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※紙面抜粋
※2022年7月15日 日刊ゲンダイ
【その癒着を暴いてきたのはいつも雑誌・週刊誌】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) July 15, 2022
なぜ、大メディアは自民党と統一教会の関係を報じないのか
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/41FaCqzDT5
※文字起こし
安倍元首相が凶弾に倒れてから1週間が過ぎた。この間に営まれた通夜・葬儀などには一般市民も押し寄せ、テレビなどは今なお安倍報道一色に染まっている。そうした中、14日の会見で岸田首相は、費用を全額国費で賄う「国葬」を今秋実施すると発表。「在任期間が憲政史上最長」「国際社会からの高評価」「民主主義の根幹である選挙中の蛮行による死に国内外が追悼」などを理由に挙げたが、異例の対応だ。昭恵夫人は参院選投開票日のバラ付けや万歳の中止を検討した自民党に対し、「いつも通りやってください」と伝えたというが、国葬には「いい話ですから前に進めてください」とでも言ったのだろうか。
首相経験者の国葬はサンフランシスコ講和条約を締結し、この国の主権を回復させた吉田茂元首相以来のこと。1967年だった。佐藤栄作元首相は自民党と国民有志による「国民葬」で、在職中に死亡した大平正芳元首相は「内閣・自民党合同葬」。橋本龍太郎元首相と中曽根康弘元首相も合同葬で、政府はそれぞれ約7700万円、約9600万円を支出した。安倍の国葬費用は軽く1億円を突破するだろう。河野元ワクチン相が〈日本外交を引っ張って来られた安倍元首相らしく、政府主催のご葬儀の式典とすることで、来年のG7の前にもう一つ、日本での外交の舞台をつくるべきです。〉とツイートするなど、地ならしをしてきた自民党内は「国際的に存在感を示し、実績を残した元首相。国葬は当然だ」(高市政調会長)、「外国からも多くの弔意が示されており、国葬にふさわしい」(高木国対委員長)ともろ手を挙げているが、賛否両論が渦巻いている。
連中が口そろえる「政治テロ」の欺瞞
当然だ。国家を散々私物化し、モリカケ桜疑惑の真相解明から逃げ回り、国会で118回もウソをついたことを詫びもせずに鬼籍に入った人間に、なぜさらなる血税を投じるのか。アベノマスクに400億円超を浪費。アベノミクスの金融緩和で円安物価高は急伸し、国民生活は疲弊する一方、むやみやたらの財政出動で国の借金は1000兆円を突破した。安倍政権の8年8カ月でこの国を支えてきた経済力は衰え、国民の生活水準はどんどん低下。国富を吹き飛ばしたと言っていい。岸田は国葬を通じ、「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示す」とも言っていたが、そこに民意はあるのか。なぜ国民を代表する機関である国会で何ら議論をすることなく、政府が独断専行するのか。そうでなくても安倍の死には疑念がつきまとう。自民党の連中が口をそろえる「政治テロ」の被害者とは到底言えないからだ。
安倍を銃撃した山上徹也容疑者の供述からは、強い怨恨と殺意を募らせてきたさまが浮かび上がる。山上は両親、兄、妹の5人家族。妹が生まれる目前、トンネル工事の現場監督だった京大工学部出の父親が自殺し、実母を亡くして間もなかった母親は統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に足を踏み入れたという。小児がんを患う兄も抱える中、母親はどんどん教団にのめり込んでいく。父親の生命保険金5000万円のほか、実父から相続した不動産などを次々に売り払い、1億円以上を献金したという。その一方で、子どもたちは食べる物にも困り、奈良県でトップクラスの県立高に通った山上は進学もままならなかった。生きる知恵も経済力もない子どもになす術はなかったことだろう。家庭を破壊し、人生をメチャクチャにした教団に恨みを抱くのは自然の流れだ。
第2次政権で開き直り、隠さなくなった深い関わり
1954年に韓国で統一教会を創設した文鮮明氏の妻で、教団を牛耳る韓鶴子総裁が19年に来日し、愛知で開催された集会に出席したタイミングを狙い、山上は「火炎瓶で襲撃しようとしたが、会場に入れず、できなかった」という。コロナ禍で海外との往来が制限される中、目にしたのが、教団のフロント組織「天宙平和連合」(UPF)が昨年9月に主催したリモート集会に寄せられた安倍のビデオメッセージだった。「ご出席のみなさま、日本国・前内閣総理大臣の安倍晋三です」とにこやかに切り出した安倍は、「UPFと共に世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、みなさまに敬意を表します」などと惜しげもなく賛意を送っていた。「安倍とつながりがあると思った。絶対に殺さなければならないと確信した」ことから標的を変更。動機は明確であり、論理性がある。にもかかわらず、犯人が統一教会と安倍との関係を誤解し、「逆恨み」したような報じ方が横行しているのはなぜなのか。大メディアが両者の異様な関係に目をつむる理由は何なのか。
統一教会問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏はこう言う。
「UPFの一件だけを切り取り、〈政治家は頼まれればメッセージくらいは送る〉と解説する識者がいますが、ミスリードです。意図したものであれば問題のすり替えですし、安倍元首相や自民党と統一教会の構図を理解できないのであれば力量が疑われる。安倍元首相について言えば、教団との関係は祖父の岸信介元首相、父親の安倍晋太郎元外相から続くものです。首相に返り咲いた第2次政権以降、開き直ったように関わりを隠すこともなくなった。大臣、副大臣、政務官に統一教会の支援を受ける議員をどんどん登用し、警察を掌握する国家公安委員長には、山谷えり子、小此木八郎、武田良太といった教団に近い議員を就けた。安倍元首相と親密な北村経夫参院議員が初当選した13年選挙では統一教会に組織票を出すように依頼し、15年8月には教団の悲願だった名称変更を文化庁に認証された。首相動静には出ていませんが、16年6月には教団の日本会長と総会長夫人が官邸に招待されています。米大統領就任前のトランプ氏との会談を仲介したのは統一教会で、そのバーターとして参院議員会館でフロント団体がイベントを開催し、閣僚5人を含む自民党議員63人が出席。代理出席を含めれば、その数は100人を優に上回りました」
「先生はすでに信徒となりました」
なぜ大メディアは自民党と教団の関係を報じないのか。
東京新聞(14日付朝刊)が「旧統一教会と自民党」と題して特集を組んだくらいで、その癒着を暴いてきたのはいつも雑誌だ。
58年に日本に進出した統一教会は64年に宗教法人として認証された。岸信介元首相の後ろ盾を得て68年に反共運動を目的とした政治団体「国際勝共連合」を設立。私設公設を問わず、秘書養成所で訓練を受けた信徒を無償で送り込み、清和会を中心とした自民党にじわじわ入り込んでいく。文鮮明は「まず秘書として食い込め。食い込んだら議員の秘密を握れ。次は自らが議員になれ」と指示していたといい、実際その通りになった。
自民党議員の統一教会総汚染は今後もどんどん明るみに出るだろう。参院選で安倍が熱心に推していた元首相秘書官の井上義行議員(比例)は選挙期間中に教団の集会に馳せ参じ、幹部から「井上先生は、もうすでに信徒となりました」と紹介されていたことが発覚している。
選挙に弱い井上の獲得票数は過去最多の16万5062票。特定枠を除いて11番目だった。みんなの党から比例で立った13年の参院選は4万7757票で、4位の最下位当選。自民党の比例枠に潜り込んだ19年の参院選は8万7946票だったものの、25位で落選。この3年で8万票近くも上積みしたわけだが、8万〜10万票とされる教団の組織票と符合する。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。
「大手メディアの腰が引けているのは政府自民党への忖度のほか、統一教会からの嫌がらせを恐れた自主規制が働いています。教団がメディアに送り込んでいる内通者による活動も要因のひとつではないか」
かつては社会問題化した高額な壺などを押し付ける霊感商法や、教祖のマッチングによる「合同結婚式」などの被害は絶えない。欧米で統一教会がカルト宗教と認識されるのには理由がある。事実をありのままに報じないメディアは自民党のみならず、教団に加担したも同然である。
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