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世界第5位の軍事力を持つ日本がすべきことは、軍拡競争の連鎖を止めること 三枝成彰の中高年革命
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/303672
2022/04/09 日刊ゲンダイ
赤の広場を歩く人たち(モスクワ)/(C)ロイター
ロシアには5回、行った。1993年の山本寛斎さんのイベント「ハロー!ロシア」、95年の「日本文化週間」でのバイオリン協奏曲の公演、2001年にはウズベキスタンからの乗り継ぎ、そして13、15年には六本木男声合唱団の公演だ。
彼の地でのことは今でも忘れられない。最初に行った時、雪の公園でお婆さんが卵を2個手に持って売っていたり、軍人が補給車からガソリンを横流ししたりしていた。「軍用車でも救急車でも、米ドルか米国たばこを渡せばタクシー代わりにできる」と聞き、実際に乗った。街は混乱の極みだった。その後、行くたびにロシアは豊かになっていた。プーチンが石油と天然ガスをもとに経済を立て直したからだ。イタリアやドイツなどがロシアに強い態度に出られないのも、ロシアからのエネルギーなしにはやっていけないのが理由だ。EUがロシアに支払うエネルギー代は、1日に10億ユーロ(約1300億円)にもなるという。プーチンが国民に支持されるのはロシア経済再建の記憶が鮮明なためで、彼もそれを過信したのだろう。
かつての欧米の指導者たちはこう考えていた。
「ユダヤ人もアフリカ系もアジア人もスラブ人も、みな劣等な人種だから滅ぼしても構わない。アングロサクソンとゲルマンのみが、尊ばれるべき優秀な民族だ」「国民に人権はなく、意思を表明する自由もない。生命も財産も国に捧げるべきだ。すべてに優先するのは国益だ」「政治に参加するのは男性のみで、女性に参政権も教育を受ける必要もなく、ただ良妻賢母であればいい」「国と国とが争って、負ければ領土を奪われるのは道理だ。強い国が弱い国を従属させることで、敵対勢力から守ってやるのだから。戦争で勝った国が、すべてを手にするのが当然だ」--。
20世紀はすべてがこうだった。わずか77年前のことだが、欧米でも第2次大戦終戦前まではもっとひどく、今ではありえない暴力偏重、人権無視の思想がまかり通っていた。
20世紀は「力の時代」「戦争の世紀」で、世界中であまたの人が傷つき、亡くなっていった。だが、いまではすべてが変わった。21世紀は共生の時代になったのだ。ヒトラー、スターリン、東条英機、毛沢東ら、戦前のファシズム国家の指導者たちはみな自滅し、消え去った。
しかし現代にも、時代が変わったのを理解せず、忌まわしき「力の時代」への回帰を目指す人たちがいる。「大ロシア」の復活をもくろむプーチンや「一帯一路」のスローガンのもと着々と勢力を広げている習近平などだ。
第1次世界大戦からベトナム、イラク、アフガニスタンやチェチェンまで、20世紀に各地で起きた戦争や紛争で、およそ2億人は亡くなったと思われる。これだけの命を犠牲にして、なお彼らが求める“強さ”とは何なのか? 力への志向はもはや時代にそぐわず、許されないことを知るべきだ。
世界の軍事力ランキングで、日本は米露中インドに次ぐ第5位(昨年、グローバル・ファイアパワー調べ)。韓仏英より上だが、日本の国会議員にも「強い相手に対抗するには強い軍隊が必要」と主張する人たちがいる。
ウクライナのような事態が起こると「防衛力を強化すべき」「これを機に、抑止力としての核兵器を持つべきだ」と唱える者が出てくる。各国が互いに警戒して軍備を拡充していたらきりがないし、武器を持てば人は必ずそれを使いたくなるものだ。
かつて自滅と焼け野原を経験し、世界唯一の被爆国の日本こそが、「戦争は起こさない、核は持たない、他国の紛争にも一切関わらない」と表明することが大切だ。軍拡競争の連鎖を止める役目は、日本にこそふさわしい。そのためにはすべての国民が戦争の恐ろしさをいま一度振り返り、戦いのない世界をつくろうと表明すべきだと思う。
その時こそ、日本人は世界から尊敬されるだろう。
三枝成彰 作曲家
1942年、兵庫県生まれ。東京芸大大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「狂おしき真夏の一日」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、映画「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「優駿ORACIÓN」など。2020年、文化功労者顕彰を受ける。
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