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中米を訪問する途中、米国へ立ち寄る台湾総統との会談を望む米下院議長
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2023.03.27 櫻井ジャーナル
台湾の蔡英文総統は3月29日から4月7日にかけてグアテマラとベリーズを訪れる予定だ。ホンジュラスが中国と外交関係を確立した直後の訪問である。
その途中、ニューヨークとロサンゼルスを経由するのだが、そこでケビン・マッカーシー下院議長は蔡総統と会談する意向だと伝えられていた。ところが3月21日にはこの件について口にしなかった。
蔡総統は台湾独立を主張してきた政治家だが、それを支持する台湾の有権者が多数派だとは言えない。そこでアメリカの甘言に乗ってしまった。昨年8月2日にはアメリカの下院議長だったナンシー・ペロシ台湾を訪問、1972年2月にリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問してから続いていた「ひとつの中国」政策に挑戦した。中国とアメリカの関係が悪化するだけでなく、台湾周辺の軍事的な緊張が一気に高まることになった。
今年3月16日に陸上自衛隊は駐屯地を石垣島に開設したが、その前から自衛隊は南西諸島に軍事施設を建設していた。2016年には与那国島で、また19年には奄美大島と宮古島で施設を建設している。台湾周辺での軍事的な緊張が高まることを想定していたかのようだが、こうした動きはアメリカの戦略に基づいていた。
アメリカ国防総省系のシンクタンク、「RANDコーポレーション」が昨年に発表した報告書によると、アメリカ軍は中国をGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で包囲しようとしている。ところが配備できそうな国は日本だけで、しかも日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。
そこでアメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたとされている。その一環として石垣島の駐屯地も建設された。
日本政府は射程距離が1000キロメートル程度のミサイルを開発して艦艇、戦闘機、そして地上から発射できるようにする計画をたてる。地上発射の改良型は2024年度にも配備する方針だとされたが、その後、日本政府はアメリカから亜音速の巡航ミサイル「トマホーク」を購入する意向だという話が出てきた。トマホークは核弾頭を搭載でき、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルだとされている。「反撃能力」というタグがつけられているが、実際は先制攻撃能力だ。攻撃する相手は中国だけでなく、その同盟国であるロシアも含まれる。
もし台湾周辺で軍事衝突が起こった場合、アメリカの空母戦闘群は短時間の間に撃沈される可能性が高い。すでに海上艦船の時代は去り、航空母艦は弱小国を威嚇することに使えるだけだ。
そうした時代の到来を告げる出来事は1982年4月にあった。アルゼンチン軍とイギリス軍がフォークランド(マルビナス)諸島の沖で軍事衝突したのだが、5月にアルゼンチン軍の対艦ミサイル「エグゾセ」がイギリスの軍艦「HMSシェフィールド」などを撃沈、他の艦船にもダメージを与えている。
この時はイギリスのマーガレット・サッチャー首相がパリでフランスのフランソワ・ミッテランと会談、ミサイルを無力化するコードを教えるように要求、それでイギリスは勝利することができたと言われた。現在、ロシアや中国が保有している対艦ミサイルはエグゾセとは比較にならないほど性能が向上している。
現在、海軍の主力は潜水艦へ移行している。オーストラリアは2021年9月にイギリスやアメリカとAUKUSを創設したと発表、それと同時にアメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられた。ジョー・バイデン米大統領はオーストラリアへ売却するため、3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると語っている。
その潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明した。中国との戦争を意識しているのだろう。その一方で自衛隊は南西諸島に軍事施設を建設した。これも中国と戦争する準備だ。
日本では「教育」や「報道」の成果で中国やロシアを敵視する感情を国民に刷り込み、中国やロシアは弱いという話を信じさせてきたが、台湾の有権者は中国との戦争を望んでいないようだ。台湾の総統を2008年5月から16年5月まで務めた馬英九が3月27日から4月7日にかけて学者や学生を率いて北京を訪問する。昨年11月に実施された地方選挙では蔡英文の民主進歩党が馬英九の国民党に大敗している。
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