子化で人口減少に歯止めがかからないのに、防衛費を5年間で43兆円に増やす倒錯。米国に要求されるがまま兵器を爆買いし、防衛力を強化しても、人員不足の自衛隊で、誰が戦闘機を操縦し、誰がミサイルを撃つのか。軍需産業とその利権にぶら下がる政治家を喜ばせるだけだ。
そのうえ、米国から購入した兵器は「輸入品」だから、日本の経済成長にはつながらない。どれだけ巨額の財政支出をしたとしても、GDPにはまったく反映されず、逆に借金が積み上がっていく。
岸田首相が安易に原発回帰に舵を切ったことも倒錯と言うしかない。設計時に「40年」が基準だった老朽原発を60年超まで稼働させようという狂気の沙汰。建て替えに次世代原発の開発と、経産省、原子力ムラ、財界が一体となって古いエネルギーにしがみつく。
GDPで日本を逆転しようとしているドイツは、東日本大震災での福島第1原発事故の大惨事を目の当たりにして、22年末の「脱原発」を決定した国だ。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー不足でタイムスケジュールがずれ込んではいるものの、脱原発の方針はブレていない。電力消費量に占める再生エネルギー比率は5割弱まで高まり、積極的な環境投資で経済成長の絵を描いている。
要は自民党政権の本質は「今だけ、カネだけ、自分だけ」。大事なのは、短期的な利益と選挙の票に直結する支援組織、政権維持や保身。50年後、100年後の未来にどんな国を残すかなど考えていない。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。
「中長期的な視野を持って提案する政治家が自民党にいなかったわけではないのですがね。例えば20年くらい前でしょうか。少子化対策のために社会保障制度を抜本的に改革すべし、と提言していた若手がいました。しかし、こうした声が吸い上げられないできた。女性議員もなかなか増えません。偉くなって出世するのは、男性に媚びるような女性議員ばかり。世代交代が進まず、男尊女卑の政党では、国を成長させられるわけありません」
もはや自民党ではどうにもならない。国民が目覚めるしかないのである。
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