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※紙面抜粋
※2022年9月24日 日刊ゲンダイ
※文字起こし
これまでの「口先介入」に効果はなく、「伝家の宝刀」を抜かざるを得なくなった。急激な円安に歯止めをかけるため、政府が24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。各国と調整しない日本の「単独介入」とみられる。
24年前、1998年に日本経済は、不良債権問題で日本長期信用銀行が破綻するなど金融危機に見舞われていた。当時も1ドル=140円超で推移していたが、たった半年程度で30円あまりも下落した今の円安進行はそれ以上だ。輸入物価の上昇でエネルギーや食品の価格が急騰し、庶民の暮らしを圧迫する現状は「金融危機」に匹敵する。
しかし、日本経済を滅茶苦茶にした元凶を取り除かない限り、円安の大きな流れは止まらない。介入規模は「兆単位」といわれるが、一時しのぎにもならず、それこそドブに捨てるような事態となりかねない。
元凶は言うまでもなく、日本銀行の黒田東彦総裁である。鈴木財務相は介入実施の理由について「足元の為替市場では投機的な動きも背景に、急速で一方的な動きがみられた。投機による過度な変動が繰り返されることは決して見過ごせることではない」と説明したが、その投機筋をあおっているのも黒田だ。
22日の金融政策決定会合後の会見で黒田は「当面金利を引き上げることはない」と語り、「当面」の補足として、わざわざ「数カ月だけじゃなく2、3年と考えてもらった方がいい」とまで踏み込んだ。為替市場で日米の金利差が意識される中、黒田が「当面拡大する」とお墨付きを与えたことで円売りが加速し、円相場は一時1ドル=146円台に肉薄。政府の許容範囲を超え、単独介入に乗り出さざるを得なくなったのである。
介入継続に米国が黙っているわけがない
円安の悪影響で8月の全国消費者物価指数は前年同月比2.8%増。消費増税の影響を除くと約31年ぶりの高い伸び率だった。エネルギーや生活必需品の値上げが激しく、家計は悲鳴を上げているのに、黒田は金融引き締めに動くそぶりすらみせない。
22日にはスイス国立銀行が15年から導入していたマイナス金利政策を解除。とうとう、世界の主要中央銀行のうちマイナス金利政策を続けるのは日銀だけとなった。海外の中銀が軒並み利上げを進めているのに、日銀が取り残されている限り、円が売られやすい状況は変わらない。いくら為替介入を繰り返しても、ムダに終わるだけだ。
円買い・ドル売り介入の規模にも限界がある。原資となる政府の外貨準備高は8月末時点で約190兆円分、すぐに支出できる「外貨預金」は20兆円分程度だ。一方、日本の外国為替市場の平均取引高は1営業日あたり約54兆円。原資の規模は心もとない。市場に底を突いたとみなされれば、かえって円が売り浴びせられる。海外投機筋は笑いながら手ぐすねだろう。
何より米国が急激な利上げでインフレ退治に必死な中、日本政府は単独介入を続けられるのか。資金確保のため、外貨準備高の大半を占める米国債の大量売却に踏み切れば、米国債の金利は上昇する。利上げ効果が相殺され、輸入物価を押し上げるドル安を招く。日本の単独介入の継続に、米国側が黙っているわけがないのだ。
八百長相場のバブルのツケが国民生活を直撃
そもそも、政府が円安に歯止めをかけようと実弾介入に踏み切りながら、日銀は円安を進める効果がある大規模な金融緩和を継続するなんて、支離滅裂。アクセルとブレーキを同時に踏むようなものだ。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「これ以上の円安を許さない政府に、大規模緩和にこだわる日銀の黒田総裁が歯向かっている構図です。せっかく為替介入しても日銀が効果を薄める矛盾だらけの状況はマーケットに足元を見られるだけです。大規模緩和が今の円安をもたらし、円安が今の物価高の要因の半数近くを占めています。政府は円安ストップに兆単位の資金を為替介入に突っ込み、物価高対策として10月中に補正予算を編成する方針。与党内は30兆円規模を求めていますが、日銀のマイナス金利策を止めた方が急激な円安は確実に収まるし、ノーコストで済む。国民の資産をムダに費やす黒田総裁の頑迷さは、罪深いと思います」
「物価の番人」とは名ばかりで、黒田が金融引き締めにテコでも動かない以上、今後も値上げ地獄が続く。すでに米連邦準備制度理事会(FRB)は3会合連続で政策金利を通常の3倍に当たる0.75%引き上げ、年3.00〜3.25とした。リーマン・ショック前の08年3月以来約14年半ぶりの3%台に達したが、FRBはまだまだ利上げを続ける見込みだ。
政策金利見通しの中央値は年末までに4.40%と上方修正。この水準を目指し、年内に計1.25%幅の追加利上げを実施する公算が大きい。日米の金利差が、ますます拡大すれば円安はさらに深刻化。年内に160円台が射程に入るとも指摘されており、円安主因の値上げ地獄はこれからが本番と覚悟した方がいい。
「出口」に向けた議論すら縛られている
岸田首相も情けない。円安・物価高の元凶である黒田に何ひとつ注文をつけられず、公金を使った為替介入で尻ぬぐいをさせられる始末。かつて円安は輸出企業の円換算時の利益をかさ上げし、日本企業にプラスといわれた。しかし、近年は生産の海外移転が進んだ結果、足元では資材や部品の輸入コストが膨らみ、経済へのデメリットの方が拡大している。
円安の恩恵を受ける代表格とされてきたトヨタ自動車の豊田章男社長は22日の会見で「円安が収益に与えるメリットは以前に比べて大変減少している」と指摘。トヨタは対ドルで1円円安になると、年間の営業利益が450億円押し上げられるが、足元では原材料やエネルギー価格の高騰により、通期では1兆7000億円押し下げられるという。
原材料などを輸入に頼る内需型企業や中小企業の経営リスクは言うに及ばず。黒田日銀の円安政策は百害あって一利なしだ。アベノミクスの「3本の矢」のひとつに位置付けられた「異次元緩和」が13年に始まって以降、日本の自動車の輸出台数は約2割減り、円安やゼロ金利がないとやっていけないようなゾンビ企業を増やしただけだ。
賃金も上がらず、家計の購買力や日本の潜在成長率を損ねているのが現状なのに、誰も異次元緩和を止めようとしない。その背景には利上げすれば新規発行国債の利払い負担が一気に重くなるという懸念がある。
「日本政府は米国の意向に従って今後防衛費を倍増し、当面の財源を『つなぎ国債』で賄う方針です。その利払い負担増のため、利上げに躊躇するなら、どこを向いて政治をしているのでしょうか」(斎藤満氏=前出)
円安に苦しむ国民から顔をそむけ、米国の機嫌をうかがってガンジガラメ。経済を滅茶苦茶にしたアベノミクスの「出口」に向けた議論すら縛られている状況だ。
「異次元緩和を始めたら、引くに引けない状況に陥ることは13年の開始当初から多くの専門家が指摘していました。結局、緩和の恩恵を受けたのは日銀のETF“爆買い”で株価を支える八百長相場により、資金を増やした富裕層のみ。金持ちだけの刹那のバブルのツケが今、国民生活を直撃しているのです。アベノミクスを続けて国民の暮らしをグチャグチャにしただけでも、安倍元首相は国葬に値しません。改めて国葬に怨嗟の声が渦巻く中、岸田政権が強行した後、社会にいかなる混乱が起こるのか、不安になります」(政治評論家・本澤二郎氏)
物価急騰への無策と安倍国葬の影響などで支持率急落の岸田はどう落とし前をつけるのか。
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