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※紙面抜粋
※2022年12月1日 日刊ゲンダイ
【#岸田政権に殺される、は本当だ】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) December 1, 2022
敵基地攻撃をめぐるデタラメの極み
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/8VmaDsDKG2
※文字起こし
「敵基地攻撃能力(反撃能力)保有」の既成事実化がドンドン進んでいる。11月30日も<トマホーク最大500発購入>と読売新聞が1面トップの大見出しで報じていた。反撃の手段として想定する国産ミサイルの改良・運用開始まで時間がかかるので、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」を購入して活用を図る。2027年度をメドに最大500発の保有が必要だと見積もっているという。
岸田首相が11月に東南アジアでの国際会議に出席した際、バイデン米大統領との会談でトマホークの購入方針が話し合われていた。年末の防衛3文書改定に向け、自公両党はあす「反撃能力は自衛権の一環であって、先制攻撃には当たらない」と合意するらしいが、すでにトマホーク購入を米国と交渉しているのだから、政府・与党の防衛協議が、いかに結論ありきの茶番なのかがよく分かる。
防衛費倍増についても財源が固まる前から、なし崩しで既成事実化が加速している。
岸田が28日、防衛費(関連予算含む)を27年度までに現在のGDP(国内総生産)比で倍増となる2%とするよう、財務相と防衛相に指示した。今年度の当初予算で防衛費は5.4兆円(GDP比0.94%)。2%なら11兆円で、今より5兆円以上の財源確保が必要だ。消費税なら2%分の税収増。国民1人あたりの負担増は年間4万円となる。
財源をめぐって、恒久財源としての増税を主張する政府と、増税ではなくまずは国債発行で増額分を確保すべしとする自民党で綱引きが行われているが、「倍増」自体には政府・与党のどこからも異論は出ない。
ここへきて財務省は、新型コロナ関連補助金や外国為替資金特別会計(外為特会)の剰余金の活用という、一時しのぎの苦肉の策まで出してきた。財務省は外為特会について、円安や物価高対策のためには「使えない」と難色を示すのに、防衛費ならホイホイ出すのか。ご都合主義、極まれりだ。
防衛費増額のためなら何でもアリで、闇鍋のように何でも突っ込んでしまえという発想。もうメチャクチャだ。
戦争を「しない」ではなく「備える」防衛費
元経産官僚の古賀茂明氏はこう言う。
「本来、国の予算編成では、社会保障や医療、子育て支援や教育など全ての経費を横に並べてプライオリティーを決めるべきなのに、防衛費だけは特別扱いされる。今回も先に『GDP比2%』という数字が決まり、とにかく増額ありきです。その財源をめぐって、増税か国債かの議論になっていますが、増額の方向には変わりなく、実際、防衛費捻出のために社会保障を抑えようという動きが予算査定で起きています。これまでの『戦争をしない』ための防衛費ではなく、中国が攻めてくるという前提での『戦争に備える』ための防衛費への大転換でもあります。それが本当に国民を守ることになるのかはあやふや。岸田政権の理屈はやはり、『国家あっての国民』であり、『国民あっての国家』ではないのです」
防衛費増額について岸田は、「必要なものを積み上げる」として「数値目標」を避けてきた。ところが、たった4回の会議で有識者に「反撃能力の保有が不可欠」「幅広い税目による負担が必要」と、お手盛りの報告を出させ、安倍元首相の“遺言”のような「GDP比2%」への倍増を決定してしまった。
その後の政府・与党の協議は「敵基地攻撃」も「2%」もありきで行われているが、敵基地攻撃は、憲法9条の下での専守防衛という戦後の防衛政策との整合性が危うくなる一大事だ。当然、野党も入れた超党派で国民全体の議論があってしかるべきなのに、国会に諮ることもなく、きちんとした説明もない。つまり国民無視である。
世論調査で「早く辞めてほしい」がトップになるほど、国民から見放されている泥舟政権が、なぜ勝手に決めるのか。岸田は、年明けにワシントンを初訪問して日米首脳会談を行うことを熱望している。防衛費増額の“正式決定”を手土産にしようとでも考えているのだろう。
「ジリ貧の岸田首相ですから、防衛費増額でバイデン米国に評価してもらいたいという下心がある。日米は軍事的に一体化して戦う体制づくりを進めています。日本の防衛力増強は、米国から見れば本当にありがたい話で、年明けの岸田首相の訪米が実現すれば、バイデン大統領は『日本は素晴らしいパートナーだ』と抱き付かんばかりでしょう。岸田首相も外交でポイントを挙げて、政権維持につなげようと考えているのだと思います」(古賀茂明氏=前出)
百害あって一利なし 国民を危険にさらす恐れ
しかし、である。たとえトマホークを500発購入しても、敵基地攻撃の実効性に疑問符が付いていることは、防衛関係の専門家の間では常識だ。
自衛隊の元海将・伊藤俊幸氏は、「今は(ミサイルが)移動式発射台や潜水艦から突然発射される。もし兆候をつかんだとしても発射の意図や方向が分からなければ、日本への武力攻撃に着手したとは言えない。その段階での反撃は先制攻撃となり国際法違反であり、撃たれる前に敵基地を攻撃するのは不可能だ」と毎日新聞で語っていた。防衛ジャーナリストの半田滋氏も「敵基地攻撃は事実上不可能」、軍事評論家の前田哲男氏も「技術的に無理」と日刊ゲンダイに答えている。
それどころか、敵基地攻撃能力の保有は百害あって一利なしだ。むしろ国民を危険にさらす恐れがある。
防衛省出身で内閣官房副長官補(安全保障担当)を務めた柳澤協二氏が、きのうの東京新聞で、「保有した敵基地攻撃能力で実際に相手国を攻撃すれば、日本本土を攻撃する大義名分を与え、際限のない撃ち合いに発展する危険性」と指摘している。中国や北朝鮮には相当数のミサイルがあり、一気につぶせなければ、「日本が報復される」というのである。
専守防衛についてはこう話す。
「専守防衛とは日本は国土防衛に徹し、相手の本土に被害を与えるような脅威にならないと伝え、日本を攻撃する口実を与えない防衛戦略だ。敵基地攻撃能力を持てば、それが完全に崩れて専守防衛は有名無実化する」
そして、国民を危険にさらす恐れについて、こう言うのだ。
「敵基地攻撃という戦争に備える政策を選ぶなら、国民にも被害が及ぶ恐れがあると政治家が伝えなければいけない。国民全体が戦争に耐え抜く思いになっているか疑問で、国民に都合の悪い事実を伝えていない」
敵は、内側から国民生活を破壊する岸田首相だ
政府・与党が言うような「抑止力向上で安全になる」というのは嘘っぱち。そのうえ、反撃能力を持ったら最後、際限のない軍拡競争となり、それをまかなうために増税と戦時国債まがいのゾンビまで復活しかねない。日本経済と国民生活は火の車となり、戦争国家へ一瀉千里だ。「いつか来た道」へ再び足を踏み入れようとしているのに、国民も大メディアも暴走する政府・与党を止めないのか、傍観するのか。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「敵基地攻撃能力の保有は、空想的な軍国主義に基づくたわ言。できないことをやろうとして、専守防衛くそくらえ、という話です。そのために国会の議論もなく、コロナと物価高で苦しむ国民に大増税を押し付けようなんて、政府の暴走であり、岸田首相は合理的な判断能力を失っているとしか思えません。外から攻撃される前に、国民生活が破壊され、内側から崩れていく。やっていることが本末転倒。国民の敵は岸田首相ですよ」
まさに「#岸田に殺される」である。すべての国民にとって「生命と財産の危機」は他人事ではない。
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