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※2022年2月8日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2022年2月8日 日刊ゲンダイ2面
【もう感染者数も分からない】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) February 8, 2022
岸田政権のコロナ対応は「完全お手上げ」
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/e4hbhiQIit
※文字起こし
「2月のできるだけ早期に、1日100万回までペースアップすることを目指して取り組みを強化する」
新型コロナウイルス対策などに関する集中審議が開かれた7日の衆院予算委員会。これまでワクチン接種について数値目標を口にしたがらなかった岸田首相が、ついに追い詰められ、2月後半の「100万回接種」実現を表明した。3回目接種率5.9%(7日時点)はOECD38カ国中、依然最下位だ。
しかし、今さら感は否めない。「100万回」は菅前首相が掲げた1、2回目接種時の目標設定と同じ。当時は最大で1日170万回が実現している。もっとスピードアップできないものなのか。
当初のワクチン供給量不足や「2回目接種から8カ月後」に固執した政府の後手対応が、いまだ足を引っ張る。
自衛隊が再開させた大規模接種センターの能力は、東京会場が現在1日2160回。前週の3倍となり、今月10日以降は5040回まで増えるが、昨年の1日1万回接種にはほど遠い。大阪会場も同様で、現在の1日960回を、14日をめどに2500回まで増強するが、やはり昨年の半分だ。つくづく、準備の遅れが悔やまれる。
オミクロン株の蔓延で、感染者が1日10万人規模で増えているのは、3回目のブースター接種が遅れていることと無関係ではないだろう。
全国の自宅療養者は43万人(2日時点)を超えた。症状が出た濃厚接触者を医師が検査することなく陽性と診断する「みなし陽性」を導入した自治体は少なくとも21都道府県に上る。医療資源を重症化リスクの高い人に振り向けるという説明は、体のいい言い訳でしかない。岸田政権がやっていることは、感染者抑制でもなんでもなく、保健所や医療機関をパンクさせないための“業務放棄”と“患者選別”なのである。
「検査と隔離」の大原則はどこへ
中でも、1万2700人分の感染者の計上漏れがあった大阪市は酷かった。政府の情報共有システム「ハーシス」への入力作業が遅れたことが原因。
維新の代表でもある松井一郎市長は「マンパワー不足」と説明し、「100%対応せえと言われても、人材も含め持ってる資源の中では非常に厳しい」と開き直る始末だった。
大阪市では「ファーストタッチ」と呼ばれる保健所から患者への最初の連絡も1週間遅れている。感染者は完全に“放置”なのだ。
神奈川県の「みなし陽性」の対応にもア然だ。重症化リスクの低い人で、抗原検査キットや無料のPCR検査で陽性となった場合は、医師の診断ナシで勝手に自宅療養する「自主療養」を導入した。健康観察は自分で行い、体調が悪化したら医療機関を受診となっているが、この医療逼迫で緊急時に受け入れてもらえるのか?
さらに神奈川では、低リスクの自宅療養者への食料と日用品の配送も中止。だからと言って、「感染者が物資の買い出しのために最小限の外出をするのはやむを得ない」と認めたのには驚愕だ。「検査と隔離」という感染症対策の大原則はどこへやら、である。
こんなデタラメばかりでは、毎日の感染者数発表に何の意味があるのか。実際の感染者は数倍、数十倍いるのではないのか。
西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。
「医療は科学ですよ。『みなし陽性』は統計上、どうカウントするのでしょう? インフルエンザと風邪の区別がつかなかった20年ほど前は、医者は勘と経験で判断していた。その時代に戻ってしまいました。なぜそんなことになるのかと言えば、検査キットが足りないから。バカみたいな話です。政府がまともに機能していない。昨年9〜12月の余裕のあった時期に油断して何の対策もしてこなかったツケです」
菅前首相を「反面教師」にしたことが裏目 |
週末の世論調査で、岸田内閣の支持率は大幅ダウンだった。読売新聞は58%で先月から8ポイント下落、JNNは60.2%で同6.5ポイント下落した。ズルズル低下するコロナ対策への評価が響いているのは間違いない。ワクチン接種のスピードが「遅い」は59%で半数を超えた。
岸田政権のワクチン接種遅れの原因について、元経産官僚の古賀茂明氏が、自身が主宰するインターネットサロン「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」で、<菅さんを反面教師とした岸田首相の誤算>と題した興味深い分析をしている。
それによると、岸田の敗因は3つある。
第1に衆院の解散総選挙を急いだこと。菅は政権発足当初、支持率が非常に高く、早期解散論が巻き起こったものの、「コロナ対策最優先」として解散しなかった。しかしその後、支持率が下落、自民党内から「不人気首相では衆院選を戦えない」と政権から引きずり降ろされた。
これを反面教師にした岸田は、総理就任直後に解散、最短で選挙をし、自民党は予想外の大勝。政権基盤は強化された。しかし当時は、解散よりもワクチン確保や接種体制整備を最優先すべき時期だった。選挙を遅らせてでも、官僚に具体的指示を出しておけば、接種が前倒しできていた可能性がある。
第2の問題は、菅の強権的官僚支配のスタイルを改め、官僚に寄り添う姿勢を見せたこと。岸田は官僚たちの評判はいいが、逆に言うと、全く恐れられていない。接種時期を8カ月後から6カ月後に前倒しするのにドタバタが繰り広げられたのも、官僚が岸田を甘く見たからだ。
第3の失敗は閣僚人事。菅は「仕事師内閣」を自称し、重要なポストに実力のある議員を就けた。特に、河野太郎ワクチン担当相はEUとの交渉でワクチン確保に成果を上げ、1日100万回接種を実現し、第5波収束の原動力となった。
一方の岸田政権の堀内詔子ワクチン担当相は実力ゼロ。岸田は、菅が自分より目立つ河野を活躍させ、総裁候補に押し上げてしまったことを反面教師として、自分の地位を脅かすような実力者をワクチン担当にしなかった。その結果、ワクチン接種の加速化の見通しが立たない状況になっている。
つまり、岸田が菅を反面教師としてやってきたことが、ことごとく裏目に出ているということだ。
危機意識の欠如と感覚のズレ
改めて古賀茂明氏が言う。
「結局、岸田首相は危機意識が非常に低いのだと思います。ワクチン接種がコロナ対策のカギだというのは、本人も分かっていたはずです。ところが、岸田首相は官僚の話を聞くだけ。これだけワクチン接種が遅れていたら、官僚が1人や2人飛ばされてもおかしくないのに、そうした雰囲気はまったくありません。この危機的状況下で、安倍元首相のご機嫌を取って、自民党は全国で憲法集会をやろうというのですから、感覚がズレています」
ワクチン接種遅れに慌てるそぶりを見せながらも、「そのうちピークアウトするだろう」が岸田のホンネではないか。だが、そう簡単ではない。感染が若者から高齢者や子どもに移り、感染者数は高止まりしている。ピークはいつになるか分からない。
「死者数が増えているのが気になります。現在1日100人程度ですが、まだピークが見えない。感染者数の増加から2週間程度遅れて重症者や死者が増えるとされるため、まだ増える可能性が高く、医療崩壊がますます可視化されます。加えて、懸念されるのは経済です。岸田首相はコロナ禍からの回復を甘く見ていますが、実質賃金はマイナスが続き、資源高と円安によるインフレで庶民の生活は悪化必至です。春闘も岸田首相の要請だけで3%の賃上げなんてありえません。景気が悪化し支持率急落もありえます」(古賀茂明氏=前出)
もはやコロナ対策に「完全お手上げ」の岸田政権。国民の多くが、その無能に気づいてきた。安倍・菅に続く“コロナ退陣”があるかもしれない。
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