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2023年5月29日 19時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/253115?rct=world
【カイロ=蜘手美鶴】28日投開票のトルコ大統領選の決選投票で、選挙管理委員会は同日深夜、エルドアン大統領(69)が過半数を獲得して再選したと発表した。約20年続くエルドアン政権はさらに5年の任期を得たことで、強権体制と保守化が一層進むことが懸念される。
選管によると、開票率99.43%時点で、エルドアン氏の得票率が52.14%、最大野党「共和人民党(CHP)」党首で野党6党の統一候補クルチダルオール氏(74)は47.86%。投票率は85.7%で第1回の投票から3.1ポイント下がった。
エルドアン氏は同日夜に首都アンカラで演説し、「8500万人のトルコ市民の勝利だ」と宣言。クルチダルオール氏もアンカラで「この国を待つ困難を思うと本当に悲しい」と事実上、敗北を認めた。
今回の選挙では、野党6党が「打倒エルドアン」で共闘し、エルドアン氏にとって「最も厳しい選挙」と言われた。トルコ・シリア大地震の復興の遅れや経済低迷が批判されたが、被災地に65万戸の住宅新設や公務員給与の増額などを打ち出し、票につなげた。
エルドアン政権が続くことで、今後は権威主義的な政治体制が強まる可能性が高い。政府を批判する個人やメディアの摘発や、テロ対策名目で少数派クルド人の取り締まり強化も懸念される。また、エルドアン氏はロシアのウクライナ侵攻では両国の仲介役も果たしており、今後さらに外交面でも影響力を増すとみられる。
◆NATO加盟国でロシアとも良好関係 外交で強まるトルコの影響力
28日に実施されたトルコ大統領選の決選投票で、エルドアン大統領が再選を果たした。同氏はロシアのウクライナ侵攻や北欧2カ国の北大西洋条約機構(NATO)加盟問題などで重要な役割を果たしており、新たに5年の任期を得て国際的な影響力は増すのは必至。各国首脳からは当選を祝う声が相次いでいる。(カイロ・蜘手美鶴)
エルドアン氏の再選を受け、ロシアのプーチン大統領は28日、いち早く「親愛なる友人へ」として、「(当選は)自然の結果で、トルコ国民が支持する証拠だ」と祝辞を贈った。
トルコとロシアは経済や軍事的な結び付きが強く、ロシアのウクライナ侵攻以降も良好な関係が続く。4月末にはトルコ南西部でロシア国営企業が建設したトルコ初の原発が開所。プーチン氏もオンラインで式典に参加し、エネルギー部門でも連携を強めている。
安全保障面でトルコはNATO加盟国だが、ロシア制裁には参加せず特別な存在感を示す。エルドアン氏はロシアとウクライナの仲介役を務めたほか、ウクライナ産の穀物輸出ができず世界的な食料不足が懸念された際には、両国を取り持って黒海からの輸出再開に貢献した。
スウェーデンとフィンランドのNATO加盟問題では、トルコがテロ組織指定するクルド労働者党(PKK)のメンバーらを両国が支援しているとして反対。両国から「テロ組織は支援しない」などの譲歩を引き出すなど、外交手腕を発揮している。
一方でエルドアン氏は人権問題やメディア弾圧など巡って、欧米から批判を受けてきた。しかし、再選を果たすと「今後数年間、欧州連合(EU)とトルコの関係強化を楽しみにしている」(ミシェルEU大統領)、「NATO加盟国として共通の課題に取り組みたい」(バイデン米大統領)など欧米各国から祝辞が相次いだ。
アルアハラム政治戦略研究所(エジプト)のカラム・サイード研究員は「ロシアとの良好な関係は、エルドアン氏には欧米に圧力をかける外交カードになる。今回の再選で、同氏の欧米への影響力はより強まるだろう」と話す。
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