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※紙面抜粋
※2022年5月25日 日刊ゲンダイ
【批判しない大メディアにも仰天】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) May 25, 2022
岸田首相よ 広島サミットとは正気なのか
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/Vv52ajPusA
※文字起こし
米国のバイデン大統領がアジア歴訪のハイライトにするはずだった日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の結束は、案の定の不首尾に終わった。24日の首脳会議後、会見した議長役の岸田首相は「力による一方的な現状変更をいかなる地域でも許してはならないとの4人のコミットメントを東京から発信できた意義は大きい」と胸を張ったが、3カ月にもわたってウクライナを侵攻し続けるロシアには一言も触れずじまい。武器輸入の大半をロシアに頼り、非同盟・多方面外交を展開するインドのモディ首相が翻意するそぶりすら見せず、首を縦に振らなかったからだ。共同声明ではロシアを名指しせず、ウクライナ侵攻を「紛争および進行中の悲劇的な人道的危機」と間接的に表現し、「あらゆる威圧的、挑発的または一方的な行動に強く反対する」とするにとどまった。
米印首脳会談の頭撮りではバイデンもモディも目を合わそうとせず、事務方が用意した原稿を棒読み。岸田が「意義」を強調するほど、お寒い実態が浮き彫りだ。クアッド会合は今後5年間で地域のインフラ整備に500億ドル以上の支援や投資を目指す方針で合意するなど、中国包囲網の再確認で終始した。
国益最優先の外交を堅持するモディの存在によって際立ったのが、バイデンに対する岸田の“上げ膳据え膳”のおもてなしだった。「米国第一主義」のトランプ前大統領と同じく、日米安保条約によって国内法不適用の米軍横田基地から日本入りしたバイデンを手厚く歓待。首脳会談で岸田が表明した「防衛費の相当な増額を確保する決意」も、「反撃能力を含めたあらゆる選択肢を排除しない決意」も、米軍と自衛隊の一体運用を要求する米国の意向に沿ったもの。バイデンが「強い支持」をするのは当然だ。「新しい資本主義」が表紙だけなのもそうだが、岸田が掲げる「新時代リアリズム外交」はうわべだけ。米国にシッポを振りまくって憲政史上最長政権をモノにした安倍元首相以上に米国隷従まっしぐらなのだ。
核禁条約オブザーバーもパス
そうして1カ月前倒しで発表したのが、日本が来年議長国を務めるG7サミットの広島開催だ。バイデンは「首相の故郷で行われることを非常にうれしく思う」とリップサービスしていたが、米国の「核の傘」による「拡大抑止」で日本を防衛すると喧伝しておきながら、米軍が投下した原爆によってあまたの犠牲を出した戦争被爆地を選定する撞着。岸田は「広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はない」「G7首脳と共に平和のモニュメントの前で平和と世界秩序と価値観を守るために結束していくことを確認したい」とか言ってたが、論理破綻に気づかないのか。広島サミットとは正気なのか。広島市はお膝元、「核兵器のない世界」の実現をライフワークに掲げてきたからこそ、底の浅さが知れるというものである。
批判しない大メディアにも仰天だ。日経新聞(24日付朝刊)が〈日米首脳会談で米国の「核の傘」による「拡大抑止」で日本を防衛すると確認したこととの矛盾もはらむ〉とサラッと指摘していた程度で、「6月下旬のG7独サミットまでに発表する予定だった」「核保有国の米英仏への根回しに成功した」「福岡県・市と名古屋市も名乗りを上げる中、広島県・市がほぼ同点だった」などなど、聞こえてくるのは経緯の解説ばかりである。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「被爆地ヒロシマを代表する政治家が聞いて呆れます。唯一の戦争被爆国でありながら、世界61カ国・地域が批准した核兵器禁止条約に日本が参加しないのは、同盟国である米国の『核の傘』に入っているためです。日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)などは、せめてオブザーバー参加をして欲しいと求めていますが、米国に反対され、岸田首相は動こうとしない。多少の見識や『核なき世界』の実現に向けた深い思いがあれば、広島サミットの開催は時期尚早と判断するところです。心ある県民は複雑な心境なのではないか。岸田首相にとっては幸いなことに、テレビや新聞は右へ右へと振れていて、批判的な論調は聞かない。そもそも、大手メディアは権力を監視しようとすらしなくなった。そうした流れの中で何もやっておらず、むしろ米国追従のアクセルを踏みまくっているのに内閣支持率は上昇しています。ケシカランことに、野党の中からも批判の声がほとんど上がらないのは、憲法をしっかり読んでいる国会議員がほとんどいないからでしょう」
米軍との共同行動に資する軍備増強を推進
広島サミットを喝破したのは共産党の志位委員長くらいで、こうツイートしていた。
〈日米首脳会談。「拡大抑止」の強化を宣言しながら、「核兵器の惨禍を起こさない」姿勢を示すために広島でサミットを開催。こんな矛盾と欺瞞はない。核抑止の先には「核兵器のない世界」は決してつくれない。この論理が、核軍拡競争と人類滅亡の危機に道を開くものであることは、歴史が証明している〉
その通りだ。核禁条約も批准せず、核の傘による「拡大抑止」を宣伝し、核兵器廃絶に完全に背を向けている政権が都合のいい時だけヒロシマを利用し、政治PRの偽善と欺瞞がアリアリである。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言っていた。
「非核三原則の精神が世界に浸透し、結実したのが核禁条約です。東アジアの安全保障環境が荒れているとはいえ、岸田首相の振る舞いからは唯一の戦争被爆国のトップとしてのプライドはみじんも感じられません。内閣支持率は高く、自民党が政権から引きずり降ろされる気配もなく、国内基盤は安定している。バイデン政権を揺さぶって40億ドルの追加支援を引き出したモディ政権のようにはいかなくとも、米国に交渉を持ちかけて譲歩を引き出す好機なのに、ひたすらご機嫌うかがい。安保法制に基づく集団的自衛権の行使を前提に、米軍と自衛隊による共同行動に資する軍備増強を推し進めようとしている。中国を刺激するリスクを自ら高め、カネも自衛隊もいいように使われかねません。米軍の先兵となっていいのか。保守派の言う『真の同盟』はこういうことなのでしょうか」
予算委もシャンシャン
国会議論や国民への説明もないまま、GDP比2%超を目指す防衛費増額や敵基地攻撃を口約束し、既成事実化させる手法に野党やメディアが沈黙しているのも驚きだ。政権寄りの読売新聞(24日付朝刊)は1面で〈まずは、抑止力の強化が喫緊の課題だ。ロシアによるウクライナ侵攻を阻止できなかった米国に対し、「本当に自分たちを守ってくれるのか」という疑念が日本の一部や台湾で広がっている〉〈日本への拡大抑止についても、米軍の打撃力行使に関する日米協議を深化し、信頼性を高める必要がある〉と書いていた。イケイケドンドン。進軍ラッパが聞こえてきそうだ。
岸田政権が物価高騰の緊急対策という名目でまとめた総額2.7兆円規模の今年度補正予算案の国会審議が25日スタート。想定される参院選の公示まで1カ月を切る中、野党にとっては政権のあらゆるデタラメを追及する見せ場だ。26日から2日間、岸田と全閣僚が出席する基本的質疑が衆院予算委員会で実施されるが、最大野党の立憲民主党の泉代表は「防衛費は数字ありきではなく、あくまで必要なものを積算していく」としながらも、「必要な防衛力は整備すべきだ。防衛費がその結果として前例を上回るのは十分あり得る。増えることは肯定している」と発言。“兄弟政党”や最大ゆ党は言うまでもない。国民の無関心によって大政翼賛会化した国会に期待するだけムダか。
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