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※紙面抜粋
※2022年10月8日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
日銀の黒田総裁(77)の任期が、8日で残り半年となったことで、大手メディアが「後継に課題」「政府、人選を本格化」と、次期総裁人事について一斉に報じている。
朝日新聞(7日付)も<日銀総裁人事「頭が痛い」><緩和の行方 首相のジレンマ>と1面トップで報じていたが、目を通した読者は鼻白んだのではないか。
黒田日銀が約10年続けてきた「異次元緩和」について、<好循環は生まれず、最近では副作用の方が目立つようになっている><「副作用」として代表的なものが、急速に進む円安だ>と弊害を指摘し、後任総裁は<針の穴を通すような狭き道を進まなければならない>と懸念している。
しかし、何を今頃、もっと早く言えよ、という話ではないか。黒田退任の半年前に異次元緩和の弊害を指摘することに、どれほどの意味があるのか。
アベノミクスの核心である異次元緩和が失敗に終わることは、スタートした時から分かっていたはずだ。
黒田日銀は、物価を上げることに血道を上げてきたが、そもそも景気が良くなれば物価は上がるが、物価を上げれば景気が良くなる、という発想自体が倒錯している。
異常な量のマネーを市場に流し続けたために、日本は「金利機能」まで喪失してしまった。
「本来、金利は市場で自然に形成されるものです。ところが、黒田日銀は人為的に“ゼロ金利”や“マイナス金利”にしてしまった。その結果、金融機関は利ザヤを稼ぐビジネスが成立しなくなった。とくに地方銀行は収益が悪化し、リスクを引き受けて地元企業の成長を支える本来の機能も果たせなくなってしまった。なぜ、日銀が世紀の愚策を採用したのか理解不能です」(経済評論家・斎藤満氏)
結局、異次元緩和は、庶民を潤わせることはなく、日本の借金だけを膨らませた。
異常な低金利を恒常化させたために、利払い負担が軽くなった政府は無軌道に借金を重ねるようになり、今や国債残高は1065兆円と歴史的な水準に達している。何らかの原因で金利が上がったら、政府はあっという間に借金を返済できなくなるだろう。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。「大手メディアはこの10年間、異次元緩和の欠陥について、いくらでも指摘するチャンスがあったはずです。トリクルダウンが起きないことも、国債残高が危険水準まで積み上がっていることも、途中で気づいたはずです。なぜ、もっと早く警告を発しなかったのか。黒田総裁の退任が近づき、アリバイ的に指摘しているようにしか見えません」
安倍シンパを恐れて異次元緩和をやめられない
異次元緩和が失敗に終わったことはハッキリしている。一刻も早く弊害だらけの政策とは決別すべきだろう。
そもそも、日本中が強烈なインフレに悲鳴を上げているのに、物価高を目的にしている異次元緩和を続けるのは、矛盾もいいところだ。世界の中央銀行もインフレを退治するために一斉に利上げに動いている。異次元緩和を続けているのは先進国では日本くらいのものだ。
なのに、岸田首相も黒田も弊害だらけの異次元緩和をやめる気がないのだからどうかしている。
そもそも、岸田はアベノミクスを否定していたのではないか。昨秋の総裁選時、アベノミクスで格差が生じたことを受け、格差解消を打ち出していた。国民も、岸田がアベノミクスから転換することを期待したはずだ。ところが、3日の所信表明演説では「分配」の文言がすっかり消えてしまった。
「令和版所得倍増」もいつの間にか「資産所得倍増」に看板を替えている。資産を倍増させられるのは投資にカネを回す余裕のある人だけだ。
政治評論家の本澤二郎氏がこう言う。
「安倍元首相が亡くなったのだから、岸田首相は気兼ねすることなくアベノミクスと決別し、異次元緩和から出口に向かえるはずです。本音では異次元緩和の弊害も理解しているはずです。しかし、アベノミクスを否定したら、党内の安倍シンパから猛烈な突き上げを食らう恐れが強い。岸田首相はそれだけは避けたいと考え、ただただアベノミクスと異次元緩和を継続させるしかないのでしょう」
景気に冷や水をかけることを恐れて、利上げに踏み出せないということもあるのだろうが、識者からは「金利を上げれば景気は良くなる」という指摘も上がりはじめている。
経営コンサルタントの大前研一氏は週刊ポストのコラムで〈金利を引き上げたらどうなるか? 貯蓄が増えるから、金融資産を持っている人たちの財布の紐が緩んで消費が拡大し、経済が活性化する〉と書いている。
今や日銀は戦前の日本と同じ
本来、日銀総裁が誰になるかは日本経済の運命を決める重大事だ。しかし、もはや誰が黒田後継になろうが、ほとんど状況は変わらないのではないか。
まず、有力候補として名前が挙がっているのは、黒田の“身内”のような人物ばかりである。有力視されている現副総裁の雨宮正佳氏と前副総裁の中曽宏・大和総研理事長の2人は、共に黒田体制で異次元緩和やマイナス金利などの立案に携わってきた人物だ。
それより何より、誰が次期総裁に就こうが、10年も異次元緩和を続けてきた日銀は、身動きが取れなくなっているのが実態である。異次元緩和をやめ、下手に利上げに動いたら、景気が一気に冷え込み、国債価格や株価が暴落する恐れがあるのもまた事実だ。
しかも、本来、日銀は独立した機関のはずなのに、この10年間で、すっかり政府の下請けになり下がっている。安倍に「日銀は政府の子会社」とさげすまされた時も、日銀内で異論を唱える人は誰もいなかった。
今や日本は、アメリカの顔色をうかがう政府と、その政府の言いなりになっている“形だけ”の中央銀行──という構図だ。もはや誰が総裁に就いても、できることはほとんどない。なのに、「ポスト黒田」の名前が飛び交うなんてアホらしい限りだ。
今の日銀は、戦前の日本と同じだ。異次元緩和を続けても、状況が好転する見込みはないと分かりながら、突き進んでいる。
「さすがに戦前の日本も、国力に大きな差があったアメリカとは長く戦争はやれないと分かっていました。短期決戦のつもりだった。でも、ずるずると戦いを続け、国土は廃虚となってしまった。黒田日銀の異次元緩和も当初、2年間の短期決戦の予定でした。ところが、成果が上がらないため、やめられなかった。もし、潔く失敗を認め、予定通り2年でやめていれば、傷も小さかったはずです。ここまできたら、もう日銀は異次元緩和をやめられないのでしょう」(斎藤満氏=前出)
いずれ日本は、間違った政策を10年間も続けたツケを払わされることになるに違いない。
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