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※紙面抜粋
※文字起こし
もう国民生活はもたないのではないか。かつてない「値上げの秋」が、10月1日からはじまったからだ。
帝国データバンクによると、国内の値上げラッシュは10月にピークを迎えるという。1カ月間に値上げされる食品は6699品目に上り、担当者も「バブル崩壊以降ではあまり見たことのない規模だ」と指摘しているほどだ。2022年に価格が上がる食品は2万品目を超え、家計の負担は、年に6万8760円も増えるという。
ただでさえ昨年から続く値上げで家計は疲弊しているのに、庶民はさらに追いつめられることになる。
しかも、10月から値上がりするのは食品だけではない。家電、タイヤ、たばこ、私鉄の特急料金……となにからなにまでだ。
ヤバイのは、地獄のような値上げラッシュは、まだまだ続く恐れが強いことだ。日経新聞が行った「社長100人アンケート」によると、原材料などのコスト増の価格転嫁は「不十分」が88.6%に上り、半年後までに「値上げする」「値上げを検討する」の合計は86.4%に達している。たしかに、8月の消費者物価指数も前年同月比2.8%上昇しているが、企業物価指数は9.0%も上昇していて、十分に価格転嫁できていないのが実態である。
経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。
「半年以上続いている物価高騰は、簡単には終わらないと思います。これまで経営者は、客離れを恐れてなかなか値上げに踏み切れなかったが“値上げ慣れ”しはじめているからです。他社も上げているので上げやすいという心理もあるでしょう。さらに、世界中で起きている穀物争奪戦は、来年以降、もっと激しくなる懸念がある。輸入物価を押し上げている円安にもブレーキがかかりそうにない。物価が落ち着く要素が見当たらないのです」
しかも、モノの値段は高騰しているのに、賃金の上昇はちっとも進んでいない。7月の実質賃金は、前年同月比1.3%の減少だった。実質賃金のマイナスは、これで4カ月連続である。年金も4月から減額されてしまった。
物価が上がっているのに、賃金がほとんど増えないのは、主要国でも日本くらいではないか。
「この先も労働者の賃金は上がらないでしょう。多くの経営者が『これから景気は悪化する』と身構えているからです。実際、“悪いインフレ”に見舞われている日本は、急速に景気が悪化する恐れがあります。株価も2万6000円を割り込んでしまった。景気の先行きが怪しいのに、賃上げする経営者は、ほとんどいないはずです」(荻原博子氏=前出)
これから年末、年始に向かって国民生活は「不況」と「物価高」でドンドン苦しくなっていくに違いない。
世界を揺るがす火種がゴロゴロ
どうにも不気味なのは、世界経済も変調を来しはじめていることだ。
米国株は年初来安値を更新。英ポンドは史上最安値をつけ、ユーロも20年ぶり、中国人民元は14年ぶり、韓国ウォンは13年ぶりの安値を記録。各国通貨が歴史的な安値水準となっている。
世界経済に異変をもたらせている最大の原因は、アメリカの中央銀行FRBによる急速な利上げだ。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「米国の一連の利上げは、1979年当時、FRB議長だったポール・ボルカーが主導した強烈な金融引き締め策に似ています。あの時は、第2次オイルショックによるインフレ退治のため、FRBは強烈な引き締めを実施。結果、その後、約3年にわたって世界中が大不況に陥ってしまった。今回も同じ道をたどる恐れがある。FRBは23年末まで、あと1年以上、引き締め策を続けると明言しているから、当面、明るい兆しは見えてこないでしょう」
深刻なのは、世界大不況の火種になりそうな国が、ゴロゴロしていることだ。
EU加盟国第3位の経済大国であるイタリアは国債が急落し、財政悪化の連想からギリシャなど南欧各国の金利も上昇。欧州経済を牽引してきたドイツまで、OECDによると23年の成長率はマイナス0.7%に沈むという。ドイツがマイナス成長となったら、欧州経済はどうなってしまうのか。
さらに世界銀行は、世界経済の現状は、南米各国で債務危機が生じ、アフリカ諸国が相次いでデフォルトに陥った1980年代初頭に似ていると警鐘を鳴らしている。
どう見ても世界経済の後退は、そう簡単には収まりそうにない。
「世界的な不況の根本原因は、国際社会で分断が進んだことにあります。冷戦終結によって、世界はグローバル化し、国境を超えてヒト、モノ、カネの移動が自由になり、国際的な分業体制ができた。ある意味、ビジネスがやりやすくなった。ところが、ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立の先鋭化によって、冷戦時代のブロック経済に逆戻りしてしまった。そう考えると、世界経済の変調は今後も続いていくでしょう」(斎藤満氏=前出)
世界不況が目前に迫っている時に無策の岸田首相が日本のカジ取りを担っているのだから最悪のタイミングである。
本気で「円安容認」なのか
日本は今すぐ「世界不況」と「国内の物価高」への対策を取らなければならないのに、肝心の岸田は全く動こうとしないのだから、どうしようもない。
新たな総合経済対策を掲げ「物価高への対応に全力で当たる」「日本経済の再生に最優先で取り組む」なんて豪語していたが、中身は住民税非課税世帯への5万円給付といった弥縫策ばかり。物価高を抑え込む抜本策もなければ、世界不況に立ち向かう知恵もない。そもそも、日本経済を破壊したアベノミクスをまだ続けようというのだから、本気で対策する気があるのか疑問だ。
円安是正どころか、岸田は円安頼みの“成長戦略”を打ち出すつもりだ。3日に召集される臨時国会の所信表明演説では、「円安のメリットを最大限引き出す」と強調。訪日客消費を年間5兆円超に増やす目標を掲げる。要するに、通貨安を売りに外貨を獲得しようとする途上国と発想は同じ。これでは輸入物価高を止められるわけがない。
9月に訪米した岸田は、ニューヨーク証券取引所で演説し、「確信を持って日本に投資をしてほしい」と呼びかけていたが、いったい誰が、株も通貨も下落している日本に投資するというのか。政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「岸田首相が掲げている『資産所得倍増』は、本人が会長を務めている宏池会の創設者・池田勇人首相が打ち出した『所得倍増』を意識したものでしょう。でも、この2つは正反対のものです。所得倍増は、日本国民全員を対象にしたものでした。全国民を豊かにしようとした。しかし、資産所得倍増の対象は富裕層です。カツカツの暮らしをしている貧困層は、投資する余裕資金などありませんからね。聞く耳などと称していますが、岸田首相の眼中に庶民がいないことは明らかです」
安倍元首相が生きていれば、亡国の経済政策アベノミクスの結末を見届けさせ、責任を取らせるべきところだが、もはやそれもかなわない。
いまだにアベノミクスを称賛し、対症療法でごまかす岸田政権のままでは、日本経済はクラッシュしてしまうだろう。一刻も早く、交代させないとダメだ。
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