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※紙面抜粋
※2022年6月7日 日刊ゲンダイ2面
【目に余る「嘘八百」の国会答弁】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) June 7, 2022
岸田首相、あなたは安倍元首相と同じだ
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/PvkOkBFICT
※文字起こし
7日閣議決定の「骨太の方針」。岸田首相がバイデン米大統領に“口約束”した防衛費の「相当な増額」をめぐり自民党内で激しい攻防が繰り広げられた。
自民党は4月にまとめた提言で「GDP比2%以上、5年以内の達成」を要望。しかし「骨太」の原案に<防衛力を抜本的に強化する>としか明記されていなかったため、安倍元首相が激怒した。「2%」「5年以内」を盛り込むよう執拗に要求し、自民党の会合で安倍シンパが加勢。結局<防衛力を5年以内に抜本的に強化する>と年限が加えられた。
原案では注釈にすぎなかった「NATO(北大西洋条約機構)諸国が国防予算についてGDP比2%以上を達成する目標を掲げている」ことも本文へと“格上げ”。安倍は「これで防衛費のGDP比2%目標を5年以内に達成すると読めるだろう」とニンマリだったらしい。
もっとも、岸田も抵抗し、政府として「2%にする」とは明記しなかった。自身が国会で繰り返した「防衛費はこれから積み上げる」との曖昧答弁は維持した形。参院選を前に、財源に触れたくないから、規模は何としてもあやふやにしておきたい。そんな狡猾さが透けて見える。
2%ありきは「武器を買え」の要求
だが、これまでGDP比1%の枠をはめてきた防衛費を、GDP比2%へと11兆円規模まで倍増させることが「対米公約」なのは、歴史の経緯を見れば一目瞭然だ。5日付の「しんぶん赤旗」が、時系列で分かりやすく詳報している。
米国の要求により、NATO加盟諸国に「GDP比2%」の指針が設定されたのは2006年。そして14年のロシアによるクリミア侵攻を受け、同年9月のNATO首脳会議で、「24年までの2%達成」という目標が掲げられた。
17年にトランプ政権が発足すると、NATO以外の同盟国にも「2%」を要求し始める。
20年10月、当時のエスパー国防長官が講演で、「われわれはNATOを超えて、すべての同盟国が防衛にもっと投資することを期待している。少なくともGDP2%を下限として」と発言。オブライエン大統領補佐官もGDP比2%について、「NATO以外でもゴールドスタンダード(黄金律)だ」と軍事専門誌で述べ、「2%」が絶対的な数値目標となった。
21年に発足したバイデン政権は「対中強硬路線」を強化し、日本に大幅な軍事分担拡大を要求。同年4月の日米共同声明で、菅前首相が「自らの防衛力を強化する」と誓約した。
その結果、同年10月の総選挙で自民党は初めて軍事費の「GDP比2%以上」を公約に掲げ、同月、エマニュエル次期駐日米大使(現大使)が米議会の公聴会で自民党の公約に触れ、日本の軍拡は「同盟に不可欠だ」と発言したのだった。
思い返せば、安倍はトランプとの“蜜月”をアピールして、F35戦闘機など無駄な高額兵器を爆買いした。その支払いは「後年度負担」という方法で分割ローンとなっているため、現状の防衛費の額では足りなくなるのは必然でもあった。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏はこう言う。
「本来、防衛費というのは、敵がどういう攻撃をするから、どういう武器体系が必要なのか、という話が先です。金額や規模から始まるのは、日本の事情に関係なく『武器を買え』という米国の要求以外の何ものでもありません。2%という数字には何の根拠もない。NATOが過去に1.5%程度だったから、次のシーリングは2%という程度のもの。同盟各国の財源の規模に合わせて、とにかく武器を買わせようというもので、2%を達成したら、次は3%へと要求がエスカレートしかねません」
国民をバカにした言葉遊びと論点ずらし
岸田は米国の求める「防衛費の相当な増額」がどの程度なのか、何を求められているのか、しっかり理解した上で、「対米公約」しているのだ。そう考えると、財源を曖昧にした国会答弁は許し難い。
5月31日の参院予算委員会で、共産党の小池書記局長が「『相当な増額』と言うのであれば、相当な社会保障費削減か相当な増税、国債発行しか選択肢がない」と追及した。
もっともである。現状の防衛費を2%にまで倍増するのであれば、国民生活に痛みを求めるしかない。それをハッキリさせないままの防衛費増額などあり得ない。ところが、岸田の答弁は、言葉遊びの論点ずらしに終始した。
「『相当な』は防衛力を抜本的に強化する。それに見合うだけの予算をしっかり用意するという意味で『相当な』予算を用意すると申し上げた。(防衛力強化の)具体的な内容が決まらなければ、それに見合う予算を言うことはできない」
こんな答弁で国民を納得させられると思っているなら、国民をバカにしている。
岸田は「反撃能力」についても、フザケた国会答弁でお茶を濁した。「反撃能力」という言葉は、自民党が4月にまとめた政府への提言で、「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」という呼び方に変更したものだ。「敵基地攻撃」では憲法9条に抵触する「先制攻撃」になりかねないことや、移動式のミサイル発射基地などが当たり前となり、「敵基地」をピンポイントで攻撃することが非現実的なことなどが背景にある。
要はこれも自民党お得意の言葉遊びの類いなのだが、岸田が5月の日米首脳会談後の共同会見の場で、政府として初めて「反撃能力」という言葉を使ったため、3日の参院予算委で立憲民主党の福山議員が「敵基地攻撃能力を反撃能力に政府は言い方を変えたのか」と質問したのだ。すると岸田はこう答えた。
「同じことを指して使っている」「どちらも『いわゆる』という言葉をつけた上で使わせていただいている」
自民党の提言では、「反撃能力」の攻撃対象には「指揮統制機能も含む」となっているため、福山が「同じではない。反撃能力の方が範囲が広い」と反論すると、岸田は「同じか違うかも含めて、選択肢として排除せずにしっかり議論したい」とはぐらかしたのだった。
トンデモナイ詐欺師
「嘘八百」ばかりが目に余る岸田は、「モリカケ桜」で疑惑が炸裂し、国会での118回の虚偽答弁が認定されている安倍と同じ穴のムジナだ。
政治評論家の森田実氏が言う。
「国会で曖昧路線を続ける岸田首相はトンデモナイ詐欺師ですよ。『軽武装、経済重視』という宏池会のイメージをまき散らしながら、その中身は安倍元首相の子分みたいなもの。実際、安倍政権で長期にわたって外相に就き、安倍氏の言うなりに動いてきたわけですから。安倍氏は危なさが表面に出るため、国民にも警戒心が働いた。しかし岸田氏はハト派の仮面をかぶっているので、よりたちが悪い。安倍氏と岸田氏は対立しているように見せかけて、その本質は同じ。安倍氏を芯にして“岸田オブラート”で包み、米国に要求されるがままに追従しているのです」
NATOの「防衛費GDP比2%目標」は2014年に定め、24年までの10年がかりだ。あと2年となった今年3月時点でも達成しているのは30カ国中、わずか8カ国。それなのになぜ、日本は5年で2%を対米公約しなきゃならないのか。
米国に言われるがまま尻尾を振り、財源すら明かさない。参院選が終われば岸田は「白紙委任」を得たとばかりに、猛進するのが目に見える。
「岸田氏の曖昧路線は、そうすることが参院選勝利の近道だと思い込んでいるからでしょう。参院選後は維新の会や国民民主党と一緒に憲法9条の改正へも一直線になりかねません。米国に促されるまま、アジアでは台湾と韓国との関係だけ維持すればいいと開き直れば致命的です。日本はアジアのウクライナになって、米国に対中国の先兵にさせられてしまう。参院選までに、本当にそれでいいのかという議論が起きなければおかしいですよ」(森田実氏=前出)
有権者は黙っていちゃダメだ。
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