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※紙面抜粋
※2022年8月13日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
狙った政権浮揚効果は皆無、むしろ墓穴を掘っただけではないか。
第2次岸田改造内閣が10日に発足したことを受け、各社が実施した世論調査で内閣支持率はほとんど上がらなかった。それどころか下落したケースもあり、姑息な内閣改造・党役員人事は裏目に出た形だ。
共同通信が10、11日に実施した全国緊急電話世論調査によると、岸田内閣の支持率は54.1%で、昨年10月の内閣発足以来最低となった前回調査(7月30、31日実施)の51.0%から3.1ポイントの微増にとどまった。不支持率は28.2%だった。
日経新聞と読売新聞の調査では、支持率が前回から下落している。日経の緊急世論調査(10、11日実施)では、支持率は7月の前回調査から1ポイント減の57%、不支持率は3ポイント上昇の35%で政権発足以来、最も高くなった。新しい閣僚と党執行部の顔ぶれを「評価しない」との回答は44%で、「評価する」の30%を大きく上回った。
読売の緊急調査でも、支持率は改造直前の前回調査(5〜7日実施)から6ポイントも下落の51%となり過去最低。不支持率は34%で過去最高となった。
安倍元首相が殺害されたことを契機に、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党国会議員との“癒着”が明らかになり、さらには国葬に対する国民の批判もあって支持率が下落傾向にあった中、改造人事を経て、わずか1週間で支持率をさらに下げてしまったのだから踏んだり蹴ったりだ。
夏休みで国民は忘れるとナメている
「普通は改造直後の内閣支持率は期待感から上昇する。そのための内閣改造でもあるのです。岸田首相が9月に予定されていた内閣改造を電撃的に1カ月も早めたのも、統一教会の問題で追い込まれ、目先を変えて局面打開するためだった。それなのに支持率が下落したのでは目も当てられない。もっとも、それも当然で、組閣人事を見るだけで自民党が統一教会との関係をスッパリ断ち切れないことが分かります。統一教会との関係を認めた閣僚を交代させたところで、早くも新たに任命した閣僚の7人が教団との関係を認めているのですから、話になりません。ダンマリを決め込んでいた人も役職に就いた途端に関係を認め、『知らなかった』『今後は見直す』で逃げようとしている。今だけしのげば、お盆休みで国民はすぐ忘れるとでも思っているのでしょうか。あまりにバカにしています」(政治評論家・本澤二郎氏)
統一教会との関わりについて、共同通信の調査では、自民党や党所属議員の「説明が不足している」との回答が89.5%に上った。「十分に説明している」はたったの6.9%だ。約9割がしっかり説明して欲しいと考え、自民党の対応は不十分だと感じている。同じ調査で、政治家が統一教会や関連団体との関係を「絶つべきだと思う」の回答は84.7%だった。
政治家と統一教会の癒着に注がれる国民の目は厳しい。中高年層はかつて社会問題になった霊感商法や合同結婚式の印象が鮮明に残っているという事情もあるし、何より安倍を筆頭に「保守」を標榜する政治家が、罪深い日本人は資産と女性を韓国に差し出すのが当然だと説く“反日宗教”とズブズブだったという事実に、これまで自民党を保守政党と信じてきた支持者こそ裏切られた思いが強いはずなのだ。
邪な内閣改造でウヤムヤにできるほど甘くはない。「統一教会との関係を各人が点検し、見直す」という小手先のゴマカシは利かなかったということだ。
他国のカルトに国家中枢を乗っ取られる恐怖と恥
12日行われた副大臣・政務官人事でも、次々と新任者と統一教会との関係が明らかになっている。
もはや自民党内で関係がない人を探す方が難しいのではないか。統一教会と無関係な人だけでは組閣もできないほど浸透しているということだろう。
松野官房長官は「今後の関係を見直すことを求め、了承した人のみを任命した」と強調していたが、「見直す」というのは具体的にどういうことなのか、ハッキリして欲しいものだ。なぜ「断ち切る」と言えないのか。要職に起用されなければ関係を続けても構わないということか。
「ここでスッパリ関係を切ることができたなら、国民は岸田政権を熱烈に支持したでしょう。関係を断ち切るなら、このタイミングしかない。議員個人の問題に狭小化せず、党としてしっかり調査して、身ぎれいな人だけで組閣すべきだったのではないですか。しかし、結局は派閥均衡型の内閣改造で中途半端に終わってしまった。新閣僚にも統一教会との関係が続出し、これでは急いで内閣改造しない方がマシだったくらいです。かえって、今後まったく上がり目がない厳しい局面に追い込まれてしまった。夏休みでいったん統一教会の問題は小休止としても、9月に行われる安倍元首相の国葬で再燃するのは確実です。国葬自体にも反対の声が多いし、その直後には秋の臨時国会も始まる。それも乗り切れるとタカをくくっているのでしょうか。国民世論に対して、政界は鈍感すぎるように思います」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)
安倍は“モリ・カケ・桜”など、疑惑が持ち上がるたびに急場しのぎでゴマカし、嘘をつき通すことで逃げ切った。それを多くの自民党議員が覚えている。刷り込まれていると言った方が適切かもしれない。問題が持ち上がっても、その場さえ取り繕えば何とかなると。だが、希代のデマゴーグはもういないのだ。同じ対応をしていたら足をすくわれかねない。
統一教会はこのタイミングで関係を誇示
12日、統一教会は教団本部がある韓国・ソウルで、関連団体「天宙平和連合(UPF)」との大規模イベントを開催。創始者である文鮮明氏の死後10年に合わせて開かれたものだが、まるで安倍の追悼集会のようだった。巨大スクリーンに安倍の写真が映し出され、「統一と平和のための運動にご尽力された」と、献花の時間が設けられた。米国のトランプ前大統領も「安倍氏の死は世界にとって大きな損失だ」などと哀悼メッセージを寄せた。
いま日本国民から厳しい視線を向けられている教団が、安倍との親密な関係を隠すのではなく、誇示したわけだ。これが何を意味するのか。
「統一教会は自民党の深くにまで浸透し、弱みを握っている。『もし我々を切り捨てようとすればすべてバラすぞ』という脅しの意味もあるのでしょう。しかし、他国のカルト教団に国家中枢が乗っ取られているなんて、こんな恐ろしく恥ずべきことはありません。岸田政権が何を恐れているのか知りませんが、今こそ堂々と統一教会の問題に向き合い、関係を断ち切って欲しいと多くの国民が願っています。自民党議員の証言などによって、安倍元首相が統一教会票を差配していたことも分かってきたのに、癒着の“元締”を国葬で送るなんて正気なのでしょうか。岸田首相が本気で統一教会との関係を断ち切るつもりなら、教団の最大の広告塔であった安倍氏の国葬を取りやめなければおかしい。今回、統一教会がこんな盛大に追悼してくれたのですから、親密な関係にあった安倍元首相もそれで本望なのではないですか」(本澤二郎氏=前出)
統一教会の問題と相まって、国葬は岸田政権の命取りになりかねない。「黄金の3年間」なんて紙上談兵。強行すれば年内にも解散総選挙に追い込まれる可能性がある。その時こそ、有権者は統一教会と関係がある議員を落選させ、日本人のための政治を取り戻す必要がある。
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