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2022年3月26日 20時38分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/167978
岸田首相は26日、広島でエマニュエル駐日米大使との原爆死没者慰霊碑への献花や、核軍縮を目指す活動に関わったことがある若者との車座集会に臨み、「核なき世界」を目指す姿勢をアピールした。核軍縮をライフワークと公言し、国際的な議論の枠組みづくりに意欲的なことで知られる首相だが、核兵器禁止条約の批准を一貫して否定するなど、掲げる理念と実際の行動に隔たりが大きい。ロシアのウクライナ侵攻を機に「核の脅威」が指摘され、取り組みが後退する懸念もある中、首相の本気度が問われる。(曽田晋太郎)
「核の脅威は世界に伝わっていない。首相はもっと被爆の実相などを強く発信するべきだ」「核廃絶を唱えるだけでなく、もっと具体的な行動に移してほしい」
車座集会に参加した「ユース非核特使」経験者の若者たちは本紙の取材に、30分余りの意見交換では語りきれなかった思いを訴えた。
首相は昨年10月に就任した後、核軍縮の機運醸成を狙って、各国の政治リーダーらを集めた「国際賢人会議」の立ち上げ構想を打ち出し、バイデン米大統領と核拡散防止条約(NPT)の重要性を訴える共同声明も発表した。背景にあるのが、唯一の戦争被爆国・日本の責務は、核兵器の保有国と非保有国の橋渡しに努めることだという考えだ。
「核兵器を持っている国を動かしてこそ現実は変わる」が持論の首相はNPT体制を重視し、保有国が背を向ける核兵器禁止条約を通じた核軍縮・廃絶のアプローチを「遠回り」と受け止めている。6月にオーストリアで開かれる締約国会議へのオブザーバー参加も「いきなり理想の部分に足を踏み出すと、バイデン政権との信頼関係を損ねてしまう」という理由で、後ろ向きな姿勢に終始する。著書に「核なき世界の実現のために政治人生をささげたい」と記すこだわりの強さに反して、動きは鈍い。
ロシアが核の威嚇に及んだことで「核なき世界」とは対極の核抑止論への注目は高まっている。与野党からは米国の核兵器を国内に配備し共同運用する「核共有」導入や非核三原則の見直しを求める声が上がり、首相も議論は容認した。
広島市立大広島平和研究所の河上暁弘准教授は「NPTの枠組みで核軍縮が進まないため、核兵器禁止条約ができた経緯を考えれば、保有国の参加なしに核廃絶の道は開けないという首相の方法論は間違っている」と指摘。その上で「原爆投下を経験した日本の発言には説得力があり、(核なき世界の実現に向けて)他国にできない役割を果たせるはずだ」と話す。
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