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岸田政権に対する世論の高い支持 戦中の「暗黒日記」時代に類似してきた 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/300526
2022/01/28 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
安倍・菅政権から続く戦時中と同様の「政権に楯突かない」(右は、東條英機首相=当時)/(C)日刊ゲンダイ
東洋経済新報社から「現代語訳 暗黒日記」が出版された。
この本はもともと、ジャーナリストの清沢洌氏が1942年から45年にかけて書いた日記であり、戦後、高い評価を受けた。それを今、あらためて元伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎氏が「編集・解説」する形で出版されたのである。
先の無謀な戦争に突入した最大の責任者は東条英機首相である。
1942年6月、日本海軍はミッドウェー海戦で敗れ、空母4隻とその艦載機約290機の全てを喪失した。冷静に考えれば、日本が敗戦に向け、ひたすら進んでいることは当然、分かったことである。
しかし、清沢洌は42年12月9日の日記で、「東條英機首相は朝から晩まで演説、訪問、街頭慰問をして、5、6人分の仕事をしている。その結果、非常に評判がいい」と書いていた。
日本が奈落の底に向かって進み、その責任者である東条について「非常に評判がいい」と記していたのである。
なぜ、こうした状況が起きていたのか。少し後になるが、43年1月8日の日記では、「『戦争は2つの場合に敗ける。第一は陸海軍が割れるとき。第二は民心が割れるとき。しかし、いずれも考えられず』と東條は説き、結束を破る者はいかなる者といえども容赦せずと言明した」と記し、2月20日には「佐藤賢了軍務局長、反戦、反軍の言説に対しては、いかなる政府高官の者といえども断固処分するといった」と書いている。
つまり、東条であれ、軍部であれ、反対者を威喝してきたのだ。
自分たちの政策に分が悪い時、為政者は異を唱える者の弾圧を始める。それは現代の日本社会でも、安倍・菅政権で実施されてきたことである。異を唱える学者を日本学術会議の会員に任命せず、政権に厳しいジャーナリストの排除を求めてきた。菅前首相は自民党総裁選の際、「政治的に決定した後、官僚が反対してきた場合」の対応について、「官僚が政権の決めた方向性に反対した場合、異動させる」と断言していた。
高位の官僚には異動先はない。菅前首相の言う「異動させる」とは「退職させる」と同意語である。安倍・菅政権の日本社会では、あるべきことを言えば「異動」が待っていた。官僚、国会議員だけでなく、ジャーナリストもおじけづいた。
今の岸田政権に対する世論の支持は高いが、それは政策への積極的支持ではないだろう。安倍・菅政権から続く「政権に盾突かない」という戦中と同様の「空気」がもたらす結果である。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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