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キーマンの室長更迭で岸田政権が直面する「断崖絶壁」
https://friday.kodansha.co.jp/article/229047
2022年02月10日 FRIDAYデジタル
藤井敏彦・国家安全保障局担当内閣審議官が更迭された。
経済安全保障法制準備室長として、岸田文雄首相肝いりの「新しい資本主義」に関する法整備を進めていた経済政策のキーパーソンだった。
支持率の低下で焦りの見える岸田政権にスキャンダルが。自慢の経済政策にまさかのブレーキがかかった 写真:ロイター/アフロ
今日発売の「週刊文春」が、藤井室長と朝日新聞女性記者との「不適切な関係」の疑いと、民間「塾」での講演「闇営業」を報じている。
同誌発売前の6日、日曜日に松野官房長官に報告があり、岸田首相と協議のうえ、即刻、藤井室長の経産省官房付への異動を決めた。
「岸田首相にはプランがあったんです。新しい資本主義の骨格を閣議決定し、3月に会見する予定だったものを2月に前倒しして、経済政策を加速させる狙いでした。それが、まさかのスキャンダルで司令塔の藤井室長を欠くことになりました。大衝撃です」(内閣府キャリア)
この醜聞に慌てた松野官房長官は、政権へのダメージを避けるため「電光石火の人事」に踏み切った。
焦る岸田に追い討ちをかけた
オミクロン株の爆発的感染拡大に対応がもたつき、内閣支持率は一気に10ポイント近く下落している。岸田首相の焦りは尋常ではなかった。
まずは、関係閣僚10人を国会内に緊急召集して「ワクチン1日100万回」を厳命。堀内詔子ワクチン担当大臣へのテコ入れとして、菅義偉政権下でワクチンを担当していた官僚十数名を張り付かせたばかりだった。岸田の政権運営は手堅さが身上なのだ。
「サッカーでいえば、危ないボールは大きくクリアーし、ディフェンス補強に3バックから4バック、5バックにだってするのが岸田首相です」(厚労省キャリア)
現場の官僚は、岸田首相の当初方針の軌道修正に合わせ、てんてこ舞いだ。ほころびは直ちに修正し、批判には迎合を繰り返して、その場をしのいできた。
首相は、机を叩いて怒った
そんななか、岸田政権の目玉政策の「最高責任者」藤井室長のドロップアウトはあまりに痛い。
1971年、沖縄返還協定をめぐり大手新聞社の記者が情報目当てに「不適切な関係」を利用した「西山事件」を想起させる今回のスキャンダル。この「令和の西山事件」に、自民党重鎮は「老婆心ながら」と前置きしてこう言った。
「今進めている経済安保推進法案は、多数の大企業が絡む大規模な成長戦略だ。その中枢で、松野官房長官が調査している『不適切な関係』の問題が起きた。会合を伴うなんらかの交際があったのかもしれない。法案が事前に漏洩していないかなどが気にかかる」
経済安保法案は、すでに110にのぼる条文作りを終えている。が、完全に出鼻をくじかれた感は否めない。
「この法案、公明党は罰則規定が重すぎると注文をつけたものの、おおむね同意している。国民、維新も反対はしない。財政出動派の安倍晋三元首相にとっても異を唱える話ではない。あとは立憲の態度が不明なだけでした。
経済安保の成長戦略4000億円の法案はすんなり承認され、思惑通り、通常国会を延長せずに参院選挙に突入する目論見だったんです。
その計画をぶち壊す醜聞に、ふだん淡々としている岸田首相が、執務机を拳で叩いて怒っていました」(官邸スタッフ)
法案提出の予定日、2月25日を目前に、後任は財務省出身の泉恒有内閣審議官が即日着任した。この人事にも、岸田首相の慌てぶりがうかがえる。
岸田首相の「新しい資本主義」が、利益供与をした一部大企業の思惑に左右されることがあってはならない。目を引くのはスキャンダルだが、ことの本質は企業との関係と、そこから繋がる「情報提供」や「利益供与」。それがたとえ数万円であっても、なのだ。企業との「不適切な関係」は、藤井以外にも、あるいは政権中枢に波及する可能性さえある。岸田政権は今、断崖絶壁に立たされている。
取材・文:岩城周太郎 写真:ロイター/アフロ
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