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赤木雅子さん「疑惑のままの国葬はご本人も望んでいない」佐川宣寿氏は一度も姿見せず結審 森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/308935
2022/07/28 日刊ゲンダイ
「国家権力の壁と戦った裁判だった」と弁護士(撮影)相澤冬樹
「菅さん、聞いてください!」
法廷に響いた赤木雅子さんの声。被告の佐川宣寿・元財務省理財局長の代理人、菅弘一弁護士にあてた言葉だ。雅子さんは夫、俊夫さんが亡くなった時の状況を話していた。被告席で雅子さんを見ようともせずパソコンを打っている姿に思わず声が出た。菅弁護士も驚いたと思うが、実は傍聴席でうとうとしていた私が一番虚を突かれた。
財務省の公文書改ざんをめぐり、死に追い込まれた赤木俊夫さん。その妻、雅子さんが真実を知りたいと起こした裁判で、27日に雅子さん自身が法廷で発言する本人尋問が行われた。冒頭の発言は、弁護士の質問に答えて夫とのなれそめから死に至る状況を語っている中で飛び出した。
だが真骨頂はここからだ。最後に思いを語るよう弁護士に促された雅子さんは、まず、法廷に一度も姿を見せなかった佐川氏の態度に疑問を呈した。
「一度くらいここに来て改ざんの経緯を話してほしかったし、夫にお線香の一本でもあげてもらいたいと今でも思っています」
改ざん事件は、安倍元首相が国会で「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」と発言したことが関係していると財務省幹部も認めている。
それについて雅子さんは、「もともと国会の中で発言されたことが原因で夫は改ざんをしなければならなくなりました。黒い疑惑のまま国葬にされることはご本人も望んでいないと思います。残されている昭恵さんが知っていることを話すことが、とても大事なことです」。
安倍氏の発言の5日後、当時の菅官房長官が佐川氏らを呼んで会議を開いたことがわかっている。雅子さんはそこも指摘した。
「その時に何を話をされたのか、公に明らかにするべきだと思います」
そして最後に力強く、「安倍さん、昭恵さん、佐川さん、そして裁判長。私は真実が知りたいです。今からでも佐川さんの尋問を行ってください」。
閉廷後、傍聴席から拍手
しかし訴えはスルーされた。裁判長は審理を終えると宣言し、佐川氏は法廷に姿を見せないまま、判決は11月25日に言い渡されることになった。苦い思いを噛みしめながら法廷を後にしようとした雅子さん。その時、傍聴席から拍手が湧いた。一人、また一人と10人近くが拍手を送り、雅子さんも笑顔で手を振り感謝を伝えた。
「あれはとてもうれしかったです」
わかってくれる人はいる。裁判の行方がどうなろうと、真実が知りたいという雅子さんの思いは変わらない。
相澤冬樹 ジャーナリスト・元NHK記者
1962年宮崎県生まれ。東京大学法学部卒業。1987年NHKに記者職で入局。東京社会部、大阪府警キャップ・ニュースデスクなどを歴任。著書『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)がベストセラーとなった。
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