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銃による暴力と戦争
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2022年7月 9日 植草一秀の『知られざる真実』
暴力は許されない。
安倍晋三元首相が銃撃され逝去された。
ご冥福をお祈りするとともに謹んで哀悼の意を表したい。
暴力は悪。
暴力を大きくしたものが戦争。
戦争も悪である。
暴力が許されないなら戦争も許されない。
暴力によって人命を奪う暴挙は許されない。
この意味で日本は正しい判断、正しい規範を持つ国。
日本国は憲法によって戦争を放棄した。
日本国憲法は、
「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」
「国の交戦権は、これを認めない」
ことを明記した。
日本は世界に類例を見ない平和憲法を定めた。
暴力を許さないとの認識を持つと同時に、戦争を許さないことについても見つめ直すことが必要だ。
他者から一方的に攻撃を受けたときに、これに反撃することは正当防衛。
許されるのは、他者に非があり、その非がある他者から一方的に攻撃を受けた際に反撃すること。
ウクライナで戦乱が起きたことを根拠に憲法改定、軍備増強、日米同盟強化の声がかまびすしい。
戦乱発生原因がウクライナになく、ロシアが何の根拠もなく領土拡張の野心だけでウクライナに攻め入ったなら、この主張に根拠がないとは言えない。
一方的に軍事侵攻する無法者国家が存在するなら、正当防衛で我が身を守る対応は必要。
これまで全否定することは適正と言い難い。
しかし、重要なことは暴力、武力の行使、武力による威嚇、戦争行為を未然に防ぐこと。
ウクライナの事例で戦乱に至る前に、戦乱の発生を未然に防止する方策がなかったのかどうか。
この検証が重要だ。
この検証を抜きに、攻め込まれたときに対応することを大義名分にして、安易に戦争に踏み込むこと、武力の行使、武力による威嚇に安易に依存することは正しくない。
まして、相手が攻撃もしていないのに、攻撃する可能性があるからと、自ら先に手を出すことを「反撃能力」として肯定することは許されない。
暴力を排除するなら、自分から一方的に仕掛ける戦闘行為に対して強い制限をかけることが必要不可欠だ。
銃による暴力を許してはならない。
このことは戦争そのものに対する強い制約を課すことと連動する。
日本国憲法は戦争行為、武力の行使、武力による威嚇について、厳しい制約を課している。
ところが、この制約を取り払い、安易に戦争行為に加担する、武力を行使する、武力による威嚇を行う、ひいては敵方が行動していないのに、自ら先制攻撃に着手することを可能にする法改定、制度改定を推進する行動が先鋭化していた。
これらの行為は銃による暴力を断じて許さないという姿勢と矛盾する。
銃による暴力を断じて許さないとしながら、戦争への安易な加担、安易な武力行使、安易な武力による威嚇を可能にするための法改定、制度改定を強行することは根本的な矛盾だ。
ウクライナの事例を考えれば、ウクライナが何をするべきであったのかは明白だ。
ロシアが何の理由もなく、ウクライナに非がないのに領土的野心で一方的に軍事侵攻したわけではない。
ロシアとウクライナの間に根深い確執、対立があり、これまでに紛争が表面化し、その紛争を解決するための合意が形成されたという事実が存在する。
ミンスク合意という両者が合意した問題解決の結論が存在した。
この合意を履行していれば戦乱の発生はなかった。
平和を愛する諸国民の信義と公正に信頼して問題を解決することが第一。
この基本をおろそかにして戦争への加担、武力の行使、武力による威嚇に安易に突き進むことは暴力の肯定になる。
暴力を許さないことと戦争の否定が通底することを認識しなければならない。
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