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※2022年10月24日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2022年10月24日 日刊ゲンダイ2面
【この相場は市場からの退場勧告】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 24, 2022
岸田首相が辿るトラス英首相と同じ道
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/sdafe9fmwM
※文字起こし
この国のデタラメぶりがいよいよ浮き彫りだ。
日米金利差拡大などを背景に円安が加速する中、先週末の円相場は一時、151円94銭まで下落。1日で2円近くも円安が進み、32年ぶりの水準を更新した。そこへ割って入ったのが、政府・日銀だ。9月22日に過去最大となる2.8兆円を投じ、24年ぶりの円買い・ドル売りの為替介入に動いてからちょうど1カ月。再び介入に踏み切った結果、円相場は安値から7円超も円高に振れ、144円台まで急騰した。しかし、効果は長続きせず、間もなく147円台まで下落。9月の介入では安値だった145円90銭から5円ほど円高になったが、3週間後には介入前の水準に戻った。金融政策の失敗を糊塗するために、一体どれほどの外貨準備高を取り崩したのか。
介入の指揮を執った財務省の神田真人財務官は「介入の有無はコメントしかねる」と言い、豪州に外遊中だった岸田首相も「為替について具体的なコメントはしません」とし、覆面介入のスタンスを取っている。今月末の財務省による市場介入額の発表を待つほかないが、今回の介入は米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が「FRB(米連邦準備制度理事会)は11月1〜2日に開くFOMC(米連邦公開市場委員会)で、その次の12月会合での利上げ幅縮小を協議する」と報じた直後。米金利が低下基調に転じたことで、円相場は円高方向に傾いていた。9月の介入規模を上回ったかどうかは見方が分かれているが、兆円単位の国富が投じられたことは間違いない。
1日30兆円の資本逃避
立教大大学院特任教授の金子勝氏(財政学)はこう言う。
「岸田政権はアベノミクスを踏襲し、円安に誘導する金融政策を継続しながら、国家の資産をはたいて円安に歯止めをかけようとしている。これほどの矛盾はない。神田財務官は『介入の原資は無限にある』と言って市場を牽制しようとしていますが、外貨準備高は1.2兆ドル(約177兆円=9月末時点)。円安対策に大半を投入できるわけがなく、投機筋に足元を見られています。円からのキャピタルフライト(資本逃避)も凄まじく、個人が手掛けるFX(外国為替証拠金取引)の円・ドル売買額は9月に単月として初めて1000兆円を超えた。1日30兆円が日本から逃げ出している計算です。9月までの貿易収支は14カ月連続の赤字で、2022年度上半期は過去最大の赤字になった。円を売る理由は積み重なっても、買う理由は見当たりません」
一方、28日に閣議決定される予定の物価高騰対策を柱とする総合経済対策をめぐっては、自民党内は「真水で30兆円の財政出動が発射台だ」(世耕弘成参院幹事長)と威勢がいいが、財源の大半は赤字国債発行による借金。性懲りもなく、ゼロ金利を前提としたバラマキをやろうとしているのだ。
コロナ禍に入って以降、すでに100兆円の赤字国債を発行。国の借金は1200兆円超に膨れ上がり、GDPの2倍を上回っている。世界の流れに逆行して金融緩和を続け、円安物価高を招きながら、その対策に巨額の血税をつぎ込むのは倒錯というほかない。利上げは国債費の膨張に直結するとはいえ、デタラメが過ぎる。岸田はなぜ突き上げを食らわないのか。
英国のトラス首相は史上最短の就任44日で退陣に追い込まれた。引き金となったのは、金看板だった総額450億ポンド(約7.5兆円)の大型減税だ。英中銀がインフレ退治の利上げを進める中、財源の手当てのない借金頼みのバラマキ政策を推し進めようとし、IMF(国際通貨基金)からは「大規模で的が絞れていない」と苦言を呈され、サマーズ元米財務長官などの多くの識者に「最悪のマクロ経済政策」とコキおろされた。結果、通貨、株、国債がそろって急落する「トリプル安」に見舞われ、モーレツな「英国売り」が吹き荒れた。市場からノーを突きつけられ、政権支持率は7%まで低迷。トラス辞意の観測が駆け巡った途端、国債利回りが下落してポンドが急上昇し、辞任は不可避となった。世界有数の金融都市を抱える英国では、民主主義もやはり正常に機能している。
年内発表の経済指標は円安の材料
日本が先進国の一員だと言い張り続けるのであれば、岸田もトラスと同じ道を辿らなければおかしい。この円相場の動きは市場からの退場勧告だ。市場の混乱を招いた英国首相の支持率が1ケタ台に落ち込んで退陣させられるのに、日本の首相がそうならないのは、日銀が国債を無尽蔵に引き受け、禁じ手の財政ファイナンスに堂々と手を染めているからだ。しかし、そんな八百長がいつまでも続くものか。
米モルガン銀行東京支店長の時代に「伝説のディーラー」と呼ばれ、参院議員時代に異次元緩和の危うさを追及した経済評論家の藤巻健史氏は、朝日新聞社の言論サイト「論座」(5月19日配信)で円相場の動きをこう見通していた。
「1ドルが400円、500円になってもおかしくない。1000円になったら日銀はもうつぶれてしまっているでしょうね」
その要因は貿易赤字の増大、日米金利差の拡大、米国による量的引き締め開始──の3点。いずれも現実になっている。1ドル=500円なんて想像したくもないが、米国が物価高騰を抑えるための利上げに踏み切った3月以降、円は対ドルで36円も下落した。節目は次々に割り込まれ、180円、200円超と円安が進むとの観測もある。
「年内に発表される経済指標は円安の材料にしかならないでしょう。財務省によれば、金利を1%引き上げると、国債費は数年で10兆円も増加する。利上げは財政危機と背中合わせで大きな痛みを伴いますが、金融政策の柔軟性を取り戻さないと、この国の経済は本当に破綻してしまう」(金子勝氏=前出)
支持率下落、迫る政権崩壊
バカげた円買い介入の効果は瞬間的で、永続性はない。アベノミクスで潤った大企業を主とする経団連の十倉会長は、「金融政策で為替をコントロールするのは本筋ではないし、金利で為替に対応するのは現実的ではない」「円安を嘆くばかりでなく、逆に利用することで日本経済を強くしていくことも必要だ」などと寝ぼけたことを言っていたが、通貨安で国力を増強できるのなら、そのシナリオを示してほしいものだ。
経済同友会の桜田代表幹事は「円安のメリット、デメリットを総合すると、やはりデメリットの方が多い。より心配なのは、この円安が単に日米金利差、あるいは根本にある米国のインフレに基づくものだけではなくて、日本の経済力と国力に起因するものが少しでもあるとすると大変心配」と発言。
日銀参与で日本商工会議所の三村明夫会頭は「中小企業は円安のデメリットばかり多く苦しんでいる」「金融緩和の効果、そのこと自体もきっちり分析した上で、どうするのかと考えるべき時期に来ている」と踏み込んだ。さすがに経済界からも金融政策の見直し要求が出てきたが、「まだゴマカせる」とタカをくくっている岸田自民のオメデタサにつける薬はもはやない。
毎日新聞の世論調査(22、23日実施)によると、内閣支持率は前回9月調査から2ポイント減の27%で、政権維持の「危険水域」に入り込んだまま。不支持率は1ポイント増の65%だった。自民党の政党支持率は24%。内閣支持率と政党支持率の合計が50を切ると政権運営が厳しくなるとする「青木の法則」によれば、政権崩壊が迫っている。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
「経済政策のみならず、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党の癒着、国会軽視、大軍拡、改憲路線。アベ政治を踏襲した岸田政権に大きなツケが回ってきている。果たして、岸田首相がそれを自覚しているのかどうか」
岸田の政治姿勢は「検討と先送り」。問題解決能力はない。円安地獄から一刻も早く抜け出す最善策は内閣総辞職だ。
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