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日銀・植田新総裁の甘い認識…金融緩和で経済を持たせるやり方はもう限界だ 金子勝の「天下の逆襲」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/318701
2023/02/14 日刊ゲンダイ ※文字起こし
緩和路線から“軟着陸”できると考えているのか。だとすれば、認識が甘い(植田和男次期日銀総裁)/(C)共同通信社
日銀の新総裁に元日銀審議委員の植田和男氏が就任する見込みだ。植田氏はさっそく「黒田総裁の政策は適切だ」「金融緩和の継続が必要」と表明した。ダラダラと時間をかけて緩和路線から“軟着陸”できると考えているのか。だとすれば、認識が甘い。
異次元緩和については「2年で2%の物価上昇」という目標を到達できない時点でやめるべきだったが、アベノミクスを10年も継続したために1000兆円を超える普通国債が累積し、日銀の保有残高は600兆円に向かう勢いである。
そんな中、投機筋の国債売り圧力が大きく、長期金利を低く抑えるイールドカーブ・コントロール(YCC)は維持困難に陥っている。だが、YCCを外して金利を上げたら、国債費は膨張。日銀は保有国債の含み損を抱えて債務超過に陥る。そもそも雨宮副総裁が就任を断ったのも、もはや財政金融政策がもたないと考えたからではないのか。
問題は、財政金融だけではない。少子高齢化も深刻だ。すでに出生数が年間77万人にまで落ち込んでおり、その半数の女性のうちのさらに半分しか子供を産まないとしたら、20〜30年後の出生数は20万人を割ってしまう。国が消滅する。
「安倍晋三 回顧録」(中央公論新社)に安倍元首相が民主党政権を「悪夢」と呼んだキャンペーンを「成果」と捉える記述があり、立憲民主党が反発。安倍政権を「失われた10年」と批判した。それに対し、岸田首相は「ミスリードだ」と開き直り「幼児教育の無償化を進めたのは自民政権だ」と反論したのだが、これは所得制限なしの児童手当同様、民主党の政策のパクリだ。
未来のない国には子供は生まれない。産業の衰退も著しい。トヨタは車の販売台数こそ世界1位だが、電気自動車化で決定的な後れを取っており、2022年4〜12月期の純利益は米テスラの5分の1だ。情報通信産業もRNA医薬品も合わせて9兆円の貿易赤字になっている。
さらに、政府は米バイデン政権に乗っかって、中国への半導体輸出を規制する方針だ。輸出が止められれば、貿易赤字は未曽有の規模に達するだろう。すでに22年は20兆円の貿易赤字だが、今年1月は上中旬だけで3兆円超の赤字だ。このペースだと今年の赤字額は30兆円を超えてしまう。日米金利差が拡大し、やがて資金が日本から海外に流出するキャピタルフライトが起きかねない。
もはや日本経済はもちそうにない。ダラダラと金融緩和で日本経済をもたせるやり方はもはや限界だ。カタストロフが来る覚悟が必要だ。
金子勝 立教大学大学院特任教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現職。慶応義塾大学名誉教授。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。近著「平成経済 衰退の本質」など著書多数。新聞、雑誌、ネットメディアにも多数寄稿している。
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