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※紙面抜粋
※2022年4月20日 日刊ゲンダイ2面
【この国ではロシア並みの言論統制】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) April 20, 2022
庶民はてんで分かっていない 「国民の敵」政権の正体
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/dIsJ6S8nsW
※文字起こし
鈴木財務相が閣議後会見や国会の場で「悪い円安」という認識を示し、一般庶民も急激な円安が物価高騰に拍車を掛けていることに気づいてきた。日銀の異次元緩和による円安誘導策を歓迎してきた製造業も「円安リスクは初めて」(日本鉄鋼連盟会長)と悲鳴を上げている。東京商工リサーチが19日公表したアンケート調査では、4割の企業が「円安は経営にマイナス」と回答した。
だが、そんな日本の窮状にもマーケットは容赦ない。20日の東京外国為替市場は1ドル=129円台まで円安が加速。130円突破は目前で、日銀が金融政策を変えない以上、日米の金利差を意識した円売り・ドル買いは止まらない。
ここへきての急激な物価上昇は、コロナ禍からの世界的な景気回復に伴い、エネルギーや穀物の需要が拡大したところに、資源大国のロシアがウクライナ侵攻を強行したことが理由と解説される。確かに、小麦の世界輸出量の3割を占める2国の戦争が物価高を深刻化させ、ロシアに対する経済制裁が原油や天然ガスなどの高騰を引き起こしているのは間違いない。
しかし、それはあくまでも直近の事情であり、真の理由は根深く、別のところにある。日本経済の沈没や国力の衰退が戦争によってクッキリ浮き彫りになっただけ。安倍、菅、岸田政権どころか、小泉政権なども含めた長年の自民党政権の無策のツケが戦争で倍返しとなって可視化されたのである。
悪夢の30年、自民党5つの大罪
まさに失われた30年だ。自民党の無策は、先進諸国で日本だけが賃金が上がらなかったことに象徴される。日本の平均賃金(2020年)はOECD(経済協力開発機構)加盟35カ国のうち22位。この30年の上昇率は4.4%とほぼ横ばいなのに対し、米国は47.7%、英44.2%、独33.7%、仏31.0%と信じられないほど差が開いた。
さらには、アベノミクスによる官製相場と金融緩和という麻薬が、国力低下を加速させた。円安誘導策は輸出企業を潤し、株高を演出したが、為替差益だけで儲けられるため、高付加価値商品の開発などイノベーションが進まず、経営者を思考停止にさせたのだ。自民党の経済政策は「今だけ、カネだけ、自分だけ」の刹那。中長期的にこの国の未来を展望する思考など一切ない。
元経産官僚の古賀茂明氏はこう言う。
「安倍元首相が民主党政権を指して『悪夢の3年間』と言いましたが、3年なんてかわいいもので、自民党政権は『悪夢の30年間』ですよ。経済政策において、自民党政権には『5つの大罪』があります。@構造的な対策をせず、景気が悪いからと借金でバラマキを続けたこと。今や1200兆円の借金大国になりました。A30年以上前からそうなることが分かっていた少子高齢化に手をつけてこなかったこと。社会保障の基盤を崩壊させました。B日本を世界で唯一、成長できない国にしたこと。正確に言えば、成長していないのは日本と北朝鮮の2カ国だけです。C賃金上昇を抑制する政策を続けてきたこと。賃金を上げられなかったのではなく、上げなかったのです。経団連企業が途上国との価格競争に負けない政策を求め、請負や派遣など非正規雇用を拡大した。さらに、移民は嫌なので『留学生30万人計画』の名の下、サービス業を中心に留学生をアルバイトとして雇い、賃金を抑えた。円安政策は賃金を抑える目的もありました。時給800円は、1ドル=80円なら10ドルですが、120円なら6.7ドル。3分の1の賃金カットと同じですからね。D福島原発の事故後も原発頼みで再生エネルギーへのシフトを抑えたこと。舵を切っていれば、今ごろ太陽光や風力発電などは世界の先頭を走っていたでしょう。いずれも自民党が30年かけてやってきたバカな政策です」
非正規拡大、「生産性革命」で労働者をモノ扱い
そんな自民党にすり寄り、取り込まれそうになっているのが、連合の芳野会長だ。18日、自民党の「人生100年時代戦略本部」で講演した。立憲民主党と国民民主党の支持母体である連合会長が自民党会合に出席するのは異例のうえ、約2カ月後に参院選を控えるタイミングである。芳野会長は、麻生副総裁や小渕組織運動本部長とも会食しており、自民党が組織的に野党の邪魔をしようとしているのは明らか。それでも芳野会長は、「政策実現に是々非々の対応をする。連合の考え方を理解いただく場があるのは良いことだ」と能天気である。
自民党が連合の考え方を本気で理解する気があると思うのか。歴代自民党政権の雇用・労働政策は、常に経営者側の論理で進められてきたではないか。非正規雇用はいまや全労働者の4割を占め、コロナ禍での雇い止め、低賃金や長時間労働など、企業にとって使い勝手のいい政策に労働者は苦しめられている。
安倍政権時代の「働き方改革」や「1億総活躍社会」もしょせんは労働力不足を補うためのもので、「生産性革命」なる言葉が労働者をモノとして扱っていることを明確に表していた。「正社員ゼロ法案」と呼ばれた労働者派遣法改悪や「残業代ゼロ法案」の労基法改悪に連合は反対したのではなかったか。自民党にすり寄るのは、連合の自己否定以外の何ものでもない。
芳野会長は論外としても、雇用が破壊され、賃金も上がらず、万年ゼロ成長と、日本経済をズタボロにした「国民の敵」である自民党政権を有権者がなぜ支持するのだろうか。直近の朝日新聞の世論調査(16、17日)では、岸田内閣の支持率は55%と政権発足以来最高となり、自民党の支持率も前月比4ポイント上昇し、38%。参院選の投票先では同6ポイント上昇の41%に達した。
野党の存在感がいまひとつという現状があるとはいえ、世論の批判の矛先はもっと自民党に向かってもおかしくないが、そこにはアベノミクスを政権と一緒になって囃してきた大メディアの問題もある。
「自民党の経済政策が失敗していることをメディアがきちんと伝えなかった罪は大きい。政治部の記者は経済オンチなので、その場その場で出てきた話を政府からブリーフィングされるまま垂れ流すだけ。政治家にも気を使うので、ちゃんとした批判記事を書けないし、書かない。もっとも経済部の記者も企業や経済官庁に配慮するので批判記事を書けない。その結果、真実が読者や視聴者に伝わらないのです」(古賀茂明氏=前出)
牙を抜かれたジャーナリズム
物価高と景気悪化が重なるスタグフレーションがヒタヒタと迫り、国民生活は苦しくなっていく。それでも円安是正で金利を上げれば、1%の上昇で国債の利払いが3.7兆円も増えるという。低金利に慣れ切った住宅ローン難民やゾンビ企業の倒産も続出しかねず、金融政策の転換もできない。
そんなニッチもサッチもいかない状況を世界に見透かされているから、閣僚の口先介入は鼻で笑われ、無策がバカにされている。
大メディアは安倍政権で飼いならされ、忖度体質が骨の髄まで染み込んでしまった。自民党政権の経済政策のおかしさは国民に伝わらず、まるでロシア並みの言論統制が行われているかのようだ。
政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「アベノミクスをヨイショしてきたから気まずいのか、この期に及んでもメディアは、『円安は深刻ではない』と言い続ける黒田日銀総裁への責任追及が弱い。もともと高給取りで国民目線が欠けているところに、安倍政権ですっかり牙を抜かれ、ジャーナリズムの責任を果たさなくなってしまった。安倍元首相のために無関係な雑誌媒体に『ゲラを見せろ』と介入した朝日新聞の編集委員がいましたが、メディアは落ちるところまで落ちてしまいました」
このまま自民党政権が続く限り、日本売りは永遠に止まらない。庶民はどんどん貧しくなり、コロナ後の海外旅行は高額すぎて夢のまた夢。それでいいのか。
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