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(4)維新失政の数々…“8割おじさん”の提案を吉村知事の独断で値切るクオリティー 最大ゆ党 維新躍進のカラクリ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/302040
2022/03/04 日刊ゲンダイ
根拠ない「イソジン発言」で品切れ騒動(大阪の吉村洋文府知事)/(C)共同通信社
アベノマスクに象徴される安倍ー菅自公政権の愚策オンパレードも酷いものだったが、維新が大阪で繰り広げた失策の数々もそれらに勝るとも劣らぬものだった。夢と消えた“大阪ワクチン”の開発話、防護服の代わりに募集された「雨ガッパ」騒動、「うそみたいなホントの話」とドヤ顔でポビドンヨードの有効性を記者発表した「イソジン騒動」などなど、こちらも枚挙にいとまがない。
維新の創業者・橋下徹氏のテレビ復帰とその後の吉村人気の沸騰の陰に隠れて、こうした失政の数々はすっかりかき消されてしまったが、維新政治の実態を理解する上で、これらは避けては通れない事実だといえよう。しかし、それら全てに触れるいとまはない。コロナ禍の初動における重大な失策であり、維新の実態を雄弁に物語る一つのエピソードを紹介するにとどめよう。
一昨年、3月20日からの3連休を前にした12日、松井大阪市長は記者会見で「社会を動かしていくことが職務」だとして、「(大阪市は花見の)自粛要請をやめようと思う」と述べたのだった。これを受けて橋下徹氏もツイッターで〈大阪・松井市長、花見自粛要請せず。「社会を動かすのが職務」……危機管理の見本〉(3月15日)と褒めそやした。この時点で、維新がコロナ禍を極めて甘く見ていたことがうかがえる。これを見た厚労省は“8割おじさん”こと西浦博北大教授(当時)らの作成した「大阪府・兵庫県における緊急対策の提案(案)」という文書(3月16日付)を手に大阪に飛んでくる。維新の能天気ぶりに大慌てしたわけだ。
「3週間」を「3日間」に
3連休直前の19日になって吉村府知事は記者会見を開き、この文書を手にしながら「連休期間中(3日間)の大阪府・兵庫県間の往来自粛」を要請した。メディアはこれを「3連休は阪神間の往来自粛を要請」と報じた。しかし西浦教授らの文書には、「大阪府・兵庫県全域で今後3週間の(中略)大阪府・兵庫県内外の不要不急な往来の自粛を呼びかける」と明記されていたのだ。「3週間」を「3日間」に、「大阪府・兵庫県内外の往来」を「大阪府・兵庫県間の往来」に吉村知事の独断で“値切って”いたというわけだ。文書を自分の手で示しながら、その中身とは全く異なることを平然と語る。これぞまさに維新クオリティーである。
往来自粛が解けた連休明け、どっと人出が繰り出すこととなり、それから2週間後の4月7日に大阪における第1波が始まったことは言うまでもない。 =つづく
冨田宏治 関西学院大学法学部教授
1959年、名古屋市生まれ。名古屋大法学部卒。名古屋大法学部助手、関西学院大法学部専任講師、助教授を経て99年から現職。専門は日本政治思想史。原水爆禁止世界大会起草委員長も務める。「核兵器禁止条約の意義と課題」など著書多数。共著「今よみがえる丸山眞男」を2021年12月に上梓。
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