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小池都知事の空疎な言語センス オミクロン株急拡大を「首都直下地震に相当」と過剰表現 小池知事「伏魔殿都政」を嗤う
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/299848
2022/01/13 日刊ゲンダイ
いただけない比喩(小池百合子都知事)/(C)日刊ゲンダイ
政治家にとって言葉は「生命線」だ。名言を歴史に刻むのも失言で失脚するのも、政治家の「言語感覚」次第だと言える。小池都知事の場合、その「言語感覚」がちょっと変だと感じてしまうのは私だけであろうか。
例えば、小池知事は9日の会見で、新型コロナウイルスのオミクロン株による感染急拡大の状況について、「超音速に『極』をつけてもいいくらいの急速な拡大」などと表現していた。「極」とは、北朝鮮が発射を繰り返している「極超音速ミサイル」を指しているのだろう。北朝鮮の脅威と急激なコロナ感染のスピードを結びつけて警鐘を鳴らした、ということなのだろうか。
だが、私にはどこか当事者意識を欠いた、上っ面だけの言葉に聞こえてならなかった。わざわざ北朝鮮を持ち出す必要がどこにあるのか。さすがにドヤ顔とまでは言わないが、小池知事の表情は、こう言いたいかのようだった。
「ね、私って気の利いたことを言うでしょ。国際情勢とコロナを関連付ける政治家なんて、私以外にはいないのよ」
「意地悪な見方」と思われるかも知れないが、「極」発言に限らず、小池知事が発する言葉は、いつもその場限りのウケ狙い。言葉を聞いた者の中に共感を呼び覚ます力が決定的に欠落していると言わざるを得ない。
発言は有効性に乏しく空疎なものばかり
11日にはこんな発言も飛び出した。小池知事は現下の状況を「首都直下地震に相当」と表現した。感染者や濃厚接触者がエッセンシャルワーカー、都市インフラの従事者に広がれば、医療体制に止まらず都市活動・社会活動の停止にもつながりかねないとの危機感の表れだったのだろう。
言いたいことが分からなくもないが、都市インフラが物理的に破壊され数万人の死者が想定される首都直下地震を持ち出してコロナと対比するのは、いくらなんでも過剰表現ではないか。おそらく専門家から聞かされた情報を自分の中で増幅させて「よし、これはいける!」とピンときてしまったのだろう。「首都直下地震」の比喩に都民の皆さんがピンときたかどうかは不明である。
そもそも論で言えば、首都直下地震に匹敵するほどの危機的な状況なら、なぜ、年末年始の時期、8人までの飲食を放置したのか。年明け早々、岸田首相に会った際「オミクロン株の分析を」などと呑気に構えていたのか。
オミクロンの感染力への懸念は昨年12月初旬には指摘されていたことだ。「先手先手」と言っていたのはどこの誰だったのか。しかも、小池知事は首都直下地震発言に続けて、民間企業に対して1割減の人員でも事業が継続できるように要請したが、大企業ならともかく、中小企業が即応できるはずもない。今ごろ言われても、目の前のコロナ急拡大に間に合うわけはないだろう。
結局、小池知事の言葉は、その時その時でカッコいいことを言っているように聞こえても、所詮はオーバーアクション。有効性に乏しく、空疎なものが多い。小池知事のこうした特異な「言語感覚」を、都民は決して忘れてはいけない。知事発言には引き続き、眉に唾して聞き耳を立てる必要がある。
澤章 東京都環境公社前理事長
1958年、長崎生まれ。一橋大学経済学部卒、1986年、東京都庁入都。総務局人事部人事課長、知事本局計画調整部長、中央卸売市場次長、選挙管理委員会事務局長などを歴任。(公)東京都環境公社前理事長。2020年に『築地と豊洲「市場移転問題」という名のブラックボックスを開封する』(都政新報社)を上梓。YouTubeチャンネル"都庁OB澤章"を開設。最新作に「ハダカの東京都庁」(文藝春秋)、「自治体係長のきほん 係長スイッチ」(公職研)
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