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欺瞞に満ちた参院選 危機が去るのを待つだけ「3代目政治家」岸田首相の無策 金子勝の「天下の逆襲」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/310206
2022/08/24 日刊ゲンダイ
一切何もしていないまま状況が過ぎ去るのを待つだけ(家族でゴルフを楽しむ岸田首相)/(C)共同通信社
「選挙でだまされていたのではないか」──。各種世論調査で、自民党と旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の根深い関係について「説明不足」という声や、安倍元首相の国葬に「反対」の意見が増えている背景は、そこにあるのではないか。
先の参院選で国民の「きちんとした選択をできなかった」「自民党にだまされた」という感覚は根強い。選挙戦では、野党が政府の物価高対策の無策を追及し、岸田首相は追い詰められていた。そこに、安倍の銃撃事件が発生。岸田は「民主主義への挑戦だ」と絶叫して、物価高対策を吹っ飛ばし、争点そらしに成功したのだ。
ところが、選挙後に自民党と旧統一教会の蜜月関係が次々と発覚した。これがもし、投開票日の前に分かっていれば国民の選択は全く違うものになっていただろう。
そこで、国民の不満を払拭するため、岸田は内閣改造を断行したが、結局、政務三役30人が旧統一教会と関係があることが露呈。かえって自民党と旧統一教会の根深い関係を明らかにした。臨時国会を3日間でさっさと終えてしまったので、岸田お得意の「丁寧な説明」の責任を果たすべきだが、政府は「個人の政治活動に関するもので、調査を行う必要はない」とする答弁書を閣議決定。これで国葬などやられてはたまったものではない。
問題は岸田の政治姿勢そのものにある。ご自慢の「聞く力」は党内調整にしか発揮されず、肝心の政策の実行力や決断力がない。ただひたすら、ひどい状況が過ぎ去るのを待つだけなのだ。
新型コロナについては、死者が7月からの1カ月半で5000人を超えているが、一切何もしていない。政策は、感染者の全数把握をやめることだけだ。知らぬが仏だ。
止まらない物価高も放置している。足元で電気やガスといった公共料金が上昇し、9、10月には食品を含む多くの品目で値上げが続く。
輸入物価高の原因である円安も止まらない。米連邦準備制度理事会(FRB)は、9、11、12月に開く同連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決定する可能性があり、日米金利差は年内に4%近くに拡大することが予想される。さらに、7月まで12カ月連続で貿易赤字だ。為替の実需を考えれば、円を売ってドルを買う動きが進み、円安に拍車がかかるのは必至である。
再び危機的な状況が迫っているにもかかわらず、岸田が対策を打つ様子はない。安倍とは違う意味で3代目政治家の無能さを見せつけられている。日本は身上をつぶす危険性が高い。
金子勝 立教大学大学院特任教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現職。慶応義塾大学名誉教授。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。近著「平成経済 衰退の本質」など著書多数。新聞、雑誌、ネットメディアにも多数寄稿している。
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