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※2022年10月31日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2022年10月31日 日刊ゲンダイ2面
【頼みの総合経済対策も非難ごうごう】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 31, 2022
迷走岸田内閣 政権末期のような惨状
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/jZw01vtOFs
※文字起こし
もはや政権担当能力を完全に失っている。統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党とのズブズブ関係が問題になって以降、内閣支持率はつるべ落とし。過去最低の水準に苦しむ岸田政権が、支持率浮揚の頼みの綱として繰り出した財政支出39兆円の総合経済対策は、散々な評判だ。
大メディアも手厳しい。大手各紙の社説は〈財政規律の喪失を憂う〉(朝日)、〈補助金頼みでは克服できない〉(読売)、〈暮らし第一と言えるのか〉(毎日)、〈巨額の痛み止めを盛る経済対策の危うさ〉(日経)、〈賃上げの具体策欠く〉(東京)、〈実効性より規模を優先か〉(産経)──と非難ごうごうである。
これじゃあ、自身の発案で会見場の後方に大型モニターを設置し、「わかりやすく伝えたい」と国民生活を支える姿勢をアピールしようとした岸田首相の小ざかしい努力も水の泡だ。
そもそも、8月の内閣改造で経済対策の取りまとめ役として、よりによって山際前経済再生相を留任させたのが運の尽きだ。教団との接点が次々発覚しても、後出し説明で「記憶にない」を連発。岸田が「更迭」を決断したのは24日と経済対策決定の4日前というドタバタ劇だった。
これだけ岸田の後手対応を見せつけられれば、自民党内の積極財政派はつけ上がる。「30兆円が発射台」(世耕参院幹事長)、「30兆円規模が必要」(萩生田政調会長)などと規模増額を求める声が噴出し、みるみるうちに歳出は拡大。
土壇場の27日時点でも財務省は一般会計の規模を約25兆円としていたが、岸田は党内の積極財政派の突き上げに押し切られ、財源の裏付けとなる補正予算案は一般会計で29兆円超に膨れ上がった。一夜にして「規模ありき」で4兆円増額というデタラメには呆れるしかない。
「お目付け役」に逆らえない軟弱さ
特に図に乗っているのは萩生田だ。28日には自民党の了承を得る前に財務省が岸田に経済対策の規模を伝えたことを「禁じ手」だと記者団に不満を漏らし、自分が岸田に「納得していない」と伝えたと党会合で明かしたことを吐露。「禁じ手には禁じ手で返した」と得意顔で語っていた。
ふんぞり返る萩生田に対し、岸田は「統一教会問題で政権に迷惑をかけた分際で何をエラソーに」と一喝できず、平身低頭で唯々諾々と従っているのだから情けない。
経済対策の調整の最終盤では、国会の審議なしで政府の意向で使える「予備費」を4.7兆円も上積み。わざわざ官僚たちに「国際情勢の変化や大寒波の到来に伴い発生しうる経済危機に対応する」という理由をひねり出させ、「ウクライナ情勢経済緊急対応予備費」(仮称)を急きょ新設する大盤振る舞いで、萩生田たちに“恭順の意”を示したのだ。
憲法が定める「財政民主主義」の原則など「くそくらえ」とばかりに、岸田が積極財政派にひれ伏したのは焦りの表れだ。もともと党内第4派閥の領袖に過ぎず、支持率急落で求心力を失った今、萩生田や世耕らが所属する党内最大派閥の安倍派の支えがなければ、政権は維持できない。わが身可愛さで彼らの不満を鎮めようと、岸田は規模だけ膨らませたバラマキの亡国予算案をのむしかなかったのだ。
後手に回った山際更迭も同様だ。山際は麻生派に所属し、派閥の重鎮・甘利前幹事長に近い。山際留任を強く推したのも甘利で、派閥領袖の麻生副総裁と共に「山際を辞めさせればドミノ辞任が起こる」旨を岸田に伝え、強く止めてきたともいわれている。
小派閥出身の首相の性で、岸田は党内第3派閥の麻生派を敵に回すわけにもいかず、山際が政権に与える傷が回復不可能なほど広がって、ようやく重い腰を上げたのだろう。「お目付け役」に逆らえない岸田の軟弱さが、内閣の迷走を招いたのである。
指導力ある首相なら無駄金を出す必要なし
こうして党内へのご機嫌取りのため、岸田は物価高対応を中心に経済対策をブクブクと膨らませた。しかし、黒田日銀との齟齬が消えない限り、効果は極めて怪しい。
折しも経済対策が決まった28日、日銀は金融政策決定会合で金融緩和の継続を決定。物価高対策に巨費を投じる政権側と、円安容認で物価高の一因となっている緩和策に固執する黒田総裁という倒錯した状況が、ぴたりと重なったわけだ。
この日の会見で黒田は物価上昇率2%の目標について「持続的・安定的に達成できるような状況には至っていない」と語り、一方で政府は目玉となる電気・ガス料金の抑制策がインフレ率を1.2%程度押し下げるとの試算を公表した。
日銀が物価上昇を目標に掲げる中、政権側は物価を抑える政策に胸を張るなんて、もうムチャクチャだ。経済アナリストの菊池英博氏はこう言った。
「黒田氏は中央銀行のトップとして不適格です。歴史的な円安が物価高に拍車をかけ、家計を痛めつけているのに、なぜ『通貨の番人』が見過ごすのか。利上げに動くポーズを取るだけでも市場に与える影響は大きい。時には前言撤回も辞さない融通無碍な手法で市場ににらみを利かせるべきなのに、黒田氏は『今すぐ金利の引き上げや出口が来るとは考えていない』とペラペラ語り、投機筋に安心感を与えています。
岸田首相も『これ以上の円安は容認できない』立場なら、方針に反する黒田氏に強いメッセージを発するべきです。結局、岸田首相に指導力があれば、為替介入や覆面介入に10兆円近い外貨準備を投じることも、39兆円もの財政出動も無用でした。『新しい資本主義』も中身ゼロ。しっかりした理念もビジョンもない指導力不足の首相のせいで、巨額の国費が無駄金に消えそうです」
この期に及んで「安倍政治」と決別できず
逆風のただ中、岸田がすがる経済対策まで不発に終われば、この政権は沈むだけだ。すでに政権末期のような惨状はそこかしこに現れている。
まず目立つのは官邸と自民党のギクシャクだ。つい先日もあり得ないような連携不足が露呈した。後藤経済再生相が25日夜の正式就任に先立つ同日の衆院本会議で、裁判官訴追委員会委員に選任されてしまったのだ。
三権分立の観点から閣僚は国会の役職に就かないのが慣例である。訴追委の委員に欠員が出る見通しとなり、自民党総務局は10月上旬、後藤を充てると衆院事務局に届け出済み。この日に承認の日程も決まっていた。
ところが、山際の後任がギリギリまで決まらず、岸田が後藤に決めたのは同じ日の朝。官邸からその連絡はなく、報道で知った党職員が何らかの対応を検討したが、間に合わなかったという。
物価抑制を期待する経済対策を巡り、鈴木財務相が「財政出動により需要が喚起され、物価を押し上げるのではないかと心配する向きがある」と発言するなど、政権内もチグハグだ。
異常な存在感で集中砲火を浴びていた山際を失って水際の防波堤が決壊し、統一教会問題の追及は拡散。山際更迭後は6人の副大臣らに新たな接点がゾロゾロ浮上し、秋葉復興相と寺田総務相の政治資金問題も、決着の見通しが全く立たない。
「目も当てられない惨憺ぶりです。岸田首相自身も統一教会への調査着手の方針に関し、国会答弁が右往左往。場当たり対応のアヤフヤさで混迷に拍車をかけています。教団の関連団体が自民党の一部議員と交わした『推薦確認書』について党としての調査を否定するなど、この期に及んで教団と関係の深い安倍派に及び腰です。岸田首相が安倍政治と決別しない限り、待っているのは『退陣』の2文字です」(政治評論家・本澤二郎氏)
機能不全に陥った政権の終焉は時間の問題のようだ。
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