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「日本沈没」に目を閉じる国民と、誤った方向に歩みを進める政府の行く末 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/312098
2022/09/30 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
いま世界実質GDPの日本のシェアは、1960年代の日本(写真)のシェアよりも低いのである(C)共同通信社
最近の国民の関心は、安倍晋三元首相の「国葬」をめぐる是非、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党との関係に集中していた。だが、日本が今、真剣に取り組まなければならないのは「日本の沈没」への対応である。
9月20日付のエコノミスト誌で、相場研究家の市岡繁男氏は「世界の実質GDPに対する日本のシェアは過去61年で最低」と題する驚くべきグラフを紹介した。
世界の実質GDPに対する日本のシェアは1960年に5.4%、91年に10.0%、2021年に5.1%であることを示した。東海道新幹線の開業が1964年、東名高速の開通が69年であることを考えれば、60年は日本の経済基盤がまだ全く整備されていない時である。
その時と比較して、2021年の世界の実質GDPに対する日本のシェアは低いのである。
驚くべき報道はそれだけにとどまらない。9月19日付の日経新聞は「円安で縮む日本 ドル建てGDP、30年ぶり4兆ドル割れ」の見出しでこう報じた。
<日本の今年の名目GDPは553兆円の見込み。1ドル140円で換算すると3.9兆ドルと1992年以来、30年ぶりに4兆ドル割れの可能性がある。ドルでみた経済規模はバブル経済崩壊直後に戻ったことを示す。その間世界のGDPは4倍になっており、15%を上回っていた日本のシェアは4%弱に縮む>
言えることは、1992年以降、日本は無為無策で来たということである。この深刻な状況からどうしたら脱することが出来るか、その課題はあまりにも重い。
逆に60〜70年代の日本がなぜ世界第2位の経済大国になったのかについて、かつて海外諸国はこう分析していた。
<日本は欧米のあるべき方向性を学び、経済界、官界、政界が一体となってその方向に邁進した>
<広範な教育水準が広がり、高度な労働力をつくり出した>
<軍事力を捨て、経済力の向上に特化した>
<中低層の経済水準を上げ、国内に旺盛な所得の需要をつくり出した>
これらの指摘と今の日本社会の姿を比べるとどう見えるか。真逆の社会になっていると言えるだろう。
例えば、@安全、低コストが嘘であることが明白になったにもかかわらず、原発回帰しようと間違った方向に進んでいる AGDPに占める公的教育への比率が先進国で最も低い Bむやみに軍事的緊張をあおり、高め、無用な軍事費を増大しようとしている──などだ。
悲しいことだが、今の日本政府には間違いを是正する動きは見られない。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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