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悪魔の正体むき出しの財務省
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2022年8月 1日 植草一秀の『知られざる真実』
安倍晋三元首相が死去し、アベノミクスを総括する必要が生じている。
アベノミクスは、1.金融緩和、2.財政出動、3.成長戦略、の三つを柱に据えた。
金融緩和は量的金融緩和を拡張し、インフレ率を2%に引き上げることを公約化した。
私は2013年7月に
『アベノリスク』(講談社)
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を上梓し、インフレ誘導に失敗するとの見通しを書いた。
短期金融市場に資金を供給しても金融機関の与信活動が活発化しなければマネーストックは増大せず、インフレ率上昇は実現しないと予測した。
現実はその通りになった。
同時にインフレ誘導政策自体が間違った政策目標であることも明記した。
インフレ誘導の目的は実質賃金の引き下げにある。
実質賃金引き下げは企業の利益になるが労働者の不利益になる。
労働者の不利益を目指す施策は正しくないと指摘した。
不幸中の幸いでアベノミクスは失敗し、インフレは実現しなかった。
それにもかかわらず、労働者の賃金は減少し続けた。
経済政策運営に失敗し、日本経済がまったく成長できないなかで、労働分配がさらに圧縮されたからだ。
財政出動が行われたのは2013年度だけ。
2014年度には消費税増税が強行された。
消費税率は2019年10月に再度引上げられ、税率が5%から10%へと2倍に引上げられた。
これをアベコベノミクスという。
マクロ経済政策の主柱は財政・金融政策でアベノミクスに目新しさなど存在しなかった。
しかも、財政政策も金融政策も方向性が根本的に間違っていた。
だが、アベノミクス失敗の核心は財政金融政策ではない。
三番目の柱である「成長戦略」にある。
「成長」の言葉は良い響きを持つが、「誰の何の成長」を目指すのかで意味が激変する。
アベノミクス成長戦略とは「大企業利益の成長戦略」だった。
言い換えれば「労働者不利益の成長戦略」だったのだ。
アベノミクス成長戦略の柱が五つある。
1.農業自由化、2.労働規制撤廃、3.医療自由化、4.法人税減税、5.特区・民営化
だ。
これらのすべての目的はただひとつ。
グローバル巨大資本の利益極大化だ。
TPPは自由貿易促進のキャッチフレーズの下に、日本の一次産業を破壊し、食の安全と安心を破壊するもの。
日本の一次産業が崩壊の危機に直面している。
労働規制撤廃は企業の労働コストを最小化させるための施策。
「働き方改革」の内実は「働かせ方改悪」でしかない。
労働者の処遇は悪化の一途をたどり、低賃金で不安定な雇用が日本全体を覆い尽くしている。
医療の自由化は医療分野に貧富の格差を持ち込むもの。
公的保険でカバーされる範囲が圧縮されている。
自己負担が増大し、公的保険外医療の範囲が拡張されている。
圧迫されている公的保険医療の最後の砦が高額療養費制度。
高額医療を受けなければならない個人の自己負担額に上限を設定するもの。
財務省がここに手を付ける構えを示し始めた。
私が警告し続けてきた最悪の施策が公然と提唱され始めたのだ。
これを許すなら日本の公的保険医療制度は崩壊する。
絶対に制度改悪を認めてはならない。
さらに、法人税減税、特区・民営化の名の下での巨大資本への利益供与政策が遂行されてきた。
岸田文雄氏は昨年の自民党総裁選で、これまでの新自由主義経済政策を見直し、「分配」に焦点を当てた政策を推進すると述べたが、完全に撤回した。
挙げ句の果てに「資産所得倍増プラン」を打ち出した。
安倍・菅路線を完全に継承する姿勢を鮮明にしている。
このなかでの高額療養費制度見直しの提案だ。
コロナでの財政支出拡大を口実に大型増税が提案される可能性も高い。
岸田経済政策の誤りを徹底糾弾するべき時期が到来した。
『日本経済の黒い霧
ウクライナ戦乱と資源価格インフレ
修羅場を迎える国際金融市場』
(ビジネス社、1870円(消費税込み))
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