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※紙面抜粋
※2022年9月1日 日刊ゲンダイ2面
【927 岸田政権がご臨終】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) September 1, 2022
国葬反対 全国規模で凄まじいうねり
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/2dcnzDGpDq
※文字起こし
NHKの生中継を見ていた国民の多くは、一体何のための首相会見だったのか、さっぱり分からなかったのではないか。
新型コロナウイルスの感染療養期間を終え、8月31日から対面での職務に復帰した岸田首相。午前11時から首相官邸で開いた会見で、岸田は「政治に対する国民の信頼が揺らいでいると深刻に受け止めている。私が先頭に立ち、政治への信頼回復に取り組まなくてはならない」などと強調。
旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党議員の関係について、「自民党総裁として率直におわび申し上げる」として陳謝するとともに、すべての党所属国会議員と教団との関係について調査し、その結果を党として取りまとめ、公表するよう茂木幹事長に指示したことを明らかにした。
さらに岸田は、9月27日に予定されている安倍元首相の国葬について言及。閣議決定で国葬を決めた理由について、安倍の首相在任期間が憲政史上最長の8年8カ月に及んだことや、東日本大震災からの復興──といった従前の説明をあらためて繰り返し、「国民に弔意を強制するものではないが、さまざまなご意見、説明が不十分とのご批判をいただいている」「国葬を判断した首相として、批判、意見を真摯に受け止め、正面からお答えする責任がある」とし、さらに「閉会中審査の場に私自身が出席し、テレビ(中継)入りで質疑にお答えする機会をいただきたい」「丁寧な説明に全力を尽くす」と訴えた。
「俺が国会に出ていくから文句言うな」と言わんばかりのドヤ顔会見だったが、記者から「(国葬を)見直す考えは」「説明と(閣議決定の)順序が逆ではないか」などと質問されると、途端にしどろもどろになり、「説明が不十分とのご批判をいただいている」などと意味不明な答弁に終始し、てんで答えになっていなかった。
説明が「不十分」なのではなく「支離滅裂」
大体、「批判、意見を真摯に受け止め丁寧に説明」というのであれば、まずは世論調査で国民の多くが反対している安倍の国葬そのものをいったん白紙に戻すべきだろう。
そして閉会中審査ではなく、野党の求めに応じて一刻も早く臨時国会を開き、あらためて国葬自体について与野党間で協議を重ね、今後のことも考えて法的根拠をしっかり固めるのが筋だ。
そうすれば国葬の費用についても、「できるだけ早く示すよう努力する」なんて曖昧な答弁にならないはず。
とにかく、何が何でも国葬をやることだけ勝手に決めて、終わってみなければカネがいくらかかるか分からないという「どんぶり勘定」では財政民主主義もあったものではない。
そもそも、岸田は何やら勘違いしているが、国葬に反対している国民は「説明が不十分」と考えているのではない。説明そのものが支離滅裂のために「納得していない」のだ。それなのに、岸田は「閉会中審査で説明すればOK」かのような安易な姿勢だからますます、許せない。
明大教授の井田正道氏(計量政治学)がこう言う。
「岸田首相は党内の保守派に配慮して国葬を即断し、世論も支持してくれると思っていたがそうならなかった。今さら引くに引けず、白紙に戻すことも難しい上、論理的に説明するのも難しいと言わざるを得ません」
政権維持と延命のために国葬を決めた岸田
国会から逃げ回った挙げ句、コロナ罹患という今や国民も呆れ顔の首相が記者会見で国葬への理解を求めたところで邪な動機は見透かされている。
旧統一教会と自民党国会議員のズブズブな関係が明らかになり、内閣改造でゴマカシを画策したものの、その後も次々と新たな接点が露呈。政権支持率はどんどん下落しているため、いよいよ、ここで「何かやっているふり」をしなければと思い立ったのだろう。
そこで「国葬について閉会中審査で説明する」「旧統一教会との関係を断ちます」と訴えたのだろうが、しょせんは思い付きだからつじつまが合わないことばかり。会見でも質問が出ていたが、岸田が本気で自民党と旧統一教会の関係を見直すのであれば、国政選挙で教会票を差配していたとされる安倍の関わりを調査しなければ何も始まらないだろう。
安倍はいつから、どのように教会との関係を深めてきたのか。選挙の際の教会窓口は誰で、どう動いていたのか。関係を断つのであれば知るべきことは山ほどある。それなのに岸田は、安倍と教会の関係について、「十分な把握は限界がある」と知らんぷりだ。
首相として、自民党総裁として、会見で旧統一教会は関係を断つべき問題ある団体──と認めながら、その団体と最も近しい関係にあった安倍の国葬を強行するという矛盾。誰がどう考えてもワケが分からないだろう。
多額の税金をつぎ込む「なんちゃって国葬」
現時点で約2.5億円もの巨費を投じて国葬することを決めながら、「国民に弔意を強制するものではない」という説明もむちゃくちゃだ。
岸田政権はすでに各省庁に弔旗掲揚や黙祷を求める閣議了解を見送ったが、それならなぜ、多額の税金をつぎ込む必要があるのか。まるで「なんちゃって国葬」だ。ここまでデタラメだと「つじつま合わせ」どころの話ではない。全国各地で国葬に対して違憲訴訟や監査請求が相次いでいるのも当然ではないか。
「安倍政治を美化するな」「反対世論の声を聞け」「国葬絶対反対」……。31日夕方、国会正門前で行われた市民団体主催の国葬反対デモ。身勝手な政治の私物化と民主主義の冒涜に対して参加者は怒りのシュプレヒコールを上げていたが、今やこうした国葬反対の集会やデモは全国規模で広がり、凄まじいうねりとなっている。
マトモな感覚を持った政治家であれば、さすがに国葬の強行は思いとどまるに違いない。だが、そんな国民感情が少しも分からず、理解できない、しようとさえしないのが岸田なのだ。
国葬の実施と予算支出の差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした市民団体「岸田政権による安倍元首相の国葬強行を許さない実行委員会」の藤田高景代表がこう言う。
「岸田首相が独断専行で国葬を決めた目的は政権維持と延命のためであり、法的にも政治的にもまったく間違っています。憲法の精神を踏みにじり、何ら法的根拠もない。国民をあまりにもバカにしていますよ。私たちの活動に賛同する国民も増えていて、裁判の原告への参加を希望する手紙が北海道などから続々と届いています。1日にも第2次提訴に踏み切る予定です」
岸田政権にとって、これからは「黄金の3年間」ではなく、「地獄の3年間」。ご臨終になる日も近い。
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