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中国・習近平国家主席ロシア訪問 双方のねらいと世界への影響は/安間英夫・宮内篤志・nhk
2023年03月22日 (水)
安間 英夫 解説委員宮内 篤志 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/481012.html
【はじめに】
(宮内)
ニュース解説・時論公論です。中国の習近平国家主席がロシアを訪問し、プーチン大統領と会談しました。
折しも、G7議長国・日本の岸田総理大臣がウクライナを訪問したタイミングと重なった習主席の訪問。
中国とロシアのねらいは何か、そして分断が進んでいるといわれる世界への影響について考えます。
【中ロ首脳会談 共同声明】
(宮内)
中国の習近平国家主席はプーチン大統領の招きに応じて、きょうまでロシアを訪れました。
両首脳の対面での会談は、侵攻が始まって以降、初めてです。
2日間にわたって行われた両首脳の会談。共同声明では、経済やエネルギー、科学技術など幅広い分野での協力の拡大をうたい、緊密な関係を誇示しました。
しかし、焦点のウクライナ情勢については、先に中国が示した対話と停戦を呼びかける文書以上に踏み込んだ具体的な解決策は明示されず、また、中国からロシアへの軍事支援についても言及はありませんでした。
(安間)
私が違和感を覚えたのは、中ロ両首脳が共同声明で、“国連憲章や国際法の尊重”をうたったことでした。
国連憲章や国際法では武力行使や威嚇は原則として禁止されていますが、今も続くロシアによるウクライナ侵攻はそれらに違反しないとして一方的に正当化するものであり、この点でロシアを厳しく非難する欧米や日本の認識とは大きな開きがあると改めて感じました。
【習近平国家主席のねらいは】
(宮内)
では今回の訪問、習主席のねらいはどこにあったのでしょうか。
習主席は今月13日まで開かれた全人代=全国人民代表大会で、国家主席として再選されるなど、3期目の新体制が本格始動したばかりです。
ウクライナ侵攻開始以降、中国は最大のライバルであるアメリカがNATO加盟国や同盟国などと結束を固めるのを目の当たりにしました。
こうした中、習主席としては新体制発足後、初めてとなる外国訪問にロシアを選び、連携を確認することで、アメリカへの対立軸を打ち出すねらいがありました。
今、中国が警戒を強めているのが、アメリカのバイデン政権が中国との関係を「民主主義と専制主義との闘い」と位置付け、政治体制や価値観の違いまで言及していることです。
これは共産党政権にとっては、体制の維持の観点から脅威にほかなりません。
このため、国連安保理常任理事国のメンバーであるロシアと組むことで、体制の維持に都合の良い国際秩序を作り出そうというねらいがあるとみられます。
しかし、プーチン大統領に対して、ICC=国際刑事裁判所から戦争犯罪の疑いで逮捕状が出される中、習主席の訪問には欧米などから厳しい見方が出ています。
また、岸田総理大臣がウクライナとの連帯を示した日本とは対照的な動きとして、国際社会から受け止められています。
【プーチン大統領のねらいは】
(安間)
一方、習主席を招いたプーチン大統領のねらいはどこにあったのでしょうか?
“国際的に孤立していない”と内外にアピールすることが最大のねらいだったと考えられます。
プーチン大統領は、事前の中国メディアへの寄稿で孔子のことばを引いて「朋有り遠方より来たる。また楽しからずや」と言及しました。
今回こそ、そのことを痛切に感じたのではないでしょうか。
私が注目したのは、習近平主席が一連の会談のなかで、来年ロシアで大統領選挙が行われることに触れ、「プーチン大統領のリーダシップでロシアが発展したとして、ロシア国民がその成果を支持することを確信している」と述べたことです。
プーチン大統領は立候補を表明していませんが、プーチン大統領の再選を期待しているかのような、外国の首脳としては異例の発言でした。
プーチン大統領は、体制維持のうえで心強いことばと受け止めたことでしょう。
中国との間でプーチン大統領は2000年に就任して以来、ソビエト時代には武力衝突まで至った両国の関係の正常化を模索。
国境問題を解決し、戦略的パートナーシップと呼ばれる関係を築いてきました。
両国の経済関係はウクライナ侵攻後、いっそう深まっています。
去年の貿易額は前の年と比べておよそ30%増加。
特にロシアからの輸出は、欧米向けの石油ガスの代わりの輸出先となったことなどが影響し、43%も増えました。
ロシアは中国との間で貿易額2000億ドルの目標を掲げてきましたが、ことしにも前倒しで達成されようとしています。
ただロシアは、中国から格下の「ジュニアパートナー」と見られることを警戒してきました。
両国はアメリカに対抗していく点では一致していますが、ロシアは人口と経済の規模がそれぞれ中国のほぼ10分の1で、飲み込まれてしまうおそれを拭い去ることはできません。
両国は、自国の利益のために互いに相手を利用し合う「戦略的パートナー」ではあっても、「同盟」ではなく、「同床異夢」をはらんでいます。
【ウクライナ情勢めぐり中国は】
(宮内)
ただ、ウクライナ情勢をめぐって中国は、「ロシア寄り」との見方が過度に強まることは避けたいのも本音です。
軍事支援が明らかになれば、欧米などによる制裁の対象となる恐れもあるうえ、「ゼロコロナ」政策で停滞した経済を立て直す中、国際社会で孤立してしまっては元も子もないからです。
また、ロシアとウクライナとの和平にどの程度まで関与するのかも未知数です。
先月、「中国の立場」として発表された文書は、一部では中国による「和平案」との受け止めもありますが、実際には一方的に軍事侵攻を始めたロシアへの批判を避け、ロシア軍の撤退についても触れないなど中途半端なものでした。
サウジアラビアとイランの関係正常化を仲介したことで存在感を高めた中国ですが、ウクライナ情勢については、和平の「橋渡し役」として限界があるようにみえます。
つまり、中長期的には、アメリカとの対立を考えるうえでロシアとの連携は重要。
しかし、短期的にはウクライナ情勢について、みずからの利益を損なわない程度に関わりつつ、一定の存在感を示したい。
これが今、習主席が考えていることだと思います。
【ウクライナ・ゼレンスキー大統領は】
(宮内)
習主席はウクライナのゼレンスキー大統領とは、今のところ、オンラインも含めて会談の予定はなく、ロシアとの対応には差があるように見受けられます。
ウクライナ側は今回の訪問、どう受け止めているのでしょうか?
(安間)
中国がこの問題に本気で関与するつもりがあるのか見極める姿勢です。
ゼレンスキー大統領は、中国の「対話と停戦を呼びかける文書」について「国際法の尊重や領土保全の原則で一致する考えがある」と述べて、一定の評価を示しました。
ウクライナにとっても中国は最大の貿易相手で、さまざま分野で関係を深め、無視できない大国です。
ゼレンスキー大統領は習主席と会談することに前向きですが、ロシアに有利な停戦は受け入れられず、あまり大きな期待は抱いていないのではないでしょうか。
【事態打開につながるか】
(安間)
では中国の動きは事態打開につながるのでしょうか。
私はかなり難しいと思います。
ウクライナがロシア軍の完全撤退を求めているのに対し、ロシアはウクライナの領土の併合を宣言するとともに軍事侵攻を続け、立場が正反対です。
また習主席はウクライナにとって、まだ「誠実な仲介者」と受け止められていません。
ただどんな戦争であっても、いずれは外交で解決させなければなりません。
プーチン大統領が耳を傾ける大国の指導者は、習主席がその筆頭だと思います。
習主席の行動は過大評価も過小評価もせず、等身大で見ていく必要があると考えます。
【終わりに】
(宮内)
今回の習主席のロシア訪問で、世界の二極化はいっそう進んだといえそうです。
ウクライナ情勢のみならず、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国も取り込もうと動きを活発化させる中国には、これからも世界の厳しい目が注がれることになります。
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