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※紙面抜粋
※2022年8月19日 日刊ゲンダイ2面
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調べられるわけがない 統一教会「国家ぐるみの癒着」だった衝撃
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/310038
2022/08/19 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
説明できない、する気ない(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
局面打開を狙った内閣改造は大失敗だ。「脱・統一教会(現・世界平和統一家庭連合)」になるのかと思いきや、連日のように関係を明らかにする閣僚らがゾロゾロ出てくる。既に大臣は8人、副大臣・政務官は20人以上が教団や関連団体のイベントに出席するなどしていた。
中でも醜悪なのは萩生田政調会長だ。7月の参院選で当選した生稲晃子議員とともに、地元である東京・八王子の教団施設に行ったことを週刊新潮にスクープされると、取材から逃げまくり。18日観念して、ぶら下がりに応じたが、「支援者が会員の団体(世界平和女性連合)と統一教会は名称が非常に似ているという思いはあったが、あえて触れなかった」などと、子どもだましの釈明に終始した。
今後についても「一線を画していきたい」「適切な対応をしていきたい」と曖昧で、明確な決別宣言はナシ。これでは、自民党の“統一教会汚染”に対する世論の疑念はますます深まるばかりなのだが、岸田首相は統一教会問題を個人の責任に矮小化して、自身は伊豆の温泉旅館でのんきに夏休みだ。党として徹底調査すると言えないのは、あまりのズブズブで対応できないからか。
政治が歪められたのか
ジャーナリストの有田芳生氏が日刊ゲンダイのインタビューで、「オウムの次は統一教会を摘発する予定だ」と聞かされてから10年後の2005年、摘発がなかった背景として「政治の力ですよ」と言われたと話していた。自民党政権と教団との間に横たわる闇の深さを思い知らされるが、最近も「政治の力」が働いたと疑われる新たな事実が明らかになった。公安調査庁の「特異集団」に対する監視実態のことである。
公安調査庁が国内外の治安情勢をまとめ、毎年1月に発行する「内外情勢の回顧と展望」という報告書。その05年版と06年版で「特異集団」と記載された団体の具体名について、立憲民主党の辻元清美参院議員が質問主意書でただしたところ、「統一教会」だとの答弁書を政府が閣議決定したのである。
報告書で「特異集団」は、「危機感や不安感をあおって勢力拡大を図り、不法事案を引き起こすことも懸念される」と指摘され、注意喚起が図られていたが、見過ごせないのは、なぜか07年版では「特異集団」に関する記述がすっぽり消えてしまったことだ。
理由について政府は、「その時々の公安情勢などに応じて取り上げる必要性が高いと公安調査庁が判断したものを掲載している」と回答し、明確な説明を避けた。裏を返せば「取り上げる必要性がなくなった」から記述が消えたと取れる。07年は第1次安倍政権だ。これは偶然の符合なのか。
辻元は質問主意書で「政府が旧統一教会への監視をなくしたり、国民に警鐘を鳴らす活動を弱めていたとすれば、こうした被害を広げたことに一定の責任が生ずると考える」と訴えていた。まさに、その通りで、全国霊感商法対策弁護士連絡会によれば、統一教会に関する被害額は直近の5年間(17〜21年)だけでも約55億円に上るという。政府が教団を“放置”した結果である。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)がこう言う。
「オウムの次は統一教会を摘発する予定だったのですから、統一教会は公安にとって最重要の監視対象だったはずです。それが徐々に対象から外されていき、世間から隠されていったのはなぜなのか。きちんと検証されなければなりません。自民党と統一教会の癒着という問題は、単に政治家が広告塔になっていたということでは済まされない。反社会的な詐欺集団の犯罪行為を、結果的に政治が手助けしたのではないのか。統一教会が国政に関与し、自民党が便宜供与することによって、政治を歪めたのではないのか。いずれも重大な疑惑であり、解明が必要です」
戦後保守政治の正当性が問われている
公安調査庁については、統一教会問題を徹底取材している「しんぶん赤旗」に興味深い記事があった。8月16日と17日付の連載。登場するのは元公安調査庁の職員だ。出先機関で統一教会関連を担当していた十数年前、統一教会の政治団体である「国際勝共連合」の地方幹部と月1回ペースで会い、情報交換をしていたという。
どんな話をしていたのか、どんな利用価値があったのか、という問いに、元職員はこう答えた。
「相手は地元の共産党の動向を話していました」
「公安調査庁にとって『反共』という点で統一教会は友好団体みたいなものなのですよ」
その幹部は、公安調査庁の部屋に勝手に入室してくるほどズブズブの関係だったといい、その理由について先輩職員はこう言ったという。
「あの人たちは共産主義とたたかっている立派な人たちで、ウチにもよく協力してくれているんだ!」
政府の諜報機関とカルト教団が蜜月だったとは、衝撃である。
2006年に公開された米国務省の文書によれば、結党間もない1950年代後半からCIA(米中央情報局)の資金で育てられたのが自民党だ。そして、CIAとKCIA(韓国中央情報部)が後ろ盾となって拡大したのが、統一教会と国際勝共連合。日本では、CIAと良好な関係にあった安倍元首相の祖父・岸信介元首相が両団体との結びつきを強め、自民党内にその勢力を広げていった。
インテリジェンスが専門の国際ジャーナリスト・春名幹男氏はこう言う。
「冷戦時代、CIAは日本を『反共の砦』にしたいと思っていました。だから、1955年の保守合同で自民党が誕生すると、米国は非常に喜んだ。反共の砦として日本の保守勢力を育てていく過程で、CIAは勝共連合を利用したのです。米政府の文書はまだ公開されていませんが、CIAが勝共連合にかなりの便宜を図ったことは間違いない。問題は、冷戦終結後の1990年代以降です。共産主義の脅威が低下し、自民党は統一教会との関係を清算するチャンスがあったのにしなかった。選挙運動をボランティアでやってくれるという“腐れ縁”を維持したことで、教団は宗教法人法の甘い規制により、日本を献金集めの基地にし続けた。2015年の教団の名称変更も認めてはいけなかった。結局、関係を清算しないまま、ここまで来てしまったのです」
国会を召集し、説明責任を果たせ
統一教会汚染がバレた政治家たちはみな、「知らなかった」「これから付き合わない」で済まそうとしている。だが、公安調査庁と蜜月だったこと、捜査がストップしたこと、文化庁が教団の名称変更を認証したことなどから考えれば、とどのつまり、統一教会と自民党の癒着とは「国ぐるみの癒着」だったのではないのか。一連の経緯が解明、説明されなければ、到底、国民は納得できない。
前出の五十嵐仁氏が言う。
「野党が18日、統一教会問題などの質疑を求めて、憲法53条に基づく臨時国会召集の要求書を衆参議長に提出しました。国会を開いて問題を明らかにするのは当然です。野党に請求されるまでもなく、岸田政権はさまざまな疑惑を払拭するためにも、自ら積極的に国会を召集して説明責任を果たすべきです。岸田首相は悠長に夏休みを取って、疑惑から逃げている場合じゃありません。日本の政治が戦後、勝共連合や統一教会によって背後から動かされてきた疑いが出ているのです。岸田首相は、戦後保守政治の正当性が問われているという自覚が足りないんじゃないですか」
法務省で18日、警察庁や消費者庁も参加して、統一教会に関する関係省庁連絡会議の初会合が開かれた。葉梨法相は、「今後、関係省庁が連携して体制を整備したうえ、(霊感商法の被害などについて)9月初旬から相談対応のための集中強化期間を設ける」と言っていた。どうにも本気度が感じられない。お茶を濁して、国民が忘れるのを待つ戦略は許されない。
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