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「消費増税の口実が見つかった」…思いつきの「少子化対策」議論に財務省がほくそ笑む理由がひどすぎる
ヤフーニュース 2022/2/6配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/482254d314ed35fb8e0ebaad16cbe521b1b5bdb5
一人当たりGDPは低下しない?
週明けの国会は、荒井首相秘書官の不適切発言を巡る論戦で持ちきりになるだろう。もっとも岸田政権の動きは速く、すでに荒井秘書官を更迭している。
荒井秘書官の発言は2月3日夜のことで、発言を記事にしないオフレコが前提だったが、「公益性がある」とした毎日新聞が同日22時57分にネット配信した。その後荒井秘書官の釈明が行われたが、これはオンレコだったため各社ともに報じた。
荒井秘書官の発言は個人的な話で、居酒屋でやるような種類のものだから、オフレコ会見でも話すのかと驚いた。オフレコを破って「スクープ」した毎日新聞にも驚いたし、岸田首相も息子ではないからと素早く更迭したことにも驚いた。
本コラムではそうしたスキャンダラスな話でなく、話題になっている児童手当の所得制限について述べよう。
発端は岸田首相が年頭の記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と述べたことにある。その後、これを受けて自民党の甘利明前幹事長が、財源として消費税の増税に言及した。
まず、天の邪鬼な筆者にとって、少子化対策はその必要性が胸にストンと落ちない。人口減少しても、一人あたりGDPが必ずしも低下するとは言いがたいからだ。
世界で人口減少している国は30ヵ国程度あるが、一人あたりGDPが成長している国は少なくない。最近の世界各国の人口成長率と一人あたりGDP伸び率の関係を示した下図を参照してほしい。端的にいえば、人口減少しても経済成長しないとはいいがたく、ロボットでかなりの程度補えると思う。
人口動向の根本要因が分からないにもかかわらず、経済的理由であるという仮説から、政治家のみならず在野からも、金銭要因による人口増を誘導する政策提言がおびただしく持ち上がっている。少子化対策ほど、客観的なエビデンス・ベースト・ポリシーからほど遠い分野もなく、なんでもありの世界だ。
最後には換骨奪胎
人口動向は人の生物としての本能的な営みが大きく関係するのは自明だが、それを金銭要因でどこまで誘導できるかについて、実証分析もないのに、こうした提言がなされる。逆にいえば、基本的なメカニズムが分からないので、人口問題は政治課題となるのだろう。人口問題は国民に人気があり、政治家には人口問題に関心を持つ人が多い。
もっとも、少子化対策は誰でも思いつきを言えるものの、そのほとんどは、第一子にいくら手当を出し、第二子にいくら手当を出すといった、後述する児童手当の派生形である。
財務省から見れば、政治課題なので無視することはできない。しかし、どうせ政治要求が来るのであれば、それを逆手にとることを考えているはずだ。
そこで、財務省が考えるのが「少子化増税」である。人口を増やすために増税とはちょっと意表をついているが、少子化対策には安定財源をという例のフレーズだ。その財務省の思惑をつい口にしたのが、甘利前幹事長だった。本人は、趣旨は違うのに一部を切り取られたと弁明しているが、いかにも脇が甘かった。財務省にとっても、本音が漏れたので焦ったことだろう。
財務省の戦略は、少子化対策について多くの政治家から語ってもらう、ただし財源論抜きでは語らせないというものだ。そして、最終的な取りまとめ段階になったら、政治家の少子化対策にはエビデンスがないと主張し、大幅に換骨奪胎するものの、安定財源論だけはしっかり残し、少子化増税に持っていくのだろう。少子化対策は広い意味での社会保障になるので、社会保障財源である消費税増税にもっていくのが目に浮かぶ。
少子化対策担当大臣は内閣府特命担当大臣である小倉將信氏、41歳当選4回の新進気鋭だ。まさに百家争鳴の少子化対策の取りまとめにはうってつけである。少子化対策はすぐに答えを出す必要はなく、議論検討していればいい。そのための会議を官邸に作ると首相出席が必須となり煩わしいので、内閣府特命担当大臣は適任なのだ。
その方が財務省にとっても好都合だ。議論が拡散気味でも時間がかかってもよく、最後の刈り取りの時、政策には効果で難点をつけながら安定財源で増税を盛り込めばいい。これは異次元の増税だろう。
もっとも、自民党内では、面白い議論がなされている。児童手当の所得制限撤廃論については自民党内で茂木敏充幹事長が前向きな発言をした一方、西村康稔経産相は否定的な見解を示している。撤廃の是非や少子化対策に資するのか、財源問題が出てくるのか。どのような制度が望ましいのか。
税と社会保障が「別物」の日本の盲点
この問題を考える前に、先進主要国の児童手当や税制支援をみておこう。
児童手当について、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンは第一子月額2万円程度の制度がある。所得制限はいずれの国でもない。アメリカには手当がない。
税制支援については、イギリスは児童税額控除、フランスはN分N乗、ドイツは児童扶養控除(児童手当との選択制)、アメリカは児童税額控除がある。スウェーデンは税制支援はない。
総じてみると、先進主要国では、児童手当は児童税額控除と一体運営になっており、児童手当の所得制限にそれほど意味はない。
日本では、児童手当は第一子原則1万円で所得制限があり、税制支援は扶養控除。両者は併存しており、一元化されていない。
欧米で児童手当と税制支援が一体となっているのは、税と社会保障が一体運営となって、例えば税と社会保険料が一体として歳入庁で運営されているからだと筆者は思っている。児童手当も広い意味で社会保障関連支出なので、税と一体的に運用されるのが合理的だからだ。
しかし日本では、税と社会保障はまったく別物で、財務省と厚労省がそれぞれ縦割りで運営している。かろうじて両者の接点を探せば、消費税を社会目的税とすることだ。
この観点から言えば、児童手当で所得制限か否かが問題になったとしても、税制支援の議論が出てこなければ、財務省としても悪い話ではない。しかも、児童手当に焦点が集まれば、各方面からでてくる少子化対策も一緒に裁けるので、財務省の想定内の展開だろう。
本コラムで再三指摘してきたが、消費税を社会保障目的税とする先進国は日本以外にない。そして、消費増税のためにだけにこの接点があり、財務省は社会保障を人質に消費増税を企む。
今回も自民党の甘利氏が思わず漏らしたが、異次元の少子化対策は異次元の消費増税につながる可能性がある。その一方、税と社会保障の一体である歳入庁がないのは先進国では日本だけだ。
児童手当だけ見ると所得制限は正当化できそうにも見えるが、税と社会保障の一体を前提として児童税額控除など税制支援があれば、児童手当で所得制限なしのほうが簡明な仕組みだ。
日本で児童手当の所得制限があるのは、財源問題とどもに税額控除などの税制支援を拒んできた財務省の存在も無視できない。これまで自民党が所得制限に反対してきたのも裏には財務省がいたからだ。
日本の児童手当での所得制限は、歳出を少なくするとともに、歳入庁を忌避し税と社会保障の一体運用をしたくない縦割り志向の財務省が政治家に振付つけた結果ともいえる。
国際比較からみた児童手当の正解は、所得制限なしと児童税額控除(N分N乗など他の税制支援でもいい)の組合せで、それらの一元化である。この組み合わせであれば、少子化問題の切り札とはならなくても、子供を持つ世帯への支援としては国際標準なので悪くはない。
それには、今の財務省・国税庁と厚労省・年金機構の縦割りを統合し、歳入庁などの組織の一元化することも必要になるが、はたして岸田政権でできるだろうか。
橋 洋一(経済学者)
https://news.yahoo.co.jp/articles/482254d314ed35fb8e0ebaad16cbe521b1b5bdb5
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