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※紙面抜粋
※2022年7月24日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
一体どこまで増えるのか。新型コロナの「第7波」が、凄まじい勢いで広がっている。
22日、全国の新規感染者は19万5137人となり、3日連続で過去最悪を更新してしまった。全国の自宅療養者は過去最多の61万人に達し、入院や宿泊施設も含めると、現在78万人が療養している。
東京都の新規感染者も、前週金曜日から1.83倍も増えて3万4995人と過去最多を更新。都民の100人に1人以上が療養している状況である。もはや、いつ誰が感染してもおかしくない。
PCR検査場には行列ができ、検査結果が出るのに2、3日かかるのが当たり前になっている。
さすがに厚労省の専門家会合でも複数の委員から、「緊急事態宣言を検討する時期ではないか」という意見が出されたという。
実際、各地で「医療崩壊」が起きている。すでに小児科はパンク状態だ。横浜市のある小児科クリニックは、予約枠を通常より25%増やして対応しているが、朝一番で予約が埋まり、抗原検査キットが不足しているという。
感染者の急増によって、東京消防庁では救急車の出動率が一時98%を記録。大阪や愛知は、入院基準を「中等症」以上の患者に絞ってしまった。重症化リスクがある患者でも簡単には入院できなくなっている。
その一方、飲食店からは「このままでは店が潰れる」と悲鳴が上がっている。
「先週までは予約客で埋まっていたのに、感染が広がってキャンセルが続出している。来週以降は予約がない。これで、夏にコロナに直撃されるのは3回目だ。いい加減にして欲しい」(都内飲食店店長)
過去2年間、苦しめられてきた飲食店からしたら「緊急事態宣言なんて冗談じゃない」という思いだろう。
危機的状況はあと1カ月以上つづく
感染者が過去最悪に膨れ上がっているのは、流行の主流となっているオミクロン株の亜種「BA.5」の感染力が異常に強いからだ。感染力は「第6波」の主流だった「BA.2」の1.35倍とされている。
「BA.5」は、感染すると症状が長くつづくという特徴もあるらしい。フランス公衆衛生局の調査では、「BA.5」の感染者の症状が継続する期間は、「BA.1」の4日間と比べ、7日間と長かったという。
これまでオミクロン株は「症状が軽い」とされてきたが、「BA.5」は症状が重いという見方も出てきた。感染者からは「喉が痛くて食事ができなかった」「ワクチンを3回打っていたのに40度近い熱が出た」といった証言が相次いでいる。
はたして「第7波」は、いつ収束するのか。どこまで感染者が増えるのか。
「過去2年を検証すると、夏の流行は8月にピークを迎えています。昨年は8月20日、一昨年は8月10日でした。恐らく、今年も8月中旬にピークアウトするはずです。つまり、あと3週間は感染者が増えつづける恐れがあるということです。右肩上がりで一直線に増えつづける可能性が高い。そうなると新規感染者数は、第6波の2〜3倍では済まない恐れがあります」(医療ガバナンス研究所理事長・上昌広氏)
ヤバいのは、これから重症者が増加する恐れがあることだ。新型コロナは、まず若者の間で感染が広がり、高齢者へ感染が広がっていく。基礎疾患のある高齢者が感染すると、コロナによって死亡することはなくても、感染したことをきっかけに持病を悪化させて亡くなるケースがある。
重症者数は、新規感染者のピークから2週間程度遅れてピークになるのが、これまでのパターンだった。あと1カ月以上、危機的な状態がつづく可能性があるということだ。
夏の感染拡大は分かっていたはず
この事態を招いたのは、すべて岸田首相の無為無策が原因である。岸田が先手先手で動いていれば、この惨状は防げたはずだ。明らかに対策が後手に回っている。
コロナ対策で最も重要なのは、「検査体制」と「医療体制」をキチンと整備することだ。
たとえ感染が拡大しても、いつでも検査を受けられ、医療にアクセスできる環境が整っていれば、国民もパニックに陥ることはない。
日本は、世界最高レベルの医療を誇っているのだから、政府が先頭に立って体制を整えていれば、PCR検査場に行列ができることも、小児科がパンクすることもなかっただろう。それなのに、今頃、慌て始めたのか、岸田は22日になって、発熱外来を訪れた人に抗原検査キットを配布する方針をようやく表明しているのだから、「何を今さら」である。
致命的だったのは、ワクチンの4回目接種の対象を当初、60歳以上に限定し、60歳未満の医療従事者を外したことだ。政府は22日、やっと60歳未満の医療従事者に対象を拡大したが、遅すぎる。
「多くの自治体は、接種体制を整えるのに1週間はかかります。本格的に接種を始められるのは、感染拡大のピークとされる8月になってしまうでしょう。医療従事者からは『どうして6月から始めなかったのか』と不満の声が上がっています」(厚労行政関係者)
結果的に、足元では多くの病院で医療従事者が感染。人員が不足し、医療逼迫に拍車がかかっている状況だ。
そもそも、この2年間を振り返れば、夏に感染拡大の波が来るのは予測できたはずである。なのに岸田は、全く手を打たず、選挙応援で全国を飛び回っていたのだからどうしようもない。
「医療逼迫は患者の殺到も一因ですが、より大きいのは医療従事者が感染し、現場の人手が不足していることです。夏に大きな波が起きることは予想できたはずなのに、なぜ早期に医療従事者への4回目接種を進めなかったのか。ワクチンが不足していたわけではなく、一部で廃棄していたほどなのに、接種を進めなかったのはあり得ないことです」(上昌広氏=前出)
明らかな人災だ。
なぜこの2年間の失敗に学ばない
日本がコロナに襲われてから2年も経つのに、岸田はこの間、何を学んできたのか。安倍政権も、菅政権も、感染の大波が起こるたびに慌てふためき、対策が後手に回っていたが、岸田も同じ失敗を繰り返している。
最悪なのは、過去の失敗の検証さえしようとしないことだ。
過去2年間のコロナ対策を検証した「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」は、いい加減の極みだった。わずか1カ月で報告書をまとめたため、中身はスカスカ。関係者へのヒアリングはたった2回しか行わなかった。キーマンである新型コロナ対策分科会の尾身会長への聴取はわずか7分間である。安倍元首相と菅前首相にも話を聞いていない。これでどうやって過去の失敗を検証するのか。
この2年間で海外はコロナへの対応を大きく変えている。欧米諸国でも感染は拡大しているが、多くの国民がマスクをつけずに過ごしている。感染しても簡単に医療にアクセスできる安心感が背景にあるという。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「欧米各国はこの2年間から学び、対策を充実させてきたのでしょう。ところが、日本は過去の教訓に学ばず医療体制の整備を怠ってきたわけです。日本にも欧米に劣らない質の高い医療がある。にもかかわらず、また医療逼迫を招いているのは、行政のマネジメントができていない証拠です。岸田政権は何もしていないのも同然でしょう」
結局、岸田がやっているコロナ対策はただの“神頼み”に過ぎない。第7波が落ち着いても、また同じ過ちを犯すに違いない。ご自慢の「岸田ノート」には、何も書いてこなかったのではないか。
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