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※2022年10月26日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2022年10月26日 日刊ゲンダイ2面
【とことん政局観のない首相だ】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 26, 2022
遅すぎた更迭 国民愚弄政権の終わりの始まり
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/jDtfSokZFi
※文字起こし
振り返ってみれば、岸田首相が悲願を実らせたプロセスもそうだった。自民党の最大派閥を牛耳る首相の顔色をうかがい、恭順の意を示し続けたのに、何度もハシゴを外された。昨秋の自民党総裁選で「岸田は終わった、そんな厳しい評価もいただきました」と、不死鳥のごとく蘇ったかのような口ぶりだったが、やはり終わった男は終わった男でしかない。とことん政局観のない首相だ。瀬戸際大臣の遅すぎた更迭は、国民愚弄政権の終わりの始まりである。
反社会的カルト集団の旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と関わりのある閣僚を一掃するとして、岸田が前倒し実施した内閣改造から2カ月。教団との関係をゴマカして留任した山際経済再生相が24日、ようやく辞任した。事実上の更迭だ。ひどい記憶障害に襲われているのか、虚言癖がフル回転しているのか、山際は動かぬ証拠を前にしても「記憶がない」「記録もない」を連発。教団関連のイベント出席でネパールへ飛んだことがバレると「行った記憶はあるが、会議出席は覚えていない」、教団総裁と会っていたことが明るみに出ると「マスコミから指摘されて、写真を見て、会ったことがある記憶と合致した」などと、人を食った釈明を繰り返し、国会審議でも「これから新しい事実などが出てくる可能性はある」と開き直っていた。
口を開けばウソをつく大臣が、円安物価高に苦しむ国民の暮らしに直結する総合経済対策を担うデタラメ。内閣支持率はみるみる下がり、危険水域に突入。この間、世間は「山際辞めろ」の大合唱だった。
それでも岸田は「説明責任をしっかり果たしてもらうことが大事」などと暖簾に腕押し。24日午後の参院予算委員会の集中審議で、山際更迭観測をめぐる報道について真偽を問われても、「そういったことは全くありません。予算委で質疑を受けている最中。丁寧に答えるのが閣僚の役割だ」と完全否定していた。それが、数時間で一転。舌の根も乾かぬうちに、山際から辞表提出を受け入れる形でクビを切った。
うるさ型におもねり運の尽き
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。
「山際氏を更迭するタイミングはいくらでもあった。7月の参院選の街頭演説で〈野党から来る話は、われわれ政府は何一つ聞かない〉と言った時点で、閣僚の資質は問われていたのです。国民全体に奉仕するという政府の役割を何だと思っているのか。この暴言ひとつだけでもクビは当然で、内閣改造でお役御免にするべきだった。ですが、山際氏が所属する志公会の領袖は岸田首相の後ろ盾の麻生副総裁、山際氏の後見人は志公会ナンバー2の甘利前幹事長。本人が旧統一教会との関わりを申告せず、うるさ型の意向もあった。参院選も勝ったことだしと、岸田首相が事態を甘く見たのが大間違いだったのです。この期に及んでの更迭で、岸田首相の政治センスのなさがいよいよ露呈した。旧統一教会問題は清和会(安倍派)の問題だとタカをくくり、総合経済対策を反映した今年度第2次補正予算案が臨時国会で通ってから辞めさせればいい、と踏んでいたようです」
ここまできたら徹底的に守り通すのかと思っていたら、重要法案の審議入り前に辞任。山際の所信表明に対する質疑は26日、衆院内閣委員会で予定されていた。委員会審議が始まってから閣僚が交代すれば、野党にさらなる追及の材料を与え、所信表明と質疑のやり直しを要求されるのは避けられない。
教団問題から目をそむけるために臨時国会の召集を先送りにし、ギリギリの国会日程を組んだのが裏目に出て、国会運営に支障をきたすのは火を見るより明らかだったのだ。
後藤新大臣の地元長野でも疑惑噴出
そうした中、山際の後任に起用したのは後藤前厚労相。岸田は再入閣の理由を「政治経験の豊富さ、説明能力の高さ、経済社会変革への情熱を重視した」とし、旧統一教会問題をめぐっては「接点が確認されたら説明責任を尽くして関係を絶ってもらう。これを大前提に就任をお願いした」と力強かったが、今度こそ大丈夫なのか。後藤自身も就任会見で教団との関わりについて「私が知る限り、当該団体とは関係がない」「(いわゆる政策協定の)推薦確認書を提示されたことも、署名を求められたこともありません」などと、妙にニッカリ笑いながら否定していたが、地元の長野県でもまた、自民と教団の密接な関わりが指摘されている。
「自民党長野県連が参院選に擁立したタレント候補の松山三四六氏が旧統一教会から支援を受けた疑いが浮上しています。松山氏は下半身スキャンダルを報じられて失速し、その影響で安倍元首相の遊説先が長野県から奈良県に変更され、銃撃事件が発生した。当時の県連会長はほかならぬ後藤大臣でした。今月23日に県連が開いた選挙対策委員会・職域支部長合同会議に出席した松山氏は、地元メディアに教団から支援を受けたかどうかを問われ、〈言えない〉と一言発して立ち去り、否定も肯定もしなかった」(野党関係者)
県連の会議で後藤は、松山落選の責任を取る形で辞任。清和会の全面支援を受けて東京選挙区で初当選した生稲晃子参院議員は、都連会長の萩生田政調会長に伴われて旧統一教会の施設に入り込み、支援を訴えていた。松山と教団の関わりが事実だとしたら、後藤にしても知らぬ存ぜぬは通用しない。ちなみに、後藤の地元事務所と目と鼻の先に旧統一教会の施設がある。
英国の上を行くこの国の惨状
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。
「山際氏の更迭にここまで時間がかかったのは、岸田首相が辞任ドミノを恐れているから。その可能性が最も高い時期に、後藤経済再生相の再入閣が吉と出るか凶と出るか。果たして、キッチリとした身体検査を済ませたのか。『説明能力の高さ』を高く評価しているようですから、そのあたりも織り込み済みなのか。英国のトラス前首相は史上最短の就任44日で退陣に追い込まれました。英中銀がインフレ退治の利上げを推し進める中、借金頼みのバラマキと批判が強かった大型減税を強行しようとし、通貨、株、国債がそろって急落する『トリプル安』に見舞われ、身動きが取れなくなった。市場からノーを突きつけられ、政権支持率は7%まで低迷し、政権の座から追われたのです。この国が置かれている状況も英国とほぼ同じ。岸田政権はアベノミクスを踏襲し、円安に誘導する金融政策を継続しながら、円安に歯止めをかけるべく外貨準備を取り崩して為替介入を繰り返している。その一方で、赤字国債発行頼みで20兆円規模の総合経済対策を打とうとしている。矛盾した政策を続けている上に、旧統一教会問題を抱えている。内閣支持率が下げ止まる要因はなく、真っ逆さまに底へ向かっていくかもしれません」
何をやっても後手後手、裏目、トンチンカンの岸田政権と国民は心中するしかないのか。
支持率1ケタへのカウントダウンがいよいよ始まった。
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