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電通に頼り切りだったJOC…特捜が動く五輪組織委元理事の収賄疑惑の背景 東京五輪にメス!スポーツマフィアを生んだJOCの過ち
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/308864
2022/07/28 日刊ゲンダイ
渦中の高橋治之氏(C)ロイター
東京五輪・パラリンピック大会組織委が6月30日に解散した日、橋本聖子組織委会長が「誰も経験したことのない(コロナ禍での)大会を乗り越えた『人』がレガシー(遺産)」と胸を張ったが、組織委の理事を務めた高橋治之氏もレガシーなのだろうか?
在任中に、自身が代表取締役を務めるコンサルティング会社が東京五輪スポンサーの紳士服大手「AOKIホールディングス」(AOKI)とコンサル契約を結び、AOKI側から4500万円超を受領、それが高橋氏への資金提供だった疑いがあると東京地検特捜部が捜査している。
コロナ禍での五輪に反対する人々がいる中で開催された東京2020は、選手たちの全力を尽くす姿が感動を呼び、それまでにかなり傷ついたオリンピックのイメージを挽回したはずだった。高橋氏への疑惑によってその名誉は再び危機に瀕している。
そもそも高橋氏が組織委の理事になぜ名を連ねたのか? それは彼が電通OB(元専務)であることに大きく関係している。組織委事務局は政府、都、スポンサー企業などからの出向で成り立っている。五輪運営の専門知識はもちろん、資金繰りもイベント運営も、広報も、企画も、メディア対策も一から始めなければならない。
日本におけるオリンピック運動の専門家集団であるべき日本オリンピック委員会(JOC)が主導権を握っていければいいが、残念ながらJOCはその実力を失っていた。かような状況で体面を保ちつつ、屋台骨を支えるとなれば電通に頼るしかない。
電通を利用していたはずが…
JOCと電通の関係史もここにつながる。電通がスポーツ界に積極的に関わり始めたのは、1980年のモスクワ五輪。選手の肖像権利用で得た協賛金を選手強化に資するという「がんばれ!ニッポン!キャンペーン」だった。資金不足のアマチュアスポーツ界にとって、この強化キャンペーンはありがたいものであり、電通以外の広告代理店は手を出せない分野となる。
しかし、モスクワ五輪は政府の意向を受け、日本は不参加。このボイコットの棘を抜くべく、JOCは日本体育協会(現日本スポーツ協会)からの独立を目指し、堤義明氏(西武鉄道グループ元オーナー)の政治力を借り、スポーツ自身の力で経済的基盤を確立し、それによって自律した日本スポーツ界を構築する夢を果たした。それが89年。91年の長野五輪招致成功はその道標であった。
そのために82年以来、アディダスが築いた国際スポーツ情報網を頼りに、共に築いたISL社にスポーツマーケティングを独占させ、世界支配を狙っていた電通を利用しない手はなかった。JOCの国際戦略においても電通を利用した。
しかし、肝心なのはキャンペーン事業もあくまでも管理するのはスポーツ側であったし、JOCの理念を実践するための手段としての電通であった。
それがいつしか全てを任せる方向に行くのだが、その時期と高橋氏がオリンピックの世界に登場する時期が重なる。それは果たして偶然だろうか? 私の手元に、彼が台頭するきっかけになった顛末を記した極秘メモがある。(つづく)
春日良一 元JOC職員・スポーツコンサルタント
長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)主筆。
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