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※2022年2月19日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2022年2月19日 日刊ゲンダイ2面
【その言葉の軽さに国民は唖然】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) February 18, 2022
岸田首相の正体は場当たりとゴマカシ、隠蔽で自己保身
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/sNNtYsc50i
※文字起こし
「今が一番厳しいとき。この困難を共に乗り越えていけるよう、もうしばらくご協力を心よりお願い申し上げます」──むなしい言葉が響いた。岸田首相が17日、ようやく会見を開いた。過去最大の感染「第6波」の最中に1カ月半も途絶え、久々の会見だったのに1時間強で打ち切って中身もなし。就任時に誓った「丁寧な説明」に大きな疑問符がつく。
国民を唖然とさせる軽い言葉とは裏腹に感染状況は深刻だ。高齢者への広がりと共に死亡者や重症者が急増している。
全国の死者数(1週間平均)は今月4日に「第5波」で最多の65人を、9日には「第4波」で最多の114人を次々と更新した。
1日の死者数も4日に103人と約8カ月ぶりに3桁に達すると、みるみる上昇。17日は過去最多の271人と、3日連続で200人を超えた。今月以降、17日までに確認された死者は2446人に上り、前月同時期(44人)の実に約56倍にも及ぶのだ。
死者急増の要因は高齢者の感染増加だ。重症者に占める割合も高齢者が圧倒的。深刻な病床逼迫に喘ぐ大阪府の資料からも70代以上は65%と、第4波の44%や第5波の18%と比べても際立って高いことが分かる。
高齢者施設のクラスターも深刻だ。厚労省によると、14日までの直近1週間は455件と過去最多。第6波では大阪府内だけで少なくとも100カ所以上の施設でクラスターが発生している。
ところが、東京都のように高齢者施設で感染しても病床負担を考慮して入院させず、医師の往診治療任せの自治体もある。保健所の業務は逼迫し、適切な施設を案内する前に治療薬を適切に使えず、重症化したり、命を落とすケースも発生するという悪循環だ。
関係2大臣は前倒し接種にブレーキ
返す返すも悔やまれるのが、ワクチン接種の遅れだ。17日時点で全人口に占める3回目の接種率は11.9%。デジタル庁によると、重症化リスクの高い高齢者でさえ、16日時点で打ち終えたのは約3割にとどまる。
岸田政権は2月末までに希望する高齢者の3回目接種を終える方針だが、目標に掲げた「1日100万回」のペースでも間に合わない。2月末までに接種対象となる高齢者約2900万人のうち、16日時点で3回目接種を終えたのは約1050万人。達成には今後1日平均155万回程度打ち続ける必要がある。
接種が遅れるほど高齢者のリスクは増すのに、政権はワクチン失政の言い逃れに終始してばかりだ。中でも許せないのが、前倒し接種にブレーキをかけた2大臣だ。
2回目と3回目の接種間隔について、厚労省の専門家分科会は昨年11月15日、「自治体の判断で6カ月以上も可能」としたが、翌16日に後藤厚労相は「原則8カ月以上、自由に地域の判断に応じて6カ月前に前倒しすることを認めるものではない」と説明。堀内ワクチン相も同日の会見で「現在の感染状況で6カ月間隔を前提に準備する必要はない」と断じた。
当時は各国とも接種の前倒しにカジを切り、日本も医療従事者や高齢者の3回目接種に必要な分量のワクチンを確保していたのに、大臣2人の発言は前倒し接種に「待った」をかけたようにしか聞こえない。
それでも両大臣は14日の衆院予算委員会で「政治判断による6カ月以上の打ち消し」との見方を否定した。実は“ブレーキ会見”の後、両大臣はそろって岸田と面会。NHKは当日、岸田が「原則8カ月」を自治体に丁寧に説明するよう指示したと報じていた。
岸田自身も“薄のろ接種”の元凶であり、政権挙げてオミクロン株の感染力の強さをナメてかかり、油断しきっていたとしか思えない。
ハト波のふりして自助押しつける冷酷首相 |
問題のブレーキ会見以降も、岸田政権は「原則8カ月」としていた接種間隔を対象者ごとに何度も見直し。やっと全体像が固まったのは今年1月半ばだ。優柔不断な政権の二転三転で、接種券の印刷や配送業務など自治体の対応は大混乱。おかげで接種は遅れ、高齢者の重症・死亡を増やす要因となっている。
今さら政権は「高齢者施設の接種は接種券なしでも可能」と呼びかけているが、後の祭り。このワクチン行政の致命的ミスを認めず、岸田政権はゴマカシ策を連発だ。
その最たるものが、濃厚接触者となった同居家族で症状があれば検査なし、医師の診断のみで「みなし陽性」とするデタラメ運用であり、検査も受診もしない「自主療養」まで推奨する棄民政策である。
入院も治療も検査も拒否し、今や陽性反応が出ても、入院にこぎつけられるのは100人に3人程度という狭き門だ。会見で岸田は「感染者数は昨年夏の4倍だが、重症病床は十分に余力がある」と胸を張ったが、ここまで入院条件を引き締めればベッドが空くのも当然。まるで医療崩壊をごまかす「隠蔽」策で、自宅療養中の容体急変で死者が増えても知らんぷりだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
「高齢者の3回目接種が進まないのは、副反応や交互接種への不安があるのに、この問題でも岸田首相はまともな情報発信すらしない。会見自体が1カ月半ぶりで、事前に決められた代表社以外の質問を受けたのは実に2カ月ぶり。就任以来、ぶらさがり会見に60回以上応じていると強調しますが、『検討』ばかりで満足に答えない。コロナ対策の陣頭指揮にあたる当事者意識が希薄で、後手と場当たりの繰り返し。夏の参院選を前に『リスクを取らない』ことを優先させたあまり、陥ってしまった深刻な事態を矮小化し、逃げの姿勢ばかりが目立ちます」
結局、岸田にはコロナに立ち向かい、国民の命と暮らしを守る気概などどこにもないのだ。
実態把握に苦慮し今がピークかもわからない
岸田は会見で「感染拡大のペースは落ち着き始めている」と繰り返したが、現状ではその裏付けすら怪しい。
全国の「陽性率」(検査件数に占める陽性者の割合)は6日までの1週間で57.7%。第5波のピーク時の18.6%の3倍と過去最高の水準に達した。
陽性率の異常な高さは、発熱外来や保健所の業務が逼迫し、もはや感染の恐れの高い人しか検査できていない可能性を物語る。市中の感染者を把握しきれないばかりか、医療機関や検査会社もキャパオーバーに陥り、検査件数の報告の遅れが目立つ。大阪府では陽性者の発生届の処理が滞り、1月26日から2月8日までの日別の感染者数が把握できていない。
すでに感染状況を表すデータが実態と乖離している可能性が高いのだ。データを正確に計上しない限り、感染のピークすら分からなくなる。岸田の「感染は落ち着き始めた」という言葉にも根拠なし。もはや誰も何を信じたらいいのか、判断がつかない惨状なのだ。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。
「中曽根政権以来、歴代の自民党政権は憲法25条が定めた『社会福祉や社会保障の増進』を切り捨ててきましたが、ここまで国民の生存権をおろそかにし、日本が世界に誇る国民皆保険制度を形骸化させた政権は戦後初です。ところが、岸田首相はその責任を痛感することもなく、17日の会見でも『諸外国に比べ感染状況を低いレベルで抑えられている』などと言い訳を連発。その上、現下の危機的状況で安倍元首相ら与党の一部や経済界の圧力に屈し、水際対策を緩和させてしまった。国民にはひたすら『自助』を押しつけ、その一方で政権を支える勢力の言いなり。岸田首相の本質は政権維持に汲々とする自己保身の塊です」
岸田のデタラメ対策からはハト派のふりをした冷酷な正体が浮かぶ。
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