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減税公約を反故にして増税議論を求める維新のトンチンカン
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/299727
2022/01/10 日刊ゲンダイ
維新の政調会長、足立康史衆院議員(C)日刊ゲンダイ
「日本維新の会」は、選挙前に有権者に約束した主要公約を反故にするつもりなのだろうかーー。2021年10月31日に投開票された衆院選で、維新は大きく議席を伸ばした。公示前の維新の議席数は11だったが、大阪を中心とする16の小選挙区で勝利し、比例で25議席を獲得、合計41議席となった。
選挙戦で大躍進した維新が掲げたのが「日本大改革プランの三本柱」であり、その三本柱の1番目が「大減税」であった。
具体的には、課税見直しとして、消費税減税(2年間の5%、恒常的に8%へ)、法人税減税 (既得権益化した租税特別措置の廃止)、所得税実質減税、固定資産税の適正化と相続税の廃止が謳われている。
早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏は、この公約の歴史的意味をこう解説する。
「自民党、公明党、そして野党である立憲民主党、共産党まで、日本では政府歳出拡大によるバラマキによる景気対策を主張する政党しかいませんでした。その政治劣化が不毛な55年体制による与野党合作の巨大な政府を生み出し、日本全国津々浦々、補助金と規制で雁字搦めにした疑似社会主義経済を創り出している原因です」
野党でありながら、大阪では市長・知事職を担う維新である。「大盤振る舞いに見える公約でも、絵に描いた餅にならないかもしれない」と、大減税を期待してしまった有権者も多かったはずだ。
しかし、である。維新の政調会長(国会議員団)の足立康史衆院議員は、ツイッターで<総選挙前ドタバタの中で落とした資産課税について、本当に党として「捨てる」ということでいいのか事後検証したかった次第です>(1月4日)と投稿。選挙公約である大減税でなく、堂々の増税議論の開始を宣言し、維新内部にも衝撃が走った。維新関係者はこう話す。
「足立氏は、政策論と運動論を分けろと主張しています。その主張は、『政策の議論』と『選挙で有権者に提示すること』は違うということです。選挙公約から外したはずの増税案を優先的に議論する姿勢を示すことは、有権者への欺きでしかありません。橋下徹元代表と足立氏が文章交通費で激しくやりあっているのをみて、橋下氏と表立ってやりあいたくない馬場伸幸共同代表がウラで足立氏を操っているのではという噂が維新内部でありましたが、そうではない。足立氏の『暴走』でしょうね」
足立氏のツイッターを読み返していても、「維新はフルオープン」の議論を強調していると思ったら、「別途、クローズドで相談させてください」と言葉を翻す。幹事長が「政策論と運動論は分けられるものではない」旨の軌道修正をしたが、それに対して足立氏は「政策論と運動論は分けるべき」と二元論を頑なに主張。最後には「(本音と建前という)矮小な二元論ではない」との発言を残している。
フルオープンという建前、クローズドでの本音、選挙での公約という建前、政策論という本音、足立氏は議論を通じてどんな二元論を提示したかったのだろうか。まるで意味がわからない。
「足立氏個人の暴走」と維新内部で認識があったとしても、足立氏は政調会長であり、公党の政策立案の責任者だ。大減税公約を公約のいちばんの柱に掲げておきながら、選挙が終わると自ら積極的に増税議論を開始する。
多くの維新議員はだんまりを決め込んでいるようだが、そんな政党はさっさと解散してほしい。
小倉健一 イトモス研究所所長
1979年生まれ。京都大学経済学部卒。国会議員秘書からプレジデント社入社。プレジデント編集長を経て2021年7月に独立。
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